【要約】
・トランプ次子エリック・トランプがMemeコイン「TRUMP」への長期保有計画を表明
・米国議会でデジタル資産市場構造法案《CLARITY Act》の審議が進行予定
・トランプは米連邦準備制度理事会(FRB)の大幅利下げを主張
・トランプメディアグループが最大120億ドル分の新証券を登録し、ビットコイン購入を検討
エリック・トランプの「TRUMP」コイン保有宣言
米前大統領トランプ(Trump)の次子であるエリック・トランプ氏は、Memeコインである「TRUMP」とWLFIと新たな協力関係を結び、同トークンを長期的に金庫に保持する計画を発表しました。発表直後、TRUMPの価格は一時6.4%上昇したものの、まもなく値動きが落ち着き、上昇幅は限定的でした。暗号資産コミュニティ内では「彼の名前をもってしても十分な価格押し上げ効果を発揮できなかった」との指摘があり、エリック・トランプ氏の“価格牽引力”には疑問の声が挙がっています。
現在のCoinMarketCapデータによれば、TRUMPの時価総額は約20.5億ドルで、過去7日間の下落率は3.2%となっています。市場ではトランプファミリーの発言力を期待する声は多いものの、実際には目立った価格上昇にはつながらないケースも見られるため、短期的なトレードにはリスクがあるともいわれています。
米国議会、暗号資産市場構造法案《CLARITY Act》を審議へ
暗号資産市場に大きな影響を与えると見られる法案として、米国議会下院で《CLARITY Act》が取り扱われる予定です。現地時間6月10日午前10時(日本時間同日22時)より、この法案の審議・修正プロセスが開始される見通しです。先だって、八つの暗号資産政策関連組織が合同声明を発表し、《ブロックチェーン規制の確実性法案(BRCA)》もあわせて導入するよう要請しています。
しかし業界内には、この法案に対する賛否が分かれています。特に暗号資産ネイティブ企業にとっては、法案成立直後から嘉信理財(Charles Schwab)などの米証券取引委員会(SEC)登録企業がデジタル商品サービスを開始できる一方、暗号資産業者には商品先物取引委員会(CFTC)での複雑な登録手続きが必要となり、競争条件の不均衡が生まれるのではないかという懸念が指摘されています。
民主党が「トランプ暗号資産関連不当行為」を調査
一方で、米国下院金融サービス委員会の民主党議員らは同じ日に少数党(民主党)としての聴聞会を朝9時から開催すると発表しました。今回の焦点はトランプ氏の「暗号資産関連不当行為」と《CLARITY Act》のリスク評価です。さらに「トランプの暗号資産を阻止する法案(H.R.3573)」の国家安全保障上の影響と投資家保護問題も取り上げられる見込みで、前CFTC議長のティモシー・マサッド氏ら専門家が証人として出席予定です。
民主党側は、「この法案が成立すれば、トランプ周辺の暗号資産投資やメディアグループの動向がより活発化する可能性がある一方、規制の不備を突いた違法行為が増加する恐れもある」として、その影響を詳細に検証する姿勢を示しています。
トランプ氏の利下げ要求とFRBへの批判
暗号資産市場で注目されるのは規制動向だけではありません。トランプ氏本人はSNS上で「欧州はすでに10回利下げを実施している。FRBも1ポイント下げるべきだ」と強く主張しています。トランプ氏はこれまでもFRBの金融政策に対して度重なる批判をしており、今回の発言もその流れを受けたものです。
金利の引き下げは短期的には景気刺激策になる可能性があるものの、インフレ動向や為替への影響といった多角的な検証が必要です。暗号資産に関しては、金融緩和が進めばリスク資産への資金流入が期待できる半面、規制強化が伴わない場合には市況が不安定化するリスクもあるため、慎重な見解が多いのが現状です。
トランプメディアグループのS-3登録とビットコイン購入戦略
さらに話題となっているのが、トランプメディア&テクノロジーグループ(DJT)が提出した最新のS-3申請です。暗号通貨インフルエンサー@btcNLNicoによれば、次のようなポイントが注目されています。
- ビットコイン金庫戦略の正式採用
- 最大120億ドル相当の新規証券登録
- 以前にプライベートラウンドで調達した約24.4億ドルに加えての追加資金枠
- S-3申請書でビットコインに言及した回数は362回で、過去の同種書類より大幅に増加
もし、これらの新規証券発行がすべて認可・実行されると、現在のビットコイン相場を前提に理論上は約14万BTCの購入が可能になるとされています。ただし、これらの計画は米証券取引委員会(SEC)のForm EFFECT承認が得られた場合にのみ実効性を持つ点に留意が必要です。
ニュースの解説
今回の一連の動きからは、トランプ(Trump)一族や関連企業が暗号資産分野でより大きな存在感を示そうとしている姿勢がうかがえます。エリック・トランプ氏が取り組むMemeコイン「TRUMP」や、トランプメディア&テクノロジーグループのS-3提出による大規模なビットコイン購入計画は、いずれも“トランプブランド”を活用した戦略的な展開と考えられます。
一方で、米議会ではデジタル資産市場構造法案《CLARITY Act》や「トランプの暗号資産を阻止する法案」などが同日に審議され、民主党によるトランプ氏の過去の暗号資産関連行為への追及も予定されています。規制環境がどのように変化するかはまだ不透明であり、TRUMPコインやトランプメディアによる資金調達の進捗も、法案の内容次第で大きく変わり得ます。
さらに、トランプ氏自身が米連邦準備制度理事会(FRB)へ100ベーシスポイント(1%)の利下げを求める発言を行っている点も見逃せません。金融政策が変化すれば、暗号資産に対する投資マインドにも影響が及ぶでしょう。今後の展開を左右する重要な局面が続く中、投資家は最新の規制動向と金融政策を注視しつつ、冷静なリスク管理を行う必要があります。