要約
仮想通貨を含む刑事事件において、公安機関が最終判決前に仮想通貨を先行処分するケースが増えています。この先行処分は法的に適切かどうか、またどのような影響を及ぼすかについて検討します。
1. 仮想通貨の司法処分に関する現状
仮想通貨が絡む刑事事件では、司法処分が避けられない課題となっています。2024年には最高人民法院が「司法研究重大課題招標公告」を発表し、徐匯区検察院と公安局が「刑事訴訟における仮想通貨処分の規範指針」を策定しました。これにより、中国の司法機関が仮想通貨の処分の合法性に対して注目を強めていることが伺えます。
2. 公安機関による仮想通貨の先行処分
刑事事件がまだ判決に至っていない段階で、公安機関は仮想通貨を先行して処分する場合があります。容疑者のデジタルウォレットの鍵や助詞を取得し、第三者機関に仮想通貨の処分を委託するケースが典型的です。しかし、この行為は法的に認められているのでしょうか。
3. 仮想通貨の先行処分の法的根拠
3.1 法律の規定
刑事訴訟法によると、押収・凍結された財産は最終判決が出るまで処分してはならないとされています。ただし、次のような例外が認められています。
- 被害者に返還すべき財産や、事件と無関係の財産
- 腐敗や価値の変動が大きい財産(権利者の同意が必要)
3.2 仮想通貨に適用されるか?
仮想通貨が「価値の変動が大きい財産」に該当するかどうかは議論の余地があります。特に、ステーブルコインであるUSDTは価格が安定しており、先行処分が適切かどうかが問題となります。
4. 仮想通貨の先行処分による影響
4.1 刑事手続きに与える影響
先行処分は証拠の保全や量刑に影響を及ぼす可能性があります。無罪判決や不起訴となった場合、既に処分された仮想通貨の返還が難しくなるため、慎重に判断すべきです。
4.2 当事者の権利侵害
容疑者が強制的に同意させられるケースが多く、その同意が本当に自発的なものか疑わしいです。また、処分手数料が高額である場合もあり、当事者に不利益が生じる可能性があります。
4.3 刑事リスクの増加
処分過程で違法な資金が混入するリスクがあり、当事者が新たな罪に問われる可能性もあります。これには、資金洗浄や違法な資金移動に関与するリスクが含まれます。
5. 公安機関の主張とその問題点
5.1 価値変動による処分の必要性
公安機関は、仮想通貨の価格変動が激しいため、早期処分が必要と主張しています。しかし、価格変動が小さいステーブルコインに対しても同様の処分が行われることは、法的根拠に乏しいと言えます。
5.2 判決前の資産価値の確定
公安機関は、判決前に仮想通貨の価値を確定する必要性を主張しますが、これは現行法において必ずしも必要ではないという意見もあります。価格は裁判所の判断に委ねられるべきです。
5.3 安全性の確保
仮想通貨が他者に移転されるリスクがあるとの主張もありますが、これはウォレット管理の適切な対応で解決できる問題です。
6. 先行処分による腐敗リスク
6.1 権力乱用の危険
実際、公安機関が押収した仮想通貨を不正に取得・利用する事例があり、これは権力の乱用を助長する可能性があります。公正な司法手続きが求められます。
6.2 第三者機関の不正リスク
仮想通貨の処分を委託された第三者機関が資産を不正に流用する事件も発生しています。これにより、当事者の権利が侵害される恐れがあるため、第三者機関の監視が必要です。