【要約】
・Worldcoin(WLD)は、生体認証とブロックチェーンを組み合わせて「ユニークな個人」を証明する仕組みを提供
・サム・アルトマン氏らが2019年に設立し、Tools for Humanityが開発を主導
・虹彩スキャナー「Orb」により個人認証し、将来的なユニバーサルベーシックインカム(UBI)の土台になる可能性も示唆
・ERC-20トークンとしてイーサリアム上で発行され、独自L2「World Chain」も稼働
・規制やデータ保護の課題が多い一方で、AI時代に必須の「デジタルID基盤」として注目度が高い
Worldcoin(WLD)プロジェクトの概要
Worldcoin(WLD)は「すべての人が参加できるデジタルIDと金融ネットワーク」の構築を目指す暗号資産プロジェクトです。OpenAI CEOのサム・アルトマン氏らが2019年に立ち上げ、サンフランシスコとベルリンを拠点とする企業Tools for Humanityが技術開発を推進しています。プロジェクトの中心概念は「World ID」というデジタル身分証明で、虹彩スキャン端末「Orb」を使い「ユニークな人間」であることを証明します。約200万人のユーザーが参加していた2023年のローンチ以降、2025年5月時点では累計2,600万人以上が登録し、そのうち1,250万人がOrbによる認証を終えています。
技術的特徴
WorldcoinのネイティブトークンWLDはイーサリアム基盤のERC-20トークンで、OptimismなどのL2とも接続されています。さらに2024年10月には独自L2「World Chain」を稼働させ、高速かつ低コストなトランザクションを実現すると同時に、World ID所有者が優先的にブロック生成に参加できる仕組みを導入しています。
Orbを使った虹彩認証は、元の生体データを保存せず、暗号学的ハッシュに変換してプライバシーを保護します。ゼロ知識証明により他サービスに対しても「個人情報を明かさないまま、自分が一意の人間である」ことを示せます。
開発チームと背景
- サム・アルトマン:OpenAI CEOとして名高く、AIとUBIの関連性に強い関心を持つ共同創設者
- マックス・ノーヴェンスタイン:金融テック系起業家でY Combinator出身
- アレックス・ブラニア:理論物理学の知見を生かし、CEOとして技術面や運営を指揮
営利企業であるTools for Humanityに加え、非営利団体Worldcoin財団がガバナンスやトークン配布を監督。著名VCのa16zやLinkedIn創業者のレイド・ホフマン氏などから2.5億ドル以上を調達し、Orbの量産やグローバル展開を進めています。
ユースケース
オンライン認証とボット対策
World IDは「一人一アカウント」を証明するので、SNSやDiscord、Minecraftなどでボットを排除し、信頼性を高める認証手段として導入が進んでいます。
公正なエアドロップや投票
「一人一票」を担保する投票や、限定配布(エアドロップ)での不正を防止可能。DAOのガバナンスやチケット抽選などにも応用が期待されます。
UBIの実験
WLDトークン配布を通じて、将来的なベーシックインカムの基盤になる可能性が示唆されています。AIにより労働構造が変わる時代への備えとして位置づけられています。
金融アクセス
ウォレットアプリ「World App」でWLDを受け取り送金が可能。銀行口座を持たない人への金融包摂(Financial Inclusion)を促す試みとして新興国で注目されています。
トークン経済
WLDは初期総供給量100億枚で、15年かけて段階的に市場へ放出されます。うち75%はユーザーコミュニティ向け配布に割り当てられ、チームや投資家にはロックアップ付きで分配。マイニングではなく、生体認証による「Proof of Personhood」に対して報酬を与える設計が大きな特徴です。
市場動向
2023年7月の上場直後は約$0.15から数ドル台まで急騰し、2024年初頭にはAIブームを背景に最高値$11.7を記録。しかしその後は下落傾向となり、2025年4月時点で約$0.85まで落ち込みました。2025年5月には追加資金調達と米国進出の報道を受け、一時$1.5付近まで反発。主要取引所はBinanceやOKXなどが取り扱い、米国内や日本国内での上場は今後の規制動向次第です。
課題と規制
虹彩スキャンによる生体データ収集はプライバシーやGDPRとの整合性が大きな懸念で、欧州やケニア、香港など複数地域で調査やサービス停止命令が出ています。また「低所得層への説明不十分なデータ収集」との批判もあり、各国規制当局との協議が不可欠です。今後はNFC対応パスポートによる確認など代替手段を整備し、柔軟に対応を図っています。
エアドロップ情報
Worldcoin(WLD)では継続的なエアドロップ方式を採用し、「一度きりの大量配布」ではなく登録ユーザーに毎月・段階的にトークンを付与しています。18歳以上のユーザーがOrbで虹彩認証を行うか、NFCパスポート等による本人確認を完了すると、月ごとにClaim操作でWLDを取得可能。ケニアなどでは初回25WLDが配られた例もあります。こうした長期的なトークン分配方針は、将来のUBI実験につなげる意図があるとされています。
ニュース解説
2025年5月には追加投資家へのWLD売却による約200億円規模の資金調達が話題を呼び、AIの普及とともに「人間性証明」を求めるニーズが高まる潮流を再確認させました。一方で、グローバル規制をめぐる不透明感は根強く、ケニアやEU各国での調査が長期化しています。今後は米国での正式展開やPayPal・OpenAIとの提携構想が注目ポイントとなりそうです。「一人ひとりがデジタル世界でユニークな存在である」と証明する仕組みが、実社会や既存金融サービスへどう組み込まれていくかが、Worldcoin(WLD)の評価を左右するカギとなっています。
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