【要約】
・Web3 AI 領域がこれまで経験してきた 五つの主な熱狂の流れ を振り返ります。
・各波で登場した代表的なAI関連プロジェクトや、その背景にある盛り上がり方を把握します。
・第五波の特徴として、より実用面を重視するプロジェクトの台頭が注目されています。
・Virtualsをはじめとした新しい打新(トークン販売)事例や、Memeコイン動向も取り上げます。
序章:AI×ブロックチェーンが歩んだ五つの波
近年、AI技術の進歩とブロックチェーンの融合が急速に進み、“Web3 AI”という言葉が投資家や開発者の間で大きな関心を集めています。特に2023年前後からは、ChatGPTの登場が一般ユーザーにもAIの可能性を身近に感じさせ、暗号資産(クリプト)業界でも「AI+ブロックチェーン」を掲げるプロジェクトが相次ぎました。以下では、これまでに起こった五つの主要な盛り上がり(波)を取り上げ、その代表的な事例を概観します。
第一波:AI概念コインの誕生とChatGPTブーム(2018-2023年初)
最初の波は、**Fetch.AI(FET)やSingularityNET(AGIX)**など、2018〜2019年に“AI×ブロックチェーン”を掲げていたプロジェクトが、2023年初にChatGPTの大ヒットを受けて再評価された時期に始まります。
- 背景:ChatGPTが2022年末に一般ユーザーにも人気となり、「AIが本格的に仕事効率を高める時代が来た」という認識が広まりました。
- 特徴:もともと存在していたAI概念コインが「ChatGPTの追い風」という格好の題材で一気に価格高騰。多くのプロジェクトが実際の技術や製品化より、当時は“ストーリー先行”で盛り上がりました。
第二波:本格的なBTC強気相場下のAIミームコイン乱立(2023年末〜2024年)
暗号資産全体の相場が強くなった2023年末から2024年頃には、Memeコインの盛り上がりが再燃。その中にAIの要素を取り入れた“Meme×AI”トークンが数多く登場しました。
- 事例:TURBO
- ChatGPTを使って作られたとされるAIミームコインとして話題を呼び、数百倍の高騰が起こりました。
- 実際には技術的な裏付けは薄く、「AIが生成したストーリー」をエンタメとして楽しむ投機要素が強かった面は否めません。
第二波全体としては、コミュニティ主導のAIミームコインが次々にリリースされ、多くが一時の加熱を経て急落・淘汰されていきました。
第三波:AIエージェント・ミームと「GOAT神話」(2024年下半〜2025年初)
2024年後半からは、“AIエージェント(AI Agent)”と呼ばれる自律型エージェントのコンセプトが目立ち始めます。中でも象徴的だったのが**$GOAT**(Goatseus Maximus)をめぐる熱狂です。
- $GOATのインパクト
- “Truth GPT”というAIが自律的にミームコインを創出した、という物語性が投資家やコミュニティを大きく刺激しました。
- 上場直後、わずか24時間で12,000%超の高騰を記録し、まるで“SF的未来”を体現するプロジェクトのように扱われました。
- 実態
- 多くの「AIエージェント」系プロジェクトはストーリー先行で、実際は単なる自動化スクリプトにとどまるケースもありました。
- 2025年1月に起きた市場の変化をきっかけに投機資金が離れ、$GOATなども急落。短期バブルの特徴が色濃く出たといえます。
第四波:a16z系AIエコシステムとAI Agentプラットフォームの台頭(2024年末〜2025年初)
次に来たのが、本格的な開発意図や知名度の高い投資家の後押しを得たプロジェクト群による第四波です。ここではai16zやVirtualsなどが代表例として注目を浴びました。
- ai16z
- 有名VC「a16z」をもじった名前のAI投資DAO(自動売買エージェント)を掲げ、**「AI+投資+Meme」**という三位一体のストーリーで急騰。
- a16z創始者Marc AndreessenがSNSで言及したことで、発売直後から時価総額が一気に上昇。
- Virtuals
- AIエージェントの基盤を構築し、多くの開発者が参加可能な“プラットフォーム”を目指しました。
- 一時はエコシステム内のプロジェクト評価額(FDV)が数十億ドルに達するなど、期待感は非常に高かったものの、実需やユーザー数の伸びが追い付かず、2025年初には価格が大きく下落。
第四波では、一時的に高い評価を得たものの、実際のユーザー獲得と収益化が不十分であったことから、盛り上がりの反動も大きかったといえます。
第五波:実用に近づく百花繚乱の新プロジェクト(2025年Q2〜)
2025年第2四半期に入ると、以前の“虚”に偏ったミーム型ではなく、実際に使えるサービスやプラットフォームの開発を目指すプロジェクトが続々と登場し始めました。
- Zerebro
- Solana上で、コンテンツ生成や自律型エージェントを誰でも簡単にデプロイできる“AIエージェントのアプリストア”を目指しています。
- 2025年4月にはトークンが400%上昇するなど、実需期待の表れか一定の評価を得ましたが、実装はまだテスト段階の部分が多いようです。
- MetisのAIチェーン「Hyperion」「LazAI」
- ETH Layer2で知られるMetisが、AI向けの高負荷処理に対応する新チェーン“Hyperion”をテストネットで立ち上げ。
- 個人データの価値付けを目指す“LazAI”も発表し、Web3 AIならではの分散化とデータ主権を組み合わせたモデルを開発中。
- トークンは従来の$METISを活用しながら、実用面に直結するロードマップを提示しているのが特徴です。
第五波はこれまでと比べて、実際のユースケースやユーザーのデータ価値により大きく焦点が当てられています。しかしプロジェクトによっては、開発メンバーの不可解な行動(Zerebroの共同創業者が“死亡”宣言を行うなど)も見られるため、市場の投機性は依然残っている状況です。
最新動向:Virtualsの打新で50倍、高まるMeme・PVP熱
最近の事例として、Virtualsが新トークンを打ち上げ(いわゆる“打新”)し、約50倍の高いリターンを示したことが話題になりました。ただし、コミュニティ内では“ポイント配分の不公平”が指摘されるなど、一部でルールに対する不満の声も上がっています。
また、moodeng, pnut, neiroなどのMeme銘柄が相次いで上昇し、PVP(投機性の高い銘柄間の資金移動)な側面も引き続き活況を呈しているようです。
さらに、$BULL(gork初のMeme)や$LABUBUといった大IP(知的財産)を掲げる新規トークンも海外投資家から注目されるなど、投機とエンタメが密接に絡むWeb3 AI/Meme市場の盛り上がりは続いています。
ニュースの解説
今回取り上げた「五つの波」は、Web3 AIが短期間に大きく盛り上がり、そして落ち着くまでの繰り返しの過程を端的に示しています。現時点では「実際に使えるかどうか」がより重視されつつあり、第四波のような“空虚なバリュエーション”の反動を乗り越えられるかが今後の鍵となるでしょう。
一方、Memeコイン特有の“爆発的な値上がりと急落”は依然として健在で、投資家の投機意欲を駆り立てています。ただし、ZerebroやMetisの事例からも分かるように、ユーザーが本当に求めるAIサービスや個人データを適正に扱うWeb3 AI基盤こそが、将来的な真の価値を生む可能性が高いといえます。短期的な価格変動だけでなく、プロジェクトの技術背景やチームの姿勢などを見極めることが、今後はさらに重要になりそうです。