2025年版・ベトナム暗号資産合法化ガイド

▽ 要約

 – 2025年新法で暗号資産を正式に定義し、2026年施行へ
 – 国内取引所のサンドボックス試験とライセンス制度を導入
 – 不透明感の解消で取引所・ブロックチェーン企業に追い風
– 「管理」と「育成」を両立するデジタル経済戦略を加速
– 近隣国と肩を並べ、投資・税収・技術流入の拡大が期待

ベトナム暗号資産合法化 ― 新法の核心ポイント

ベトナム国会は2025年6月、「デジタル技術産業法」を可決し、暗号資産をデジタル資産の一類型として初めて法令上に明記しました。

  • 二分類:暗号資産と仮想資産を分け、証券・法定通貨トークンは除外
  • 監督権限:政府機関にライセンス基準やAML/CFT規則を策定させ、FATF基準への準拠を明示
  • 施行時期:2026年1月1日。移行期間中に細則を整備し、サンドボックスで実証を実施

この枠組みにより、禁止ではなく制度内での健全な市場形成を図る姿勢が鮮明になりました。

政府の立場と今後の政策ロードマップ

かつて消極的だったベトナム政府は、「リスクを抑えつつ機会を逃さない」戦略に転換。

  • 首相指示:財務省と国家銀行に対し、年内に暗号資産規制案を具体化する期限付き命令
  • サンドボックス:2025年内開始、2027年までの時限措置で国内取引所を試験運営
  • 追加検討:暗号資産所得への課税、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の研究

業界・投資家への影響

1 取引所ビジネス

明確な法的レールが敷かれることで、国内ライセンス取引所の誕生が現実味を帯びました。AML/KYC義務は厳格化する反面、ユーザー保護と資金流入が期待できます。

2 ブロックチェーン・スタートアップ

従来はシンガポール等に本社を置いていたチームが、国内登記や研究開発拠点の設置を検討。税優遇や人材ビザの優遇策も後押しとなり、開発エコシステムの内製化が進む見通しです。

3 個人投資家

保有率が世界トップ級のベトナム投資家にとって、当局の監督下で安全に取引できるメリットが大きい一方、本人確認・課税などの新コストは避けられません。

世論・メディアの視点

国内報道は「暗号資産はチャンス、だが枠組みが急務」との論調が主流。シンガポールやタイとの比較記事が多く、「周回遅れを防ぐべき」との声が高まり、新法可決を**“待望の第一歩”**として肯定的に伝えています。

グローバル比較で見るベトナムの位置づけ

  • シンガポール:早期ライセンス制でアジア最大の暗号資産ハブを形成
  • タイ:2018年合法化、2022年決済禁止で安定を優先
  • 中国本土:全面禁止し、CBDCに集中
    ベトナムは「禁止」と「自由放任」の中間に位置し、規制と育成のバランス型モデルとして注目されます。

新法は、急拡大するベトナムの暗号資産市場に透明性と信頼をもたらし、投資・技術・税収の面で多面的な成長を促す起爆剤となるでしょう。今後は細則策定と監督体制の強化が鍵となります。

■ ニュース解説

ベトナムが選択した「管理しながら育成する」政策は、東南アジアにおける規制競争の新たな起点となり得ます。明文化されたルールは国外資本を呼び込み、スタートアップ誘致や税収拡大につながる一方、市場監視コストや技術者不足への対応も不可欠です。投資家は施行前の移行期リスクを見極めつつ、合法化後の拡大ポテンシャルに注目する局面に入っています。