2024年10月18日分では、Ethereumの拡張計画、選挙結果を対象にするdYdXの取引、ZKsync Igniteの提案が取り上げられた。いずれも大きな数字が目を引くが、達成した実績や全員に保証された条件とは限らない。公式原文を照合し、将来目標、商品の仕様、配分提案を分けて整理する。
Ethereumの10万TPS超はL1とL2を合わせた目標
ヴィタリック・ブテリンが2024年10月17日に公表した「The Surge」は、Ethereumの拡張に向けた課題と方向性を整理した文章だ。主要目標として示したのは、L1とL2を合わせて毎秒10万件を超える処理能力である。Ethereumの基盤チェーンだけが、その時点ですでに10万TPSを達成したという報告ではない。
同時に掲げたのは、L1の分散性と堅牢性の維持、一部のL2がEthereumの信頼不要性や検閲耐性などを十分に引き継ぐこと、L2同士の相互運用性を高めることだった。処理件数だけを増やす計画ではなく、ネットワークの安全性や使い勝手と両立させる課題として述べている。
本稿では本人の文章を直接参照し、旧記事にある講演の逐語録としては扱わない。本人が示した将来像、開発中の技術、運用中のネットワークで測った実績は異なる。目標値を紹介するときには、対象の範囲と達成時点を明確にする必要がある。
L2の安さとチェーンをまたぐ使いやすさは別の課題
The Surgeでは、EIP-4844のblobによってL1のデータ帯域が拡大したことを進展として挙げている。一方、利用者が複数のL2を使い分ける際には、送金先のチェーン選択やブリッジなどの複雑さが残ると指摘した。あるチェーン上の取引が安くなることと、別のチェーンへ簡単に移動できることは、同じ改善ではない。
具体的には、チェーンを区別できるアドレスや支払い要求、チェーン間の交換やガス代支払いを共通の方法で表すことなどを論点としている。こうした標準化が進めば、利用者が操作ごとに細部を理解しなければならない負担を減らせる。ただし、文章で提案された仕組みがすべてのウォレットに実装済みという意味ではない。
旧記事の「他のブロックチェーンへの転送が2秒以内」という説明も、あらゆる資産や送金経路の確定時間を保証するようには書けない。画面上で残高が見えるまでの時間、取引が取り込まれる時間、安全に確定する時間は区別が必要だ。手数料についても、取引内容や混雑にかかわらず常に0.01ドルという固定料金ではない。
技術の進歩を読む際には、目標が何を改善するのかを見ると理解しやすい。処理能力、データ掲載費用、送金の操作、証明の安全性をそれぞれ分ければ、一つの数字からEthereum全体の完成を判断する誤解を避けられる。
dYdXのTRUMPWINは選挙結果に連動するデリバティブ
dYdX Foundationは10月14日付の公式記事で、米大統領選におけるドナルド・トランプの勝利を対象とする予測市場型の無期限契約を紹介した。旧記事は17日に新たに立ち上がったと記載していたが、少なくとも公式紹介は14日付で存在する。ニュースの掲載日とサービスの発表日を分けて説明する。
この市場では、勝利を見込む方向のロングと、その反対のショートを取ることができる。単に候補者の支持率を表示する仕組みではなく、価格が変動し、証拠金を使って建玉を維持する取引である。価格から読み取る市場参加者の見方は、世論調査の得票率や選挙結果の確定情報と同じではない。
決済の説明には公式資料間の違いもある。10月14日付の記事は勝利時1ドル、敗北時0.00001ドルを想定した一方、11月1日付の解説は敗北時0.001ドルとしている。本稿ではこの違いを隠して一方を最終的な契約条件と断定せず、旧記事の単純な「1ドルか0ドル」という説明を修正する。
ここで扱うのは2024年選挙向け商品の過去の説明であり、現在の売買案内ではない。仕様を検証する場合は、紹介記事だけでなく、その時点の市場設定や決済ルールにまでさかのぼって照合する必要がある。
最大20倍は常時使える倍率ではない
11月1日付のdYdX Foundationの補足解説は、最大20倍という表現に加えて、利用できる倍率が建玉などの市場条件で変わることを説明している。旧記事のように最大値だけを示すと、いつでも同じ少額の証拠金で大きなポジションを維持できると誤解されやすい。
必要証拠金の割合が上がれば、同じ資金で保有できる建玉は小さくなる。また、最終的に予想した候補が勝ったとしても、その前に逆方向へ価格が動き、証拠金が不足すれば清算される可能性がある。結果を当てたかだけで取引の損益は決まらず、途中の価格経路と維持条件も関係する。
同解説は、資金調達料や強制的な建玉削減にも触れている。相場の急変で損失処理が必要になれば、利益が出ている側の建玉まで縮小される可能性があるという説明だ。これは、選挙結果に連動する価格の仕組みと、口座で受け取れる損益の仕組みを分けて理解すべき理由になる。
損切り注文も、指定した価格で必ず約定する保証とは異なる。注文が通るための流動性や市場の状態を考える必要がある。これらは11月の資料を用いた商品構造の補足であり、10月18日に公表済みだった説明として引用しているわけではない。
ZKsync Igniteは総額3.25億ZKを求めた提案
ZK Nationフォーラムには10月17日、Ignite計画の初期提案が投稿された。記載された枠は9カ月で合計3億2,500万ZKで、このうち3億ZKを利用者向け、2,500万ZKを運営や不測の費用向けに分けている。旧記事の3億ZKは利用者への配分を指し、提案全体の総額とは異なる。
狙いはZKsync EraのDeFi流動性を増やし、取引での価格のずれを抑えることだった。指定されたDeFiアプリやプールへの参加に報酬を配る設計であり、ZKを保有する全員に同額を自動配布する提案ではない。対象となるサービスや配分の選定も計画の一部である。
10月17日に提案が公開されたこと、投票で承認されること、実際に報酬が配られることは別の段階だ。現在のフォーラムページには可決の追記や改訂版への案内があるため、それを見て初日から承認済みだったと読み替えてはいけない。本稿は初期案の金額と構造を整理している。
9カ月の計画と全額の配布実績を混同しない
初期案は、配分を定期的に見直し、一定期間ごとに成果を評価する仕組みを示した。資金をどこへ配るかを固定して終えるのではなく、流動性などの指標を見ながら調整する計画である。したがって、提案額を期間で割って「毎月この金額が必ず配られる」と説明するのは適切ではない。
提案には監督や停止の仕組みも記載され、使われないトークンは未発行のまま残すとしていた。発行できる上限、利用者の受取資格、実際に発行・請求された数量を区別する必要がある。9カ月という当初の計画だけでは、その期間を通じて全額が配布された証拠にはならない。
報酬の設計はサービス利用の動機を変え得るが、それだけで長期的な利用増加や価格上昇が確定するわけではない。施策を評価する際には、報酬期間中の預入規模に加え、その後も流動性や取引が残るかを見る必要がある。ここでは将来の成長を断定せず、提案が何を目指したかまでを説明する。
10月18日分では、Ethereumの将来目標、dYdXの商品の仕様、Igniteの配分提案を中心に確認した。ロードマップは実測値ではなく、最大倍率は固定条件ではなく、提案枠は配布完了額ではない。数字が示す対象と時点をそろえて読むことが、ニュースの正確な理解につながる。
よくある質問
Q. Ethereumは当時すでに10万TPSを達成していましたか?
A. 参照したThe Surgeが掲げたのはL1とL2を合わせた将来目標です。L1単体の実測値としては扱えません。
Q. TRUMPWINではいつでも20倍で取引できましたか?
A. 公式補足は建玉などに応じて利用可能な倍率が変わると説明しています。最大値と実際の証拠金条件は異なります。
Q. Igniteの提案総額は3億ZKですか?
A. 初期案の総額は3億2,500万ZKで、利用者向け3億ZKと運営等の2,500万ZKに分かれます。提案額は配布実績ではありません。
この記事の出典
- Vitalik Buterin:The Surge(2024年10月17日)
- dYdX Foundation:予測市場型無期限契約の紹介(10月14日)
- dYdX Foundation:TRUMPWINの後日解説(11月1日)
- ZK Nation:Ignite初期提案、改訂と可決の追記あり
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