▽ 要約
失業|新規申請26.3万件、約4年ぶりの高水準
物価|8月CPI+2.9%、コア+3.1%で想定内
金利|10年債4%台、住宅ローン6.35%へ低下
株式|ダウ46,108ドル、利下げ期待で上昇
雇用の減速とインフレ鈍化が並行するなか、米国利下げ観測が強まっています。新規失業保険申請の急増とCPIの落ち着きが長期金利を押し下げ、住宅ローン金利も低下、株式は最高値圏へと反発しました。本稿では米国利下げ観測を軸に、雇用・物価・金利・株式・暗号資産規制の最新動向を要点を解説します。
雇用と物価の足元
雇用の軟化が鮮明となる一方、インフレは予想線上で上昇ペースは緩やかなため、政策判断は雇用重視に傾きやすい。
9月6日までの週の新規失業保険申請は26.3万件と予想を上回り、21年10月以来の高水準に達しました。継続受給は193.9万人で横ばいです。8月CPIは前年比+2.9%、コア+3.1%、月次は総合+0.4%、コア+0.3%。加えてPPIは前月比▲0.1%と卸売段階の物価圧力も和らぎました。雇用の冷え込みと物価の落ち着きが同時進行し、インフレ再燃懸念は後退しています。
雇用の減速シグナル
申請の急増と求人減少が重なり、労働需給のバランスは緩み方向へ向かった。
新規申請の4週平均は24.05万件へ上昇し、申請トレンドの反転を示唆します。年次改定で雇用者数の下方修正も示され、夏以降の雇用者増加ペースは鈍化傾向です。継続受給193.9万人は「職探し期間の長期化」を示すほどではないものの、先行指標としての初回申請の悪化は無視できません。
物価は想定線上で減速基調
家賃や食品は粘着的だが、財価格や生産者段階の下押しで総合は落ち着いた。
8月は総合CPI+2.9%と前年比で伸びがやや加速した一方、コアは3.1%に据え置き。PPIはサービス・マージンの低下が寄与して前月比マイナスとなり、川上の価格圧力は限定的です。目標2%はなお上回るものの、政策上は許容範囲に近づいています。
金利と住宅ローン
長期金利の低下が進み、資金調達コストの軽減を通じて住宅需要の改善期待が高まった。
米10年債利回りは約4.04%へ低下し一時4%割れ、2年債も3.5%台半ばまで低下しました。金利低下の波及で30年固定住宅ローンは平均6.35%(前週6.50%)と15bp低下、過去1年で最大の週次低下幅。フレディマックは「金利が正しい方向に動き、購入申請は4年以上で最高の前年比伸び」と指摘しています。
株式市場の反応
利下げ観測が強まり、ハイテク・金融を中心に主要指数は総じて強含んだ。
インフレ・雇用指標の組み合わせを受け、投資家は近い将来の緩和を織り込みました。ダウ平均は9月11日に46,108ドルで引け、史上最高値圏。S&P500とナスダックも連日で最高値圏に乗せ、AI関連や金利低下の恩恵を受けやすいセクターが牽引しました。
金融政策の見通し(FOMC)
9月FOMCでの0.25%利下げ観測が優勢となり、年内3回の小幅利下げが市場コンセンサスとなった。
先物・各種サーベイでは、9月会合の25bp利下げ確率が約9割まで上昇。10月・12月も各25bpの累計0.75%が有力視されています。一部では50bpや、年明け1月までの連続利下げ観測も残存しますが、基本シナリオは「小幅・複数回」。ガイダンスは今後の物価と雇用データ次第で機動的に調整されます。
伝統金融×ブロックチェーン/暗号資産規制
大手のトークン化進展とAML強化が並走し、市場制度の近代化と規制リスクの両立が進む。
ブラックロックはETFのトークン化検討を進め、24時間決済やアクセス拡大といった利便性を狙います。同社のトークン化MMF「BUIDL」は2024年の立ち上げ後に急拡大し、ユースケースの実証が進みました。一方で米FinCENはCVCキオスク(暗号資産ATM)に関する注意喚起を発出し、SARの活用やレッドフラッグの明確化など、監視を一段と強化しています。過度な監視はイノベーション阻害の懸念もありますが、投資家保護と不正抑止のバランスが重視されています。
▽ FAQ
Q. 新規失業保険申請はどの程度増えた?
A. 9月6日週は26.3万件で前週比+2.7万件。継続受給は193.9万人で横ばい。
Q. 8月のインフレは再加速したのか?
A. 総合CPIは前年比+2.9%、コア+3.1%。月次は総合+0.4%、コア+0.3%でした。
Q. 10年債と住宅ローンはどこまで低下?
A. 10年債は約4.05%、30年固定は6.35%。住宅ローンは▲15bpで1年最大。
Q. 株式はどの指数が強い?
A. ダウは46,108ドルで最高値圏、S&P500とナスダックも過去最高圏に復帰。
Q. 次回FOMCで何が織り込まれている?
A. 9/16–17に0.25%利下げの確率が約9割。年内3回の小幅利下げ観測が優勢。
■ ニュース解説
雇用先行指標の悪化とCPI・PPIの落ち着きを受けて利下げ観測が強まったため、長期金利が低下し住宅ローン金利も下がり、株式は最高値圏へ資金が回帰した。
事実|失業保険申請は26.3万件、CPIは前年比+2.9%、10年債は4%台前半、ダウは46,108ドル。背景|雇用の軟化がインフレ懸念を上回り、年内複数回利下げを市場が織り込み。影響|金利敏感セクターや住宅関連に追い風だが、データ次第で織り込みの巻き戻しリスクも内在。
投資家の視点:ポートフォリオではデュレーション延長・高格付け社債・金利敏感株の段階的積み増しが一般論として機能しやすい一方、CPI・雇用の上振れ時に備え、バリュー株や実物資産のヘッジ性を併用する分散が有効です。イベント直前の過度なレバレッジは避け、政策決定後のボラティリティ期にエントリー判断を行うのが無難です。
※本稿は投資助言ではありません。
(参考:米労働省,Freddie Mac)