米政府機関閉鎖リスク71%、最高裁は外援凍結容認

▽ 要約

シャットダウン 予測市場で10/1時点71%に上昇。
最高裁判断 外援約50億ドルの凍結を暫定容認。
規制協調 SEC・CFTCが9/29に合同円卓会議。
新関税・指標 薬品100%関税表明、GDP改定3.8%。

予算交渉の座礁で米政府機関閉鎖リスクが歴史的水準に跳ね上がり、最高裁は外援凍結を暫定容認、通商では薬品100%関税が打ち出されました。米国市場を巡る制度・司法・通商の三点が同時に動くため、資産配分と企業収益の感応度を冷静に点検する上で本稿は「米政府機関閉鎖リスク」を軸に最新状況を解説します。

政府機関閉鎖リスクが「71%」

交渉の打ち切りで与野党の溝が深まったため、10月1日の閉鎖発生確率は予測市場で71%と今年最高に達した。
カリシ(Kalshi)の集計では、年内いずれかでの閉鎖確率も71%と過去最高で、中央値の想定閉鎖日数は約4.5日へ延びています。背景には、9月23日にホワイトハウスの与野党会談が見送りとなった政治的膠着があり、短期的には行政サービスの停止・公共投資執行の遅延・連邦職員の無給化など実体経済リスクが増大します。

市場・経済への波及

短期の閉鎖でも政府需要の後ずれと調査統計の発表遅延で景況判断が曇る一方、長期化すれば連邦請負先の資金繰りと信用スプレッド拡大に波及しやすい。

最高裁、対外援助資金の凍結を暫定容認

違憲とした下級審判断が停止されたため、約49~50億ドルの外援が失効期限(9月末)まで支出不能となる可能性が高まった。
保守多数の最高裁は緊急上訴を認め、政権の「ポケット・リセッション」手法を実質的に容認しました。3人のリベラル系判事は強く反対し、三権分立の逆転を懸念しています。政治・外交両面で大統領権限が強化される一方、議会の歳出統制の実効性に構造的な疑問が生じています。

SEC・CFTCが規制協調へ—9/29合同円卓

ルールの重複や監督の空隙を埋めるため、両機関は9月29日にSEC本部で公開円卓を共催し、トップ自らが開会挨拶を行う。
アジェンダには「プラットフォーム」「参加者」など市場横断の論点が並び、暗号資産・予測市場・先物・証券の接点で規制調和を探る構成です。SECのポール・アトキンス議長とCFTCのキャロライン・ファム委員長代行の出席が明記され、業界団体・取引所・フィンテック経営陣も登壇します。

人事の確認

2025年4月就任のアトキンス議長と、1月就任のファム委員長代行の体制下で、越境課題の整理が進む。

マスク氏「魔法のマネー・コンピューター」発言の検証

マスク氏は14台の“無から送金するPC”の存在を語ったが、独立した政府一次資料の裏付けは乏しく、裁判所はDOGEの支払系アクセスを一時差し止めている。
3月のポッドキャストでの主張が拡散した一方、2月の司法判断はDOGEのアクセス差止めを命じ、監督・安全性の論点が優先されていることを示しました。現時点で「14台」の具体的実在や実害に関する公的監査結果は確認できません。

ブラックロック、ビットコインETF(IBIT)比率を引き上げ

N-PORT開示に基づく報道では、同社グローバル・アロケーション・ファンドが7月末時点でIBITを100万0808口、評価額約6,640万ドルとし、4月末から38.4%増とされた。
運用資産に対するIBITの比率は約0.4%規模で、2月の「ビットコイン1~2%組入れが合理的」との示唆とも整合的に段階的拡大が続いています。もっとも、ETFの流動性と暗号資産特有のボラティリティには引き続き留意が必要です。

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TikTok米事業の評価額は140億ドル—強制売却の行方

大統領令で120日以内の売却手続きが走るため、米事業の評価額は140億ドルと提示され買い手優位の交渉が進む一方、親会社の収益関与も残る見通しだ。
オラクルやシルバーレイクなど候補が取り沙汰されるなか、アルゴリズム使用料や利益配分の設計次第では、低評価の妥当性が再検証される可能性があります。中国政府の対応も不確実性要因です。

薬品・トラック・家具に高関税—10月1日開始方針

生産回帰を狙い、ブランド・特許医薬品100%、大型トラック25%、木製キャビネット等50%、布張り家具30%の追加関税を政権が発表した。
EU・日本は医薬品関税について上限15%とする取極が確認されつつあり、適用範囲の具体化が焦点です。価格転嫁や供給網への影響、法的妥当性の検証が今後の材料になります。

米経済指標は堅調—GDP改定3.8%、耐久財+2.9%、新規失業申請21.8万件

個人消費の底堅さを背景に2025年Q2実質GDPは年率+3.8%へ上方改定され、8月の耐久財受注は前月比+2.9%、新規失業保険申請は21.8万件に改善した。
一方、8月PCE総合は前年比+2.7%と伸びがやや加速しており、関税発動の物価波及と金融政策の調整ペースが注視点です。

▽ FAQ

Q. 10月1日閉鎖はどれほど現実的?
A. カルシ市場で確率71%(9月23日)。年内いずれかの閉鎖確率も71%と過去最高水準です。数日規模の想定が中央値です。

Q. 最高裁の外援凍結容認は恒久判断?
A. 緊急審理での暫定措置です。9月26日時点で下級審差止めを停止し、約49~50億ドルが未執行となる公算が高まりました。

Q. SEC・CFTC協調で暗号資産はどう変わる?
A. 9月29日の公開円卓で規制調和の具体論が議論されます。取引所・決済・予測市場まで横断議題が示されています。

Q. 薬品への100%関税は日本も対象?
A. 日欧は医薬品関税上限15%の取極と報じられ、適用の線引きが焦点です。家具・トラックには別建ての高関税が予定。

■ ニュース解説

閉鎖確率上昇と最高裁の外援凍結容認が同時進行したため、財政の執行リスクと通商のコスト上振れが重なる一方で、GDPや耐久財は堅調さを示し、景気は当面底堅い。
投資家の視点:①政府閉鎖・関税の感応度が高いセクター(公共請負、医薬品流通、家具・住宅関連、トラック輸入)を短期モニター、②ドル金利・クレジットスプレッドの拡がりに備えデュレーションと信用リスクの配分を中立~やや防御に調整、③暗号資産・予測市場など規制協調の制度面ヘッドラインに対し、事実ベースでエクスポージャー管理。

※本稿は投資助言ではありません。

(参考:Kalshi News,SEC