▽ 要約
テスラ 11,509 BTCを保有し、公正価値は12.35億ドル
2025年Q2はデジタル資産益2.84億ドルが純利益を押上げ
2022年Q2に75%を売却、約9.36億ドルを現金化
SpaceXは2021–22年取得後に売却報道、X社は未保有
イーロン・マスク関連企業のビットコイン保有はどう変化したのか。結論は、テスラは「11,509 BTC」を維持し公正価値会計で評価益を計上、スペースXは売却報道で現状ゼロ、X社は未保有が妥当だ。テスラ ビットコイン 保有量 2025の全体像を一次資料で解説する。
テスラの保有推移と現在地(2025年Q2)
2021年に15億ドルで取得し一部売却を経て、2024年に公正価値会計を早期適用したため、2025年は評価益が業績に反映される構図となった。
テスラは2021年初頭に約15億ドルでビットコインを取得、その後2021年3月末までに約10%を売却した。決済手段としては2021年3月に米国で受入を開始したが、環境面の懸念から5月に停止している。
2021年は暗号資産相場の変動で減損処理を実施した一方、評価益は当時の会計上認識できず、簿価が時価に追随しない歪みがあった。
2022年Q2には保有の約75%を売却し、約9.36億ドルの現金を確保。マスク氏は中国ロックダウンの不確実性に備えた流動性確保と説明している。
2024年にはFASBの新基準を早期適用し公正価値評価に移行、2025年Q2(6月末)時点の保有は11,509 BTC、公正価値は約12.35億ドルで、同四半期のデジタル資産純益は約2.84億ドルとなった。
初期投資と決済受入・撤回(2021年)
2021年2月の取得後、3月にビットコイン決済を導入したが、環境負荷への懸念を受け約7週間で停止した。
取得はSEC提出書類で開示され、同年3月期には保有の一部を流動化して市場の実行性を確認した。決済受入の停止後も保有自体は継続し、会計上は無形資産として減損のみを認識する扱いだった。
2022年Q2の一括売却とその背景
サプライチェーン混乱と上海の都市封鎖で不確実性が高まったため、流動性を最大化する方針で保有の約75%を売却した。
この判断で現金同等物を厚くできた一方、結果論としてその後の価格回復局面の恩恵は限定的となった。以降は売買を行わず、残存分の約1万強BTCを維持している。
2024年以降の公正価値会計と2025年Q2の影響
新基準の適用により、四半期ごとに時価評価益・損がPLに反映されるため、2025年Q2はデジタル資産純益が11億7千万ドルの純利益を下支えした。
2025年6月末の保有は11,509 BTC、簿価386百万ドルに対し公正価値1,235百万ドルで、評価差額がその他収益に現れる構造となっている。
スペースXの保有と売却報道
2021年にマスク氏が保有を公言したため注目されたが、2023年の報道では2021〜2022年に計3.73億ドル相当を計上後、相場低迷期に評価損・売却が進み、現時点では保有ゼロとみられる。
スペースXは非上場で詳細開示が限られるが、一次報道と追随報道の整合から、少なくとも大半を処分した可能性が高い。
X(旧Twitter)のスタンス
2021年に当時のCFOが「検討」を認めたが、購入・保有の決定はなく、その後マスク氏の買収・社名変更を経ても企業としてビットコインを資産計上した事実は確認されていない。
マスク氏個人やサービス機能としての暗号資産活用示唆はあっても、財務資産としての保有は現状見当たらない。
▽ FAQ
Q. テスラは今いくらのビットコインを持つ?
A. 2025年6月末で11,509 BTC、公正価値は12.35億ドル(10‑Q開示)。
Q. 2022年に売った理由は何?
A. 上海ロックダウンの不確実性で流動性確保を優先、Q2に75%売却。
Q. 新会計基準はいつから?
A. FASB基準は2025年度から必須、テスラは2024年に早期適用した。
Q. スペースXの現状は?
A. 2021〜22年に3.73億ドル相当を計上後に売却報道、現時点で保有ゼロ観測。
Q. X(旧Twitter)は保有している?
A. 2021年に検討発言のみで、購入・保有の公式開示は現在まで無し。
■ ニュース解説
テスラは11,509 BTCを維持し会計変更で評価益を利益計上できる一方で、スペースXは2022年までに処分、X社は未保有であるため、マスク関連企業の「保有」は実質テスラ単独の構図だ。
投資家の視点:企業トレジャリーの暗号資産はボラティリティと会計影響が業績に波及するため、保有方針・開示頻度・会計処理(公正価値/減損)を総合的に確認したい。特にテスラはデジタル資産損益が四半期利益の変動要因となり得る。
※本稿は投資助言ではありません。
(参考:SEC)