ビットコイン現物ETFの大量流入と最新動向:注目ポイントを徹底解説

【要約】
ビットコイン現物ETF全体で、1日に4.22億ドルの資金が流入
・主要ETFとしてBlackrockのIBITが3.51億ドルの流入で首位
・Strategy社が「42/42計画」を打ち出し、ビットコイン保有を大幅に拡大予定
・長期保有者の未実現利益は350%近くに達し、10万ドル付近での利確圧力の懸念
・米国株の下落時にビットコインが上昇するケースは珍しく、防御資産への転換はまだ見極め段階

ビットコイン現物ETFの資金流入状況

ビットコイン現物ETFは、投資家が直接ビットコインを保有せずに価格動向に連動した運用ができる金融商品として注目を集めています。5月1日(米東部時間)のデータによれば、各ETFの合計で4.22億ドルもの大幅な資金流入が確認されました。これは市場の強気継続を示唆する重要なシグナルであり、機関投資家をはじめとした多くの投資家がビットコインの将来性を評価している可能性があります。

一方、流出額が最も大きかったのはArk Investと21Sharesが提供するARKBで、1日で8723.21万ドルの資金が流出しました。ETF全体の純資産価値は現時点で1119.86億ドルに達しており、ビットコインの時価総額に対するETF資産比率は5.85%となっています。歴史的に見ても純流入額は累計395.62億ドルに上り、機関投資家の積極的な参入が継続している姿が伺えます。

各ETFの動向

今回の資金流入をけん引したのは、**Blackrock(ブラックロック)のビットコイン現物ETF「IBIT」**です。単日で3.51億ドルの大量流入があり、同ETFの歴史的な総流入額は430.06億ドルに達しました。ブラックロックは世界最大級の資産運用会社であり、グローバル市場への影響力が高いため、同社が運用するETFの動向は暗号資産業界全体から強く注目されています。

また、グレイスケール(Grayscale)の「ビットコインミニ信託ETF BTC」も4192.33万ドルの流入を記録し、累計で13.10億ドルの流入実績を誇っています。グレイスケールはビットコインをはじめ、多様な暗号資産の投資信託を展開しており、機関投資家の参入へのハードルを下げる役割を担ってきました。

Strategy社の「42/42計画」によるビットコイン強化

米国の企業「Strategy」(旧MicroStrategy)は、2025年第1四半期に42.3億ドルもの大幅な赤字を計上し、予想を上回る苦戦を強いられました。しかし同社はソフトウェア事業よりもビットコイン保有に注力する方針を明確化し、今後2年で840億ドルを追加投資する「42/42計画」を発表しました。これは既存の「21/21計画」(420億ドル規模)をさらに発展させる形であり、ビットコインの強気スタンスを継続していることが伺えます。

アナリストによると、Strategy社は依然として「ビットコインの代替的な投資対象」としての地位を保っており、市場のボラティリティがある中でも比較的安定した評価を受けています。同社の株式はPER(株価収益率)が2.13倍とされ、ビットコイン価格の変動と連動しやすい特徴を持ちながらも、法人による大量保有が将来的な価格下支えに寄与する可能性があります。

ビットコイン長期保有者の未実現利益と価格目安

オンチェーン分析企業Glassnodeの最新報告によれば、ビットコインを6カ月以上保有している「長期保有者(LTH)」の未実現利益が350%近くに達しています。これは過去の相場サイクルにおいて大規模な利確が発生する水準と重なるため、将来的に10万ドル付近で売り圧力が高まるリスクが警戒されています。

トレーダーTheKingfisherは、91,000ドル付近に大量のロングポジション清算注文がある一方で、現行価格より上部に控えるショートポジションは少ないと指摘しています。結果として市場上昇の勢いが不足し、価格が下落する局面ではロング勢が清算されやすい環境となり得ます。さらにGlassnodeは、価格が111日単純移動平均線(SMA)と短期保有者(STH)のコストベースを上回り、安定維持できなければ再び弱気相場ゾーンに戻る可能性を示しています。

米国株との相関と「デジタルゴールド」議論

最近の米国株市場が下落基調にある一方で、ビットコインが相対的に強い動きを見せる事例が散見されています。ただし、Nationwide Financialの首席市場ストラテジストMark Hackett氏は、これをもってビットコインが「伝統的な避難資産になった」と評価するのは時期尚早と指摘しています。金のような防御資産とは異なり、ビットコインは依然としてリスク資産の色彩が強く、最近の値動きは「まだ一部の投資家にとって価値の保存手段になり得るかもしれない」程度の傾向に過ぎないとの見方です。しかしながら、将来的にさらなる機関投資家の参入やETF市場拡大が進めば、その認識が変化する可能性は十分に考えられます。

ニュースの解説

今回のビットコイン現物ETF市場での大幅な資金流入は、機関投資家の参入意欲が引き続き旺盛であることを示しています。特にブラックロックのETF IBITが3.51億ドルもの流入を得た点は、世界的な資産運用会社が暗号資産分野に強い関心を持っている証左といえます。一方でARKBの資金流出や長期保有者の高い未実現利益からは、マーケットの先行きに対する警戒感も垣間見えます。

また、Strategy社の巨額ビットコイン投資計画は、企業の資金調達力を背景に暗号資産への強気姿勢を鮮明化した例といえるでしょう。株式市場が下落傾向にある中でビットコインの相対的強さが目立つ一方、依然として「デジタルゴールド」になるまでには時間がかかるとの見方も根強いです。今後は、ビットコイン現物ETFを通じた資金流入がどの程度安定して継続するか、そして長期保有者の利確タイミングが相場にどう影響するかが焦点となります。企業や機関投資家の動きやオンチェーンデータの変化を注視しながら、市場の方向性を見極めることが重要です。