▽ 要約
ビットコイン押収:米政府が12.7万BTCを押収し過去最大規模に
関税・対中:100%関税の前倒し示唆、ただし「持続不可能」発言も
市場:NYダウ反発、地銀決算を受け信用不安が一服
ETF:米ETF流入が年初来1兆ドル超、暗号資産ETFも寄与
米司法省が12.7万BTC押収を公表し、ホワイトハウスは対中100%関税の「前倒し」に言及しつつ「持続不可能」との認識も示した。これらの政策・法執行の同時進行は、米中対立と暗号資産の制度化が同じ土俵で進む現状を映す。投資家にとっては、政策ヘッドラインでボラが増す一方、ETF資金流入の継続が底流を支えるという構図だ。
米政府、12.7万BTC押収の衝撃
強制労働型「豚の屠殺」詐欺への一斉措置が発動されたため、約12万7,271BTC(約150億ドル)が米政府管理下となり、法執行の規模と市場インパクトが同時に可視化された。
米司法省は10月14日(米東部)に、カンボジア拠点のプリンス・グループを率いるChen Zhi(ヴィンセント)を詐欺・マネロン共謀で起訴、関連ビットコインの大規模没収に踏み切った。米財務省は同時に146件の制裁指定と、資金洗浄のハブとされたHuione Groupの311指定を公表し、米金融システムから遮断した。これらは被害者救済と取引網分断を狙う過去最大級の協調措置だ。
押収規模は米史上最大の暗号資産没収と位置づけられ、調査各社の追跡でも約127,271BTCが政府管理下にあると整理される。新たな売却懸念は浮上するが、司法省案件の多くは長期係争で動きが遅いのが通例だ。
政権の「売らない」方針との整合
トランプ政権は2025年3月に「戦略的ビットコイン準備」を創設し売却抑制を打ち出したため、今回の押収資産の即時処分観測は後退しやすい。一方で最新の会見でも「America will never sell its Bitcoin」との趣旨が再強調された。
著名クリエイター発の参入圧力(MrBeast)
巨大フォロワー基盤に金融機能を重ねる動きが強まったため、MrBeastは「MrBeast Financial」を商標出願し、暗号資産交換・決済等をカバーする計画が示唆された。
波及
ETFと流動性:スポットBTC ETFが制度的需給を下支えし、単一銘柄ではIBITがAUM 1,000億ドル目前との観測も出ている。分散効果と一部集中の両義性に注意。
対中100%関税「前倒し」示唆と緊張緩和の同居
トランプ大統領が100%関税の前倒しに言及したため警戒は残ったが、同時に「水準は持続不可能」と発言し、習主席との会談継続にも触れたことで市場の極端な不安は後退した。
ホワイトハウスのハセット経済顧問は「貿易戦争ではない」と語り、年内3回の利下げが「良いスタート」との見解を示した。金利低下期待と対中対話のシグナルは、株・金利・為替・暗号資産の相関に即時反映されやすい。
株式・金利:地銀決算でダウ反発
米地銀の堅調決算を受け信用不安が一服したため、主要3指数は週次で上昇し、金利とドルも小反発した。市場は前日の地銀与信懸念を消化し、テックと金融の買い直しが入った。
ETFマネーは加速基調
ETFへの年初来資金流入が1兆ドル超に達したため、パッシブ資金の力学が相場の変動を増幅しうる。月間ペースは例年比約3.5倍、通年は1.25兆ドル到達見込みとの指摘。
AIと安全保障:LA山火事の捜査進展
パリセーズ火災の容疑者が生成AIを用いた示唆が出たため、司法はAIリスクを証拠論の射程に入れつつある。逮捕・起訴とともに、ChatGPTへの質問・生成画像が証拠に言及された。
▽ FAQ
Q. 米政府は何BTCを押収?
A. 127,271BTC(約150億ドル)を2025年10月14日に押収・管理下に置いた。
Q. 100%関税のスケジュールは?
A. 11月1日開始方針だが前倒し可能性に言及、同時に「持続不可能」とも発言した。
Q. ハセット顧問は何を述べた?
A. 「貿易戦争ではない」とし、3回の利下げが「良いスタート」と言及した。
Q. ETFマネーはどの程度流入?
A. 年初来1兆ドル超、月間ペース約3.5倍、通年1.25兆ドル観測。
Q. MrBeast Financialの中身は?
A. 暗号資産交換・決済やモバイルバンキング等を含む出願が10月13日に提出。
■ ニュース解説
法執行が過去最大規模で進んだため暗号資産の不正資金は可視化され、一方で対中100%関税は前倒し可能性と「持続不可能」発言が併存し、市場は緊張と緩和を同時に織り込んだ。
投資家の視点:
- ヘッドライン・ベータ:政策見出しでボラが跳ねる局面は、エクスポージャー管理(現物・先物・オプションのデルタ調整)を優先。
- フロー・ファンダ:ETF資金(株式/金/BTC)の持続性は短期の逆風を逓減しうる一方、集中化リスクも内包。ルール型の損切り・縮小・再拡大を明文化。
- ガバナンス・規制:制裁・起訴の波及は取引先・チェーン上資産へ伝播。取引相手リスク(KYT/KYC)とカストディ分散を徹底。
※本稿は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。
(参考:U.S. DOJ,U.S. Treasury(OFAC/FinCEN))