2024年10月23日暗号資産動向|SEC検査方針と新チェーン

2024年10月23日前後は、米SECの翌年度の検査方針と、新しいチェーンを巡る発表が重なった。SECの文書は新規制そのものではなく、ApeChainの本番開始とUnichainのテスト公開も異なる段階にある。本稿では当時の資料を確認し、制度・稼働状況・意思決定の三つの論点を整理する。

SECが公表したのは2025年度の検査重点

米証券取引委員会(SEC)の検査局は2024年10月21日、2025年度に重点的に確認する分野を公表した。登録投資顧問、投資会社、証券会社などによる法令順守を検査するための方針で、暗号資産だけを対象にした発表ではない。受託者責任やサイバーセキュリティー、AIの利用なども含まれる。

検査対象は、投資家への影響や各社の業務・商品などを踏まえて選ばれる。重点項目は検査範囲のすべてを列挙したものではない。この発表から分かるのは、当局がどのようなリスクに注意を向けるかであり、特定のトークンについて違法性を認定したということではない。

検査重点の本文には、この文書自体は規則や規制ではなく、新たな義務を生むものでもないとの説明がある。したがって、旧記事の「規制強化」という表現だけでは発表の性質が伝わらない。新しい規則の成立、既存の義務の履行確認、個別の執行措置は別々に扱う必要がある。

たとえば、ある商品の販売方法が検査で取り上げられることと、その商品の販売が一律に禁止されることは同じではない。投資家向けのニュースでも、誰を対象に、何を確認する発表なのかを押さえると、制度変更の範囲を大きく読み違えずに済む。

暗号資産関連商品では販売・助言・管理体制を確認

暗号資産の項目では、関連サービスを提供する登録業者の監視や、必要に応じた検査を継続するとしている。証券として提供・販売される暗号資産や、現物ビットコイン・イーサリアムの上場取引商品などに関わる業務が記載されている。暗号資産がこの年に初めて検査対象へ入った、という説明は適切ではない。

具体的な関心は、顧客への推奨や助言に際して商品を理解しているか、保管・評価・リスク開示などを適切に見直しているかという点にある。個人投資家や退職資産に関わる場面にも注意を向けている。銘柄名を挙げた価格予想ではなく、サービス提供者の行動と管理の問題である。

この違いは、ETFのニュースを読む際にも役立つ。上場商品を取り扱えること、販売者が顧客に適切な説明をすること、その後の価格が上がることは、それぞれ別の話だ。検査方針を根拠に「当局が値上がりを保証した」「すべての暗号資産を同じ法的区分にした」と読み替えることはできない。

ApeChainはApeFestで本番開始を発表

10月21日付のYuga Labsの発表は、リスボンで開催されたApeFestでApeChainのメインネットを開始したと説明している。ApeCoin DAOとYuga Labsに加え、複数の技術組織が参加した取り組みである。Bored Ape Yacht ClubというNFTコレクションの名前だけを運営主体として示すより、発表に記載された体制を区別する方が正確だ。

同発表は、APEを使うクリエーター向けブロックチェーンとして、ゲームや開発者向けの機能を紹介した。アカウント操作の簡素化、手数料のスポンサー負担、ネイティブ利回りなどが挙げられている。これらは用途や参加のしやすさに関わる機能で、すべてがミームコインの価格を高める仕組みというわけではない。

また、紹介されたアプリには開始済みと今後の予定が含まれていた。サイトに名前が載ったアプリのすべてが、その時点で全機能を一般公開したとは限らない。本番チェーンが動き始めた日、個々のアプリが利用可能になった日、デモを披露した日は分けて確認したい。

利回り機能や利用者施策とAPE価格の関係

ネットワーク側に利回りの仕組みがあるという説明から、任意のミームトークンを保有すれば自動的に利益が出るとは言えない。対象資産や収益源、受取条件が異なるからだ。旧記事の「MEMEトークンの自動収益モデル」という表現は範囲が広すぎるため、本稿では発表が紹介した機能の存在までを扱う。

利用者向けの報酬も、参加条件に従って得られるものと、保有トークンの市場価格が上がることを区別する必要がある。ポイントが付く場合でも、換金できる資産と同じではない。将来の特典が予定されていても、その金額や受取時期まで決まったとは限らず、利用するサービスの条件が判断の出発点になる。

旧記事にはAPEが135%上昇したとの記載があったが、比較する時刻や価格データの出所が示されていなかった。本稿ではその数値を再掲しない。さらに、価格が動いた時期とサービス開始が近いことだけでは、上昇の原因をマーケティングの成功に絞れない。

チェーンの利用状況を評価するなら、継続して動くアプリ、実際の利用、取引の集中度なども見る必要がある。これは今後の評価の観点であり、ApeChainが当時すでに持続的な成長を達成したという判定ではない。開始の発表と運営実績を混同せず、後から確かめられる数字を積み上げて判断する。

Unichainは10月時点では公開テストネット

Uniswap Labsが10月10日に公表したUnichainは、DeFi向けのEthereum L2である。同日の公式記事は、テストネットを公開し、メインネットは後に開始する予定だと明記している。10月23日時点のニュースを「本番ネットワークの稼働」と説明するのは正確ではない。

公式発表は取引費用の削減や高速化、チェーン間の使いやすさを目標としていた。ただし、開発計画に含まれる機能と、その日に利用できた機能は同じではない。テスト環境での操作ができても、実資産を扱う本番サービスの提供を意味するわけではなく、利用案内ではネットワークの種類を明示する必要がある。

後日の経緯を補うと、メインネット開始の公式発表は2025年2月11日付である。当初の記事が示した年内の予定と、実際の開始日は異なる。この日付は10月当時に確定していた情報としてではなく、書き直し時点で確認できる後続資料として示している。

ApeChainとUnichainは、同じ時期のニュースに登場しても開始段階が異なった。「新しいチェーンが登場」という見出しだけでは、試験への参加なのか、本番アプリの利用なのかが分からない。発表文のtestnetとmainnetを確認することが、利用可能範囲を理解するための最初の手がかりになる。

DAOへの説明を求める声と、規則違反の認定は別

10月22日付のDL Newsは、Stanfordのブロックチェーンクラブでガバナンスを担当するBilly Gaoが、Unichainの技術選定などについてDAOへの事前の関与が乏しかったと批判したことを報じた。旧記事は個人の大口保有者と説明していたが、報道の文脈はDAOの議決権を委任された側の問題提起である。

同記事には、許可を求めずに開発できる取り組みであり、事前に個別説明する義務はなかったとする反論も載っている。ここから確認できるのは、開発会社とDAOの関係について意見が分かれたことだ。批判の存在だけで、必須の投票手続きを破ったと断定する根拠にはならない。

議論を整理するには、既存プロトコルの設定変更、DAO資金の支出、開発会社による新しい製品の公開など、何を決める場面なのかを分ける必要がある。そのうえで、どの規則が適用され、誰に決定権があるかを確かめる。透明性を求める意見と、明文化された義務への違反は別の論点である。

本稿は10月23日分の話題から、発表と資料を照合できた三つの動きを整理した。SECは検査重点、ApeChainは本番開始、Unichainは試験公開と意思決定の議論が中心となる。AI関連ミーム銘柄の時価総額やオプション満期の数値は、旧記事だけでは集計条件を確認できないため、確定値としての掲載を見送った。

よくある質問

Q. SECはこの発表で新しい暗号資産規制を作ったのか。

A. いいえ。公表したのは2025年度の検査重点で、文書自体が新たな義務を生むものではないと説明されています。

Q. 2024年10月にUnichainの本番は始まっていたのか。

A. 当時の公式発表は公開テストネットの開始です。メインネット開始の公式発表は翌2025年2月11日付です。

Q. DAOから批判が出たことは手続き違反の証拠になるか。

A. それだけでは確定できません。説明不足への批判と、適用される規則に違反したかどうかは区別して確認する必要があります。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。