WWWのソースコードNFTは約6億円で落札|サザビーズ競売の中身と意味

2021年6月30日、サザビーズのオンライン競売「This Changed Everything」で、World Wide Web(WWW)の考案者ティム・バーナーズ=リー氏が書いた初期ソースコードを表すNFTが5,434,500ドル(当時のレートで約6億円)で落札されました。旧版の記事タイトルにあった「4億5000万円以上」は競売の途中段階の話で、最終的な落札額はそれを上回っています。

この記事では、競売で何が売られたのか、なぜWWWのコードが特別視されたのか、そして「誰でも読めるコードのNFT」を買うと何が手に入り何が手に入らないのかを、2026年時点の視点で整理します。

競売の概要:いつ、何が、いくらで売れたか

サザビーズは2021年6月15日に出品を発表し、入札は6月23日から30日までオンラインで行われました。開始価格は1,000ドルで、最終的に51人の入札者が競り合ったと報じられています。落札者の名前は公表されていません。売上は、バーナーズ=リー氏と妻ローズマリー・リース氏が支援する取り組みに充てられると説明されました。

NFTはイーサリアム上で発行され、ひとつのロットに次の4点がまとめられていました。

内容 説明
元のソースファイル 1990〜1991年に書かれた約9,555行のコード。タイムスタンプ付き
アニメーション映像 コードが書かれていく様子を再現した約30分の動画
本人の手紙 コードを書いた経緯と振り返りをつづったもの
デジタルポスター 元ファイルからPythonで生成したコード全体の画像

コードは当時のNeXTコンピューター上でObjective-Cによって書かれ、HTTP、HTML、URIというWebの基本要素を実装したものです。入札者の約半数はサザビーズで初めて取引する人だったとも伝えられ、NFTが伝統的なオークションに新しい顧客層を呼び込んだ例としても注目されました。

WWWは何を変えたのか:1989年の提案から一般公開まで

インターネットそのものの原型は1960年代から存在していました。ただ、コンピューターごとにOSやファイル形式が違い、情報は機関や機種ごとに閉じた状態でした。欧州原子核研究機構(CERN)にいたバーナーズ=リー氏は1989年3月、文書同士をリンクでつなぎ、ネットワーク越しに誰でもたどれるようにする情報管理の仕組みを提案します。

提案は当初すぐには採用されませんでしたが、上司の後押しを受けて開発が進み、1990年末までにCERNで最初のWebサーバーとブラウザが動き始めました。決定的だったのは1993年4月30日、CERNがWWWの基本ソフトウェア(クライアント、サーバー、共通ライブラリ)をパブリックドメインに置いたことです。誰でも無償で使える標準になったことで、同じ年の終わりには既知のWebサーバーが500を超えました。

この功績により、バーナーズ=リー氏は2016年度のACMチューリング賞を受けています(発表は2017年4月)。旧版の記事は「本人が1円も取らずに発明を世界に捧げた」と表現していましたが、正確にはCERNが権利を手放して公開したという経緯です。もし有料の技術として囲い込まれていたら、検索、通販、SNSといった今のWebサービスの多くは違う形になっていたはずです。

公開済みのコードなのに、買い手は何を得たのか

このNFTでいちばん誤解されやすいのは、WWWのコードそのものの権利が売られたわけではないという点です。コードは1993年から誰でも使える状態にあり、落札後もそれは変わりません。買い手が得たのは、本人が用意し署名したデジタル資料の一式と、それを所有していることをブロックチェーン上で示すトークンです。

サザビーズはこの出品を、著名人の自筆原稿の販売になぞらえて紹介しました。紙の原稿でも、中身の文章が公開されていることと、本人が書いた現物を持っていることは別の価値です。NFTはその「現物」にあたる部分をデジタルで表現しようとしたものだと言えます。本人も声明で、NFTはこうしたデジタルの品を所有するうえで最も適した手段だという趣旨を述べていました。

一方で、NFTを持っていても著作権や利用の許諾が自動的に付いてくるわけではありません。権利の範囲は販売時の条件で決まります。NFTの基本的な仕組みはNFTとは何か|初心者向けの基礎解説で詳しく扱っています。

その後どうなったか:ブームの頂点と2026年の状況

この競売が行われた2021年は、NFT市場が最も過熱した年でした。3月にはクリスティーズでBeeple氏のデジタル作品が約6,930万ドルで落札され、伝統的なオークションハウスが相次いでNFTを扱いました。WWWのコードNFTはその流れの中で「歴史的なデジタル資料」という新しい枠を示した例です。

その後、2022年以降は暗号資産市場の下落とともにNFTの取引額も大きく縮みました。このWWWのNFTについては、落札者やその後の転売に関する公式な発表は確認できませんでした。高額で落札されたNFTでも、所有者が公表しなければ現在の持ち主や評価額は外から分かりにくいという点も、この事例から読み取れます。

バーナーズ=リー氏本人は、その後も個人が自分のデータを管理できるWebを目指す「Solid」の普及に取り組み、2025年9月には回顧録『This Is for Everyone』を出版しています。NFTの売却は一度きりの出来事で、本人の関心の中心はWebを開かれた場に保つことに置かれ続けています。

歴史的デジタル資料のNFTを見るときの5つの確認点

同じような「由来のあるデジタル資料」のNFTは、その後も美術館や企業から出ています。検討するときは次の点を確かめてください。

  1. 何に対する権利か:所有の証明だけなのか、商用利用や展示の許諾まで含むのか。
  2. 発行元の真正性:本人や正規の販売元が発行したコントラクトかどうか。偽物の出品は珍しくありません。
  3. データの保存場所:画像や動画がブロックチェーン上にあるのか、外部サーバーやIPFSに置かれているのか。
  4. 売りやすさ:高額な一点物は買い手が限られ、すぐに現金化できるとは限りません。
  5. 価格の根拠:話題性で付いた価格は、ブームが去ると大きく下がることがあります。

いずれも価格の見通しではなく、取引の前に事実として確かめられる項目です。WWWの例のように、中身がすでに公開されている資料では「所有していること」以外に何が付くのかを、販売ページの条件欄で必ず読み比べてください。

日本の読者向け:税金と取引の扱い

日本の居住者がNFTを売買した場合、そのNFTが暗号資産などの財産的価値のある資産と交換できるものであれば、所得税の対象になります。国税庁のタックスアンサー(No.1525-2)では、値上がり益と認められる譲渡は譲渡所得、営利目的で継続的に売買している場合は雑所得または事業所得に区分するとされています。

海外のオークションに参加する場合は、支払いに使う暗号資産を日本円で買った時点と使った時点の差額にも課税関係が生じる点に注意が必要です。たとえばイーサリアムで落札代金を払うと、その支払いは暗号資産の譲渡として扱われ、取得時より値上がりしていれば差額が雑所得になります。

また、海外のマーケットプレイスや競売で購入したNFTを年末に保有している場合、一定の条件を満たす人は財産債務調書や国外財産調書への記載が必要になることがあります。国税庁の「NFTに関する税務上の取扱いについて」でこれらの扱いが整理されています。具体的な計算は国税庁の資料や税理士に確認してください。

よくある質問

Q. WWWのソースコードNFTはいくらで落札されましたか?

A. 2021年6月30日に5,434,500ドルで落札されました。当時の為替で約6億円です。開始価格は1,000ドルでした。

Q. 落札者はWWWの権利を手に入れたのですか?

A. いいえ。WWWの基本ソフトウェアは1993年にCERNがパブリックドメインにしており、誰でも使えます。落札者が得たのは本人による資料一式と、その所有を示すトークンです。

Q. このNFTには何が含まれていましたか?

A. 約9,555行の元ソースファイル、約30分のアニメーション映像、本人の手紙、コード全体を画像にしたデジタルポスターの4点です。

Q. 日本でNFTを売って利益が出たら税金はかかりますか?

A. 暗号資産などと交換できるNFTであれば所得税の対象です。所得区分は取引の内容で変わるため、国税庁のタックスアンサーNo.1525-2を確認してください。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。