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【要約】
・Virtuals ProtocolがSolana上に初めて展開した際、AI Agentの「卒業率」はわずか8.3%
・Baseネットワークで大成功を収めた同プロトコルだが、Solana上では市場参加が低調
・全体的なAI Agent市場の冷え込みや、複数指標の下落が影響
・それでもVirtuals ProtocolはAI Agent分野で依然として高い市場シェアを維持
Virtuals Protocol、Solanaでの初日から見えた「水土不服」状態
2025年2月12日、Baseネットワークで最も注目されてきたAI AgentプラットフォームであるVirtuals Protocolが、Solanaへの多チェーン拡張を正式に開始しました。新たに発表されたMeteora取引機能や1%の取引手数料をSOLとして還元する「Strategic SOL Reserve (SSR)」など、一見魅力的な要素が並びます。しかし、蓋を開けてみると、初日の卒業率(Agentが十分な代替通貨を確保し、完全に立ち上がる比率)がわずか8.3%にとどまり、市場の期待ほどの盛り上がりは見られませんでした。
多チェーン展開の背景と対策
Virtuals ProtocolはBaseで大きな成功を収め、多数のAI Agentをリリースしてきました。そのノウハウを生かしてSolanaへ進出するにあたり、いくつかの方策を打ち出しています。たとえば、Base側で固定化された流動性プールを拡張するため、Solanaに追加の流動性プールを作成する方法や、SOLでBase上のAI Agentを購入できるようなチェーン間抽象化の実装を検討中といいます。
また、Baseのエージェントが蓄積した50%のcbbtcを活用する形で、Solana上で新たなプールを生成し、ユーザーがSOLを用いてSentientをトレードできるようにする取り組みも提示していました。さらに、Solanaのプロジェクト支援を受けたハッカソンを3月に開催するなど、多面的にエコシステムを育成しようとする戦略が見られます。
市場の反応:Graduation率8.3%、持ち合いが低調
しかし、実際に稼働を始めてみると、Virtuals Protocolの目指す「多チェーンエコシステム」の成功は、まだ遠いようです。2月12日午前の時点で、新規に生成されたSolana上のAI Agentは156個しかなく、そのうち卒業(42,000枚のVIRTUALを結び付け、正式に流動性プールを作成する状態に到達)できたのはわずか13個でした。市値が100万ドルを超えるエージェントは5つほど存在するものの、多くのトークン価格は初値から大幅に下落し、保有アドレス数も数百程度と限られています。
特に注目されたNyxというプロジェクトは約1,300万ドルの市値を維持しているものの、他のエージェントは高値を付けた後に急落し、約半数がほぼゼロ近くにまで落ち込む状況です。市場参加者の熱意がBaseほど高まっていない点は明白で、Solanaコミュニティ全体に対する波及効果は限定的と言えます。
AI Agent市場全体の冷え込みとVirtualsの地位
この低調なスタートには、そもそもAI Agent市場が近頃冷え込み傾向にあるという背景も無視できません。Virtuals ProtocolのBase上での取引量は一時期累計67億ドル超を誇りましたが、1月下旬以降は新規AI Agent数や日次取引量、日次収益などの指標が大きく減少しています。過去には日次で1,300以上のエージェントが生成されていたのが、現在では数十にとどまる日がほとんどとなっています。
価格面でも同様の下落傾向が鮮明で、VIRTUALトークンは直近1カ月で46%以上下落しました。市場全体を見渡すと、AI Agentセクターの時価総額自体も高値から60%以上の下落を経験しており、投資家がリスク回避に転じた印象は否めません。
ただし、Virtuals Protocolは依然としてAI Agent市場最大手の地位を保っています。Cookie.funの情報によれば、同プロトコル関連の総エコシステムの時価総額は約177億ドルとされ、依然として市場全体の24.8%を占めるシェアを持ちます。一方、Solana上では既存のai16zが19.2%を占めており、Virtuals ProtocolのSolana市場への浸透度はまだ限定的です。
今後の展望:市場波動を乗り越えられるか
多チェーン拡大戦略によって、Virtuals Protocolはさらなる成長を目指しています。BaseだけでなくSolana、そして将来的には他のブロックチェーンとの連携も視野に入れることで、独自のAI Agentエコシステムをグローバルに広げたい考えです。しかし、市場そのものが下落局面にある中で、流動性の拡充やユーザー獲得には想定以上の困難が伴うでしょう。
同プロトコルは、Baseのエージェント回収資金(回収したトークンをバーンする仕組み)を一部再活用し、1万ドル以上のTVL(Total Value Locked)を持つプロジェクトを中心に積極的なクロスチェーン展開を支援する計画を打ち出しています。こうした対策によってSolana上での存在感を早期に高め、停滞気味のAI Agent市場に新しい活力を取り戻せるかが今後の注目点となるでしょう。