テザーが24時間で20億USDT発行の真相

▽ 要約

ミント概要:24時間で10億×2のUSDTを新規発行
在庫補充:今回は「承認済み・未投入」で即流通せず
流動性:主要取引所へ大量移動、時価総額は過去最高圏
規制動向:米GENIUS法で1:1裏付け等の要件明確化

テザーが24時間で20億USDT発行という異例の規模が観測されたが、同社の説明は「在庫補充」であり即時流通ではない。結論として、この発行は近い将来の需要に備えた流動性確保の一環で、準備金・規制対応の進展と整合的だ。この記事では「テザー 20億USDT 発行」の事実関係、技術的内訳、準備金、規制、相場・資金フローまでを一次情報で解説する。

発行の事実と“在庫補充”の意味

今回の2件は在庫補充のため承認済みだが未投入とされ、将来の発行リクエストやチェーンスワップに備えた積み増しであった。
8月28日(UTC14:26/北京22:26)にイーサリアムで10億USDTのミントが記録され、前日27日にも同規模のミントがあり24時間で計20億USDTに到達した。テザーのパオロ・アルドイーノCEOは恒例の「authorized but not issued(在庫補充)」である旨をXで示し、即時流通ではない点を強調している。

ブロックチェーン内訳と時系列(ETH中心/TRONは流通の主役)

28日と27日のミントはいずれもイーサリアム上で観測され、24時間合計で20億USDTとなった。一方、流通面ではトロンの比重が高く、2025年夏時点でトロンがわずかに先行し、両チェーンでUSDT供給の大半を占める構図が続く。
Whale Alertのトランザクションおよび複数の速報系メディアが、連日の10億USDTミントを時刻付きで確認している。市場の受け止めは「ドライパウダーの積み上がり」で、リクエスト発生時に即応可能な在庫という理解だ。

市場への影響—価格・ドミナンス・取引所フロー

価格ペッグのUSDT自体は動かないため即時の価格効果は限定的だが、供給増は流動性期待を高め、主要銘柄は堅調に推移する一方で需給の偏りには注意が必要となった。
足元ではBTCが11万ドル台、ETHは4600ドル近辺、SOLは200ドル前後で推移する場面が確認された。ステーブル市場ではUSDTのシェアが約6割前後と依然最大である。

取引所への資金移動(Binance観測)

ミント直後に「10億USDTがBinanceへ移動」との検知があり、その後24時間で7.77億USDTの純流入(入金超過)データが報告された。
これらは在庫USDTの一部が取引所内の現物・先物取引や担保に回る準備である可能性を示し、実需化の手前段階での流動性積み上がりと読める。

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準備金と透明性—Q2 2025アテステーション

2025年Q2のアテステーションでは資産1625.7億ドルに対し負債1571.1億ドル、超過準備は54.7億ドル。構成の中核は米短期国債で約1270億ドル、ほか現金同等物やレポなど流動資産が中心で、ビットコインや金も一定割合が記載された。
Q2の純利益は49億ドル規模で、金利環境下での利息収入と評価益が収益を押し上げている。

未監査論点と改善の歩み

完全な財務監査(Audit)は未実施だが、四半期ごとの第三者アテステーションは継続され、商業手形の解消や米国債比率の拡大など準備金の質改善が進んだ。一方、批判的な論者は依然「完全監査の開示」を求めており、透明性強化は未完の課題である。

規制・コンプライアンス—米GENIUS法と凍結対応

2025年7月に米連邦レベルのステーブルコイン法「GENIUS法」が成立し、1:1裏付け、償還、監督・報告の要件が制度化された。一方、テザーは法執行機関と連携し、マネロン・制裁回避対策として不審アドレスの凍結を実施している。
2025年6月にはトロン上で約1230万USDTの凍結事例が報告され、3月には米秘密サービスの要請で2300万ドル相当の不正資金凍結に協力するなど執行対応は強化されている。

オンチェーン運用への含意

凍結可能性は検閲リスクとして議論を呼ぶが、法準拠の要求は強まりつつあり、民間ステーブルは規制の“内側”で透明性・即応性を高める方向に収斂している。テザーは同日付でRGB(Bitcoin系プロトコル)への展開も発表し、対応チェーンの最適化と分散を進めている。

過去事例と学術研究の評価

過去にも10億~20億USDT級のミントが複数回観測され、強気局面での流動性準備として機能してきた。他方、2017年相場を巡ってはテザー発行と価格上昇の連動を指摘する研究(Griffin & Shams等)があり、因果関係を巡る議論は現在も続く。
近年は準備金開示の改善と収益力の向上を背景に、ミント=即ち市場操作という短絡的解釈は後退し、需給に応じた在庫補充として受け止められる傾向が強まっている。

▽ FAQ

Q. 今回の「在庫補充」は何を意味する?
A. 2025年8月27・28日に各10億USDTを承認。未投入の在庫で、次期の発行要求やチェーンスワップに充当される運用だ。

Q. チェーン別の配分は?
A. 直近2件はイーサリアムで記録。流通はトロンとイーサリアムが大勢で、2025年夏はトロンがわずかに優勢との統計が多い。

Q. 準備金と超過担保は整合している?
A. Q2 2025時点で資産1625.7億ドル、負債1571.1億ドル、超過54.7億ドル。米短期国債約1270億ドルの構成が主軸だ。

Q. 規制面の“変化点”は?
A. 2025年7月に米GENIUS法が成立し、1:1裏付け・監督・報告などの基準が整備。適合しない発行体は米国内で制約が強まる。

Q. 取引所フローと相場の反応は?
A. 発行後にBinanceへ10億USDT移動の検知、24時間純流入7.77億USDTのデータ。BTCは11.3万ドル前後、ETHは4600ドル近辺で推移。

■ ニュース解説

連日の10億USDTミントで24時間合計20億となったため流動性期待が高まり、在庫補充という運用方針とQ2の超過準備・米新法成立の背景が整合し、市場では取引所流入の活発化と主要銘柄の底堅さが観測された。
投資家の視点:在庫補充は即買い圧に直結しない一方、実需発生時の供給即応性を示す。短期は取引所の入出金・建玉・資金調達率、ステーブルドミナンスの変化を監視し、中期は準備金開示と米GENIUS法対応の進捗をチェックしたい。

※本稿は投資助言ではありません。

(参考:Tether,BDO,Whale Alert