バンクーバー、ビットコイン排熱でKits Pool加温

▽ 要約

プール加温は会議提案段階、正式決定や契約なし。
市はBTC受領・準備金の可否を調査指示(2024-12-11)。
憲章201条とBC州の接続停止が制度面の壁。

「ビットコインマイニング(採掘)の排熱でKits Poolを通年加温できるのか?」という話題が地元で注目を集めています。結論は、現時点では会議での提案・議論段階で、市の正式事業ではありません。一方で、市議会は税・手数料のBTC受領や準備金の一部BTC化の可否を職員に調査させています。本稿では、バンクーバー ビットコイン排熱 プール加温の論点を、法制度・技術・先行事例・実務面から解説します。

いま何が起きているか(時系列)

会議でのプレゼンと市議会動議が並行して話題化したため、実施決定と混同されやすい。
2024年12月11日、バンクーバー市議会は「Bitcoin Friendly City」化の可否を職員に調査・報告させる動議を可決(Q1 2025報告目標)。2025年8月、Learning Bitcoin会議で「採掘排熱でKits Poolを加温できるか」がパネル議論され、市長も登壇しました。スタッフ報告は当初予定より遅延し、8月時点で提出時期は未定と伝えられています。

動議の中身(2024-12-11)

市の税・手数料のBTC受領や、準備金の一部をBTCで保有する可能性をあくまで検討する内容で、導入決定ではありません。職員は実現性・リスク・必要な立法措置を洗い、枠組み案を示すよう指示されています。

Kits Pool加温案(2025-08)

Learning Bitcoin会議のパネルで技術的可能性と経済性が議論され、地元メディアが相次いで報道しました。ただし、これは市の公式プロジェクトではなく、アイデア段階です。

制度・実務のハードル

憲章上の投資制限と州の電力接続方針が鍵のため、直接保有や新設設備の導入は現行枠組みでは難しい。
市がBTCを直接保有するには、Vancouver Charter第201条の投資対象(国債・社債・預金等)に暗号資産が含まれない点が壁です。BTC受領は決済代行で即時CAD化する方式なら実務上の前例があり現実的。さらに、BC州は新規クリプト採掘の系統接続を一時停止しており、設備新設・増設には政策面の制約がかかります。

市がBTCを準備金として直接保有

投資先を伝統的有価証券・預金等に限定する第201条のため、暗号資産の直接保有には法改正や特例枠が必要となります。カストディ、評価損益、内部統制の設計も不可欠です。

税・手数料のBTC受領(現実解)

代行事業者で即時CAD転換すれば、市は加えて暗号資産を保有せずに入金できます。オンタリオ州イニスフィル町は2019年に固定資産税の暗号資産払いを1年パイロットとして実施し、自治体側はCADで受領しました。会計・監査・ボラティリティ対策の負担が軽く、短期導入の現実解です。

採掘設備の電力接続

BC州は2022年12月から新規クリプト採掘の接続を一時停止し、2025年12月まで延長。恒久制度の設計が進むため、新設・増設は厳格な枠内での審査が前提です。既存容量で成立する小規模モデルでも、用途の位置付け次第で影響を受けます。

技術と経済性(「デジタルボイラー」の要点)

ASICの消費電力の大半が熱になるため回収は容易だが、熱効率比較ではヒートポンプ優位な場面も多い。
高効率ASICを液浸冷却し、熱交換でプールや配管に供給する「デジタルボイラー」方式が想定されます。カナダのMintGreenは、電力の約96%を熱として回収可能と説明してきました。もっとも、熱を得るために電力を大量投入するため、純粋な熱効率ではCOP>1の電動ヒートポンプが有利になり得ます。採算はBTC価格・手数料・電力単価・負荷率・メンテコストに左右され、州の接続方針も外部制約です。

先行事例(カナダ/海外)

既存インフラの低炭素化と採掘収益の両立を狙う実装・計画がある。
ノースバンクーバーでは、市営のLonsdale EnergyとMintGreenが排熱販売の枠組みを公表し、96%回収をうたいました。英国ExmouthではDeep Greenがプールを加温し、ガス需要の約62%削減を掲げます。事業スキーム・電源構成・熱需要プロファイルにより成否が大きく分かれる点に留意が必要です。

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Kits Pool(現地の計画とスケジュール)

更新に向けたフィージビリティと住民意見が進行中のため、熱源選定は資本計画の中で比較される見通し。
Kits Poolは老朽化と漏水の課題から置き換え(更新)のフィージビリティ調査が進行し、2025年夏に住民意見募集が実施されました。2027–2030資本計画で位置付けが検討され、2025年秋にエンゲージメントサマリーが公表予定です。排熱活用を含む熱源の選択は、この更新プロセスの文脈で議論されます。

▽ FAQ

Q. Kits Poolの通年加温は決定済みですか?
A. いいえ。2025年8月の会議での提案段階で、市の公式プロジェクトでも契約でもありません(CTV/Global)。

Q. 税・手数料のBTC受領はいつから?
A. 2024-12-11に調査指示の動議可決。Q1 2025報告目標でしたが、2025-08-12時点で未定と報じられています(BIV)。

Q. 市がBTCを準備金として保有できる?
A. Vancouver Charter第201条の投資制限のため困難。国債・社債・預金等に限定され、暗号資産は想定外です。

Q. 代行経由でのBTC払いの先例は?
A. オンタリオ州イニスフィルが2019年にCoinberry経由で固定資産税の暗号資産払いをパイロット、市はCADで受領。

■ ニュース解説

市議会がBTC受領・準備金の一部BTC化の可否を職員に調査指示したため、制度面の検証が進む一方で、Kits Pool加温は会議での提案にとどまる。
投資家の視点:短期の現実解は「BTC受領→即時CAD化」で、会計・監査対応が明快です。直接保有は憲章201条に阻まれやすく、排熱活用は熱需要・電力・接続政策・市況に連動します。案件ごとに電源の炭素強度・熱効率・規制を精査し、パイロット→評価→段階実装の順でリスク管理を。

※本稿は投資助言ではありません。

(参考:City of Vancouver,Government of British Columbia,BC Gov News