▽ 要約
政府:政府閉鎖が接近、統計停止と行政機能の縮退が懸念。
経済:失業率4.3%で弱含み、ドル安・金は最高値圏。
暗号資産:強気発言とETF資金でBTCは11万ドル台。
規制:SEC新体制とウィスコンシン州AB471で明確化が進展。
「閉鎖になったら市場やデータはどうなるのか」。結論は、短期なら影響は限定的だが、長期化すれば統計の空白と政策判断の不確実性が増し、金やドル、暗号資産への資金フローが偏る可能性が高い。本稿は米政府閉鎖リスクと暗号資産2025を一次情報で整理し、投資家が押さえるべき指標と規制の要点を簡潔に解説する。
政府閉鎖の瀬戸際:何が止まり、いつ再開するか
統計停止と一時帰休が広範に及ぶため、FOMC直前まで「政策の羅針盤」が欠落しうる。
トランプ大統領は9月下旬に「閉鎖の可能性が高い」と言及し、ヴァンス副大統領も「閉鎖に向かっている」と発言した。雇用統計・週次新規失業保険、建設支出、貿易収支、CPIなどの公表が停止され、FAAでは約1.1万人の一時帰休が想定される。一方で軍や管制官などの必須業務は継続される。過去の例では短期の閉鎖は市場インパクトが限定的だが、長期化は成長率を押し下げる。ブルームバーグ・エコノミクスは1カ月で当該四半期のGDP成長率を0.4pt低下と推計した。
市場の初期反応:ドル・金・国債
統計停止で「データ依存」の手掛かりが減るため、ドルは軟化しやすく、金には資金が流入しやすい。
9月末の外為市場でドル/円は148円前後まで下落する場面があり、金は$3,800/oz超の最高値圏に上昇した。米金先物も過去最高域での推移が続き、リスク回避と利下げ観測が価格を支えた。
統計の空白とFOMC運営
データ欠如のため、10月28–29日のFOMC判断は「事前公表値なし」での運営となり不確実性が増す。
9月雇用統計や10月CPIが止まると、FRBはサーベイや市場インプライドに依拠せざるを得ず、ガイダンスの明瞭性が低下する。
米経済の足元:雇用悪化と景気減速サイン
雇用の減速で利下げ前倒しの思惑が強まったため、金利・為替・商品に波及している。
最新の雇用統計で失業率は4.3%へ上昇し、雇用者数の伸びも減速した。市場は年内の複数回利下げを織り込み、対外ドリブンのドル安と金価格の急伸が生じた。国内(金小売)は9/29に1g=20,018円、10/1に20,324円と史上初の2万円台に乗せ、前年の水準(1.2〜1.5万円台)から大幅に切り上がっている。
暗号資産:政権・家族・企業の強気と価格動向
ETF資金流入と強気言説が重なったため、BTCは11万ドル台の高値圏を維持した。
エリック・トランプ氏は「ビットコインは100万ドルに」と発言し、自身が共同創業した「American Bitcoin」の上場も話題化。バロン・トランプ氏のWLFI関連報道など、トランプ一家周辺からクリプト志向が相次ぐ。一方でトークン評価額はロック条件や流動性に左右され、額面の資産換算には注意が必要だ。7〜8月にはBTCが$112k〜$124kで過去高値を更新し、9月末も$114k前後で推移した。
規制の転換:SEC新体制と州法AB471のインパクト
トップの交代で「原則ベースの明確化」が進む一方、州は利用権の明文化を急ぐ。
2025年4月にポール・アトキンス氏が第34代SEC議長に就任し、デジタル資産の明確な枠組み作りを最優先と表明。SECはCoinbase訴訟の取り下げや、PoWマイニング・一部ステーブルコインに関するスタッフ声明の公表など、争点の切り分けを進めた。州レベルではウィスコンシン州の「AB471(ビットコイン権利法案)」が提出され、ノード運用・マイニング・ステーキング・暗号資産同士の交換の多くを送金業ライセンスの対象外とし、自己保管(セルフカストディ)権を明記した。
▽ FAQ
Q. 政府閉鎖が市場に与える短期影響は?
A. 過去は限定的でしたが、2025年は統計停止が重く、10/28–29のFOMCまで不透明感が続く懸念があります(雇用・物価の公表停止)。
Q. 失業率4.3%は何を示す?
A. 2025年夏の労働需給の緩みを示し、年内追加利下げ観測を強めました。ドル安と金高が同時進行しています(9月下旬時点)。
Q. 金の国内価格「1g=2万円台」は持続する?
A. 為替と金利見通し次第です。円安と利下げ観測が続けば高止まり、逆なら反落余地もあります(田中貴金属の小売価格基準)。
Q. BTCはなぜ11万ドル台を維持?
A. ETF資金、機関投資家の需要、規制の明確化期待が支えです。8月に$124kの最高値更新後も高値圏で推移しています。
Q. AB471の事業者メリットは?
A. ノード運用・開発・PoW/PoSの一部が送金業ライセンス不要となり、州内でのセルフカストディ権が明文化される点です。
■ ニュース解説
政府閉鎖が目前となり統計公表が止まる一方で金は最高値圏、BTCも高値を維持しているため、金融政策と市場期待のねじれが強まっている。
投資家の視点:FOMC(10/28–29)までの期間は「データ欠如リスク」「政策ヘッドライン」「流動性薄の時間帯」の3点を重視し、①金利・為替のボラ抑制(エクスポージャー適正化)、②金・ドル・BTCの相関変化の点検、③規制・州法のイベントリスク管理(SEC指針・州議会審議の進捗確認)を基本に据えるのが無難です。
※本稿は投資助言ではありません。
(参考:SEC,Federal Reserve,田中貴金属工業)