【1月28日】DeepSeek旋風が暗号資産市場を揺さぶる──AI新時代の覇権争いとBTC急落の行方

【要約】
近ごろ、米国株式市場や暗号資産(仮想通貨)市場で大幅な下落が目立っています。その引き金の一つとして、中国発の大規模AIモデル「DeepSeek」が急速に注目を集め、米国のApp Store無料アプリランキングでChatGPTを上回るダウンロード数を記録したことが挙げられます。一方、《富パパ貧パパ》著者のロバート・キヨサキは、2025年2月に史上最大の株式暴落が起こると改めて警鐘を鳴らし、資金はビットコイン(BTC)などの暗号資産に流れる可能性があると示唆。さらにAI関連の暗号資産銘柄も価格調整に直面し、ビットコインのオプション期限が迫る中、市場全体に不安定な空気が漂っています。本稿では、DeepSeekの躍進が与える影響や、暗号資産市場の現状について事実ベースで詳説します。

深まる市場の不安:DeepSeekが引き金となった米国株と暗号資産の急落

1月27日前後、突如として米国の株式市場や暗号資産市場が大幅下落に見舞われました。半導体セクターでは英伟达(NVIDIA)やAMD、台積電など大手企業の株価が4〜5%の下落を記録し、ナスダック100指数先物も大きくマイナスに転じています。加えて、ビットコイン(BTC)は一時的に100,500ドルを割り込み、24時間で約4.48%下落。イーサリアム(ETH)も3,200ドルを下回り、3.83%の下げ幅を示しました。

こうした急落の背景要因には、米連邦準備制度(FRB)の金融政策観測に加え、想定外のAI関連トレンドが急激に市場心理を左右した面があります。とりわけ、中国の大モデル「DeepSeek」がAppleの米国App Store無料ランキングでChatGPTを上回ったことで、株式市場や暗号資産市場に「既存の構造が揺らぐのでは」という懸念が広がったとの見方も存在しています。

「DeepSeek」とは何か:高性能・低コストで台頭する国産AIモデル

今回の下落をめぐる論点の中心にあるのが「DeepSeek」です。創立から2年にも満たないスタートアップが、独自のアルゴリズム設計と低コスト訓練手法を武器に、アメリカを含め世界中で大きな注目を集めています。OpenAIやMetaのように巨額資金や大量GPU(グラフィックス処理装置)を投入するのではなく、より軽量かつ効率的な方式を用いたことで、以下のメリットが生まれたとされます。

  • 8ビット精度へのアプローチ
    通常32ビットで計算する部分を8ビットに最適化することで必要メモリを削減し、GPUの台数を従来の4分の1ほどに抑えながら高い精度を実現。
  • 高効率なデータ処理と混合エキスパートモデル
    大量データを必要とする代わりに、独自の手法でデータを選別し、MLA(Multi-head Latent Attention)やMOE(Mixture-of-Experts)構造などを組み合わせてモデルを鍛え上げた。

結果として、OpenAIのChatGPT-4やAnthropicのClaudeと肩を並べる性能を示しつつ、トレーニングコストは数百万ドル程度に抑えることに成功。これらはすべて、もともと量子化に近い発想や効率化を重視していたDeepSeek独自のエンジニアリング手法によるものと報じられています。

AI Agent銘柄に波及する売り圧力と「長期的には追い風」との声

DeepSeekの大成功により、AI関連の暗号資産(いわゆる「AI Agent銘柄」)に資金が集まるかと思われましたが、実際にはむしろ下落が目立っています。VIRTUALやAI16Z、ARCなどのAI分野を冠するトークンは軒並み二桁%の下げを記録。市場全体が調整局面を迎えていることもありますが、「新たなAIモデルの台頭が既存のAI関連プロジェクトを淘汰するのでは」という見方も投資家心理を冷やしている側面があります。

もっとも、多くのプロジェクト関係者やトレーダーは、**「高性能な大モデルの出現は、AI Agentにとってもプラスに作用する」**と指摘しています。なぜなら、AI Agentの性能向上は、大モデルをAPI等で統合することで容易にアップグレードできるからです。すでにai16zのフレームワーク「Eliza」がDeepSeekに対応したとの報告もあり、大モデルの世代交代はAgentプロジェクトに対しむしろ進化を促す可能性が高いと見られています。

《金持ち父さん貧乏父さん》著者の警告:来月訪れる「史上最大の株式暴落」説

このタイミングでさらに注目を集めたのが、ベストセラー書籍《金持ち父さん貧乏父さん》著者ロバート・キヨサキ氏の発言です。同氏は2013年の自著で予告した通り、**「2025年2月に史上最大の株式暴落が起こる」**との見解をあらためてSNS上で表明。株式や債券に投じられている莫大な資金がビットコイン・金・銀へ流れると予想し、「今はビットコインの取得を進めるベストな時期になるかもしれない」と主張しています。

キヨサキ氏は、以前からドルや株式などを「偽物の資産」と呼んで警鐘を鳴らし、ビットコインの本質的価値を強調し続けてきました。今回の急落と新興AIの衝撃が重なったことで、彼の極端にも思える予測が再び取り沙汰されています。

迫る78億ドルのビットコインオプション期限と暗号資産市場の行方

ビットコインの大きな変動要因として、今月末に78億ドル相当のオプションが期限を迎える点も見逃せません。大量のオプションが行使・清算される際、市場では大口投資家による先物・現物の売買が急増し、相場が一時的に大きく動くことがあります。
さらに、ビットコインだけでなくイーサリアム(ETH)にも積極的な投資が続いており、複数のETF申請やグレースケールなどの投資ファンド動向が価格のボラティリティを左右する可能性があります。特にNASDAQやGrayscale、CoinSharesなど大手企業によるETF関連の動きが市場の期待を集めており、承認の可否によって暗号資産全体の流れが大きく変わると指摘する声が多く聞かれます。

DeepSeekの強みと今後の課題

DeepSeekが持つ強みは、低コストかつ高性能なモデルの開発力に加え、**大規模データセンターに依存しない「効率化アプローチ」**を組み合わせた点にあります。量子化やアルゴリズム最適化により、わずか数百万ドルで大モデルを形にした実績は、米国中心の「巨額投資が前提」の常識を覆すものと言えるでしょう。
さらに、同社がモデルをオープンソースで公開し、技術レポートを積極的に開示している点も多くの開発者や投資家から評価されています。一方で、実際に商用サービスを広く展開していくとなると、セキュリティ対策や安定稼働、さらなるモデル精度向上など乗り越えるべきハードルが山積していることも事実です。

量子化モデルと独自MOE構造を組み合わせるDeepSeekの技術スタックは今後も進化が期待されますが、同時に世界的なAI開発競争は加速しており、Google DeepMindやOpenAI、Metaのような大手も黙ってはいません。莫大な研究開発資金を持つ海外勢とどのように競合し、商用展開を図っていくかが今後の大きな焦点です。また、量化投資会社を母体とする強みを長期的に維持できるかも注目されるでしょう。

最終的には、資金・技術・人材を継続的に投入できるかどうかが勝敗を分けると見られています。市場環境が不透明な中でも、DeepSeekのような新興企業が急成長を遂げている現状は、AIや暗号資産を含むテック業界全体に大きなインパクトを与えつつあります。

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