ブータンとタイの旅行NFTを検証|特典・実績とその後

2022年、ブータンの古道「トランス・ブータン・トレイル」の運営団体と、タイ国政府観光庁(TAT)がNFTを旅行に取り入れました。ブータンではトレイルと沿道の地域を支えるための販売、タイでは観光地を訪れるきっかけをつくる配布という、異なる使い方が試されています。

旅行NFTを評価するには、発行された数に加えて、誰がどの特典を使えたのか、現地の観光につながったのかを見る必要があります。この記事では両者の公式資料をもとに、当初の設計とその後の展開、2026年9月27日時点で確認できる範囲を整理します。

古道の再生を支えるブータンの取り組み

トランス・ブータン・トレイルは、ブータンの東西を結ぶ古い道です。運営団体が2022年のスカウト向け企画で紹介した行程では、西のハアから東のタシガンまで403キロに及びます。歴史ある道を歩く体験と、沿道の暮らしや文化に触れる機会を組み合わせた事業です。

公式の開通報告によると、正式な公開は2022年9月28日でした。旧版の記事が挙げていた3月ではなく、この日付で整理するのが適切です。修復にはブータン・カナダ財団、観光当局、地域の人々などが関わりました。

この背景を知ると、NFTの位置付けも分かります。NFTを売ること自体が旅の目的ではなく、道を維持し、地域との関係を続けるための手段として導入されたものです。ただし、事業が目指したことと、実際に集まった資金や地域への効果は分けて確かめる必要があります。

NFT購入者向けに示された特典と確認できない実績

運営団体のNFT紹介ページには、ブータン国内の205のゲオッグという行政単位を表すNFTを作り、Solseaで10SOLで購入できるという案内があります。これは掲載された販売条件であり、現在の在庫や取引成立を確かめたものではありません。

同ページが挙げる特典には、5年間の会員資格、ブータン旅行が当たる抽選への参加、トレイル旅行プランの5%割引、バーチャル体験やSNS上のコミュニティへの参加があります。販売による利益は、トレイルと沿道の地域の持続可能な未来のために使うと説明されています。

2026年9月27日に紹介ページを確認できた一方、販売済みの点数や調達額、実際の資金配分を示す報告は、今回確認した公式資料には見当たりませんでした。掲載が続いているだけで、すべての特典が現在も利用できるとは判断できません。とくに抽選には開通時の旅行という説明があり、新たな購入者が今から参加できると読むべきではありません。

5年間の会員資格についても、いつから数えるのか、譲渡した場合に残りの期間を引き継げるのかで使い勝手が変わります。購入を検討するなら、作品の価格だけでなく、その時点で適用される条件を運営者に確認することになります。

タイは観光地を巡って集める仕組みを採用

TATが2022年11月14日に発表した「Amazing Thailand NFTs」は、12月14日まで観光地でNFTを集める企画でした。対象はバンコクのチャイナタウン、ワット・アルン、ジャイアント・スウィング、サイアム・スクエアと、サムットプラカーン県の古代都市の5か所です。

AndroidとiOS向けのYAKSアプリで現地のQRコードを読み、各地点で1人1点を受け取る設計でした。それぞれの地点に3,999点が用意され、別途スワンナプーム空港にも歓迎用のNFTがありました。少なくとも3地点で3点を集めると、航空券や宿泊、飲食などの特典をまとめて利用できるという案内です。

ブータンの販売型と比べると、こちらは複数の場所を訪れる行動と特典を結び付けている点が特徴です。旅の記念として集める楽しさに、次の目的地へ移動する動機を加えています。主催者にとっては、どこでNFTを受け取ったかだけでなく、その後の来店や宿泊につながったかが効果を測る材料になります。

なお、この仕組みは2022年当時の案内です。古い記事を見て現地へ行っても、同じQRコードや配布枠、割引を利用できるとは限りません。旅程に組み込む際には、実施年と受付期間まで確認する必要があります。

第1弾の実績と、2023年の第3弾までの展開

TATの2023年4月3日の発表では、第1弾で観光客が集めたNFTは1万7,118点でした。企画によって促された観光客の支出は4,300万バーツ超と推計されています。この金額はNFTの売上ではなく、主催者が推計した旅行関連の支出です。また、1人が複数点を集める仕組みのため、NFTの取得数をそのまま参加人数に置き換えることもできません。

同時に発表されたシーズン2では、国内20の観光地に2万4,000点を用意し、22の空港でも受け取れると案内されました。収集期間は2023年4月30日まで、特典は7月31日までです。発表ではタイ人旅行者とタイ在住の外国人が対象として挙げられていました。

さらに、2023年7月6日のシーズン3発表では、配布枠は計5万5,000点に拡大しました。観光地や空港、交通拠点に計5万点、商品・サービスの提供事業者に5,000点という構成です。収集期間は7月20日から8月31日、特典は12月31日までで、タイ人と外国人旅行者が参加対象でした。

したがって、企画が初回で終わったわけではありません。ただし、用意した配布枠と実際に取得された点数は別です。第3弾の告知だけから、5万5,000点すべてが配られた、あるいは観光消費が同じ割合で伸びたとは言えません。2026年に同条件で参加できるという告知も、今回の公式資料の確認範囲では見つかりませんでした。

観光への効果は、配布数と利用実績を分けて読む

両事例から考えられるのは、旅行NFTの評価では企画ごとの目的に合った数字が必要だということです。地域の資金調達なら、販売収入から経費を引いた額と実際の使途が重要になります。観光地の周遊なら、参加者が何地点を訪れ、割引を何回使い、現地でどれだけ消費したかを見たいところです。

TATの支出推計は一つの材料ですが、発表文だけでは計算方法の詳細や、NFT企画がなくても生じた支出との差を判断できません。観光地に来た人がNFTを受け取った場合と、NFTを集めるために新たに旅をした場合では、企画の効果は異なります。因果関係まで示すには、参加者の調査や比較対象が必要です。

ブータンも、販売実績が確認できないことを理由に成功や失敗を決め付けることはできません。暗号資産の市場動向だけで結果を説明するのも早計です。現時点で言えるのは、目的や特典は公表されている一方、今回参照した資料だけでは調達効果を測れないという範囲までです。

別の旅行記念品の事例として、当サイトではAmex Passportの旅行NFTスタンプも取り上げています。比較する際は、記念品として楽しむ用途と、割引や資金調達の成果を分けて見ると、それぞれの企画の狙いを捉えやすくなります。

日本から参加する人が確認したい利用条件

過去の旅行NFTを見つけたら、最初に確かめたいのは現在の参加資格と特典の有効期限です。タイの各シーズンのように対象者や期間が違うこともあります。外国人向けという表現だけで、日本からの短期旅行者も同じ条件で参加できるとは限りません。

確認項目は、配布・販売の期間、特典を使える店舗、予約の要否、会員資格の開始日、譲渡後の扱いです。NFTを持っていることと、ホテルや旅行会社が割引を受け付けることは別なので、予約前に利用先の条件も読み合わせます。キャンペーンの案内画面を保存しておけば、問い合わせの際に対象の特典を説明しやすくなります。

アプリが必要な企画では、自分の端末や居住地で利用できるか、ログインできなくなった際の問い合わせ先があるかも確認しましょう。NFTの記録が残っていても、専用アプリの表示や現地での特典確認まで自動的に続くとは限りません。送られてきたリンクからすぐにウォレットを接続せず、主催者の公式案内からたどることも大切です。

旅行NFTは、訪れた場所の記念や地域を支援する機会になり得ます。その楽しさを評価しつつ、過去の特典を今も使えると思い込まないことが、旅先での行き違いを減らします。

よくある質問

Q. トランス・ブータン・トレイルのNFTは今も買えますか?

A. 公式の紹介ページと販売条件は確認できましたが、現在の在庫、取引成立、特典の利用可否までは確認していません。古い抽選や会員特典を現在も利用できると考えず、運営者に条件を確認してください。

Q. タイのNFT企画で4,300万バーツ売れたのですか?

A. NFTの売上ではありません。TATが公表したのは、2022年の企画で促された観光客の支出の推計です。取得されたNFTは1万7,118点ですが、これは参加人数とも異なります。

Q. Amazing Thailand NFTsは初回だけで終わりましたか?

A. いいえ。TATは2023年4月に第2弾、7月に第3弾を発表しています。第3弾の特典期限は2023年12月31日で、2026年にも同じ条件で使えることを示す資料は今回確認できませんでした。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。