
【要約】
・Hut 8とトランプ家族が合弁で新企業「American Bitcoin」を創設し、ビットコイン(BTC)マイニング事業を拡大へ
・米国財務省が2兆ドル規模の「BTC債券」を通じ、国債の一部をビットコイン購入に充当する政策フレームワークが提示
・025年第1四半期のビットコイン市場は大幅下落となり、約10年ぶりのワーストパフォーマンスを記録
・SEC(米国証券取引委員会)が主要暗号資産企業への訴訟を撤回し、規制明確化に向けた複数のラウンドテーブル会合を開催予定
・トランプ関連企業と暗号資産取引所の提携によるETF構想など、ビットコイン市場の将来に向けた動きが活発化
American Bitcoin誕生:Hut 8とトランプファミリーの提携
2025年4月、カナダ拠点のビットコインマイニング企業Hut 8と、米国前大統領ドナルド・トランプ氏の家族投資グループがタッグを組み、新会社「American Bitcoin Corp」を立ち上げました。出資にはトランプ氏の息子であるエリック・トランプ氏らが参加しており、Hut 8のAsher Genoot最高経営責任者(CEO)は「長期的には2社体制で上場を目指し、ビットコイン採掘と高性能データセンター事業を分野別に展開したい」との方針を示しています。
Hut 8は保有するほぼ全てのマイニング設備を新会社に移管し、American Bitcoinがビットコイン採掘の専門企業として成長を図る形です。一方、Hut 8自体はデータセンターとエネルギーインフラを拡充し、人工知能(AI)領域など付加価値の高い分野を支える基盤提供に力を注ぐとされます。エリック・トランプ氏は「我々は政府と利害関係がない。ホワイトハウス勤務でもなく、純粋に民間の立場での投資だ」と強調し、長年培った金融リバティ関連事業との相乗効果を期待していると述べました。
さらにAmerican Bitcoinは、中国系マイニング機器メーカーのビットメイン(Bitmain)と提携し、最新鋭のマシンを調達してハッシュレート(採掘能力)を大幅に引き上げる計画です。これらの戦略を通じて、北米最大級のビットコイン採掘企業を目指す意向がうかがえます。
政府の「BTC債券」構想:国債を通じてビットコイン保有拡大
米国のBTC政策研究所が公開した政策フレームワークによれば、米国財務省は2兆ドル規模の特別国債「BTC債券」を発行し、そのうち10%にあたる2000億ドルをビットコイン購入に充当する計画を検討しているとのことです。
この“BTC増強型国債”は、90%を従来の財政用途に、残る10%をBTC買い付けに充てる仕組みになります。投資家には低金利(年利1%程度)の代わりに、満期時にビットコイン価格の上昇分の一部を分配するという、債券とBTCのハイブリッド型金融商品として提案されています。
さらに、一定の価格増加分を政府と投資家で配分する形が採用されるため、米国政府はビットコイン価値が大幅に伸びた際に追加の利益を得られる可能性があります。仮にビットコイン価格が横ばいもしくは低調でも、従来の国債より低い金利負担によって支出を抑えられると試算されており、財政リスクとリターンを両立する新たな手段として注目されています。
この提案は、2025年3月にドナルド・トランプ前大統領が署名した「ビットコインを“デジタルゴールド”と位置付ける」行政命令を下敷きにしているとされ、長期的な国家資産としてビットコインを保有する戦略が背景にあるとみられます。予想シナリオでは、ビットコイン価格の上昇が進めば数兆ドル規模の国債を相殺する財政効果が得られる可能性が示唆されています。
2025年第1四半期、ビットコイン下落の背景
2025年初頭、ビットコインは一時史上最高値の10万9590ドルを記録しつつも、その後の値動きは急落に転じました。四半期ベースでは約10年ぶりのワーストパフォーマンスとなり、一時は7万7041ドル付近まで下落しています。高値からの下げ幅が29%に達したことで投資家心理が急速に冷え込み、多くの市場参加者がポジションの縮小に動きました。
しかしながら、ビットコインの時価総額支配率(ドミナンス)は依然として60%を超えており、アルトコインからの資金流入が相次いでいる点は注目に値します。イーサリアムやソラナなど主要アルトコインの下落率が35~50%に達していることから、資金の逃避先として相対的にリスクの低いビットコインに回帰する構図が浮かび上がっています。
また、米国経済の先行き不透明感もビットコイン市場に影響を及ぼしています。インフレ率が想定よりも高止まりし、貿易政策や関税をめぐる不確実性が大きくなっているため、実体経済の減速やリセッション観測が広がっているのが現状です。特に3月以降は企業や消費者が支出を見合わせる傾向が見られ、相場のモメンタムを押し下げる要因となっています。
規制の転機?SECの対応と今後の展望
こうした市場の混乱に対し、米国証券取引委員会(SEC)は暗号資産企業への規制方針を軟化させつつあります。2024年まで強硬姿勢が続いていたSECは、最近になってKrakenやConsensys、Cumberland DRWといった大手事業者への訴訟を取り下げ、協調的な解決策を模索する姿勢へ転換しました。
今後、SECは2025年4月から6月にかけて4回のラウンドテーブル会合を開催し、暗号資産取引のルール整備やデジタル資産のカストディ(保管)、トークン化および分散型金融(DeFi)の可能性などをテーマに議論を進める予定です。こうした公開討論の場が設けられることにより、業界と規制当局の相互理解が深まり、安定した法的基盤の確立が期待されています。
ビットコイン市場回復への期待要因
まだ不透明な要素は多いものの、以下の点がビットコイン市場回復への後押しとなる可能性があります。
- トランプ関連グループのETF構想
トランプ・メディア&テクノロジー・グループが暗号資産取引所Crypto.comと連携し、ビットコインETFなどの金融商品を展開するプランを明かしました。これが実現すれば、従来よりも広範な投資家がビットコインへアクセスしやすくなると期待されています。 - マイニング業界の大規模投資
Hut 8とAmerican Bitcoinの合弁が示すように、ビットコイン採掘産業には引き続き大きな資金が投下されています。これはハッシュレートの拡大を通じてネットワークセキュリティを強化し、ビットコインの基礎的な価値を支える重要な要因となります。 - 規制の明確化による機関投資家の参入
SECの方針転換や議会での立法化が進めば、大型ファンドや保険会社、年金基金などの機関投資家が安心してビットコイン市場に参加できるようになります。長期的な資金流入が増加すれば、価格の安定性と信頼度が高まりやすいでしょう。 - 米国債務問題への新たなアプローチ
「BTC債券」案が現実味を帯びれば、ビットコインは国家レベルの資産として正式に位置づけられる可能性があります。これは市場参加者にとって大きな安心材料であり、ビットコインがデジタルゴールドとしての存在感をさらに強める契機となるかもしれません。
総じて、2025年に入ってからのビットコイン市場は歴史的な価格乱高下が続いていますが、大手マイニング企業やトランプ家族などの投資参入、政府による政策的なビットコイン活用案、規制当局の姿勢変化といった動きが重なり、今後の市況にポジティブな影響をもたらす余地は十分にあります。投資家にとっては依然リスクが高い状況であるものの、長期的にはこのようなファンダメンタルズの改善がビットコイン相場の回復を後押しすると考えられます。