▽ 要約
保有:2022・2023年に購入開示、評価は約25万ドル規模。
採掘:2024年5月にASIC3台導入、テキサスで稼働。
政策:反CBDC・税制見直しを推進、業界の支持拡大。
比較:連邦議員ではルミス氏と並ぶ少数派の積極保有。
米政治家の仮想通貨保有は利益相反か、それとも技術推進の証左か。テキサス州のテッド・クルーズ上院議員はテッド・クルーズ ビットコイン保有と3台の採掘機運用を公表し、反CBDCや規制明確化を唱える旗頭となった。本稿は購入履歴・採掘参入・政策・比較を一次情報で検証し、投資家に影響する実務的含意を解説する。
背景と動機
ビットコインを「自由と分散の象徴」と位置付ける保守思想と、テキサスのエネルギー優位を活かす産業戦略が重なったため、保有と採掘への踏み込みが進んだ。
テキサスの電源構成(風力・太陽光・天然ガス)と需要応答の親和性を訴え、議会では反CBDCを軸に中央集権的監視への警戒を強調してきた。
年表でみる主な行動(2021–2025)
インフラ法の暗号課税条項に反対を示し、連邦議会内の仮想通貨決済導入決議や反CBDC法案を相次ぎ提出したため、推進派の象徴的存在となった。
2021年に暗号課税条項へ抗議→2021年11月に議会内決済受入れ決議案→2025年3月反CBDC法案再提出→2025年4月にはIRSのDeFi課税規則を覆す議会決議成立を称賛。
ビットコイン購入の経緯
2022年1月25日に1.5万〜5万ドル相当を初購入し、2023年には5万〜10万ドルの追加取得を開示したため、簿価ベースで最大15万ドルに達した。
価格上昇を反映すると2025年8月時点の評価額は約25万ドル規模と推定されるが、市場価格に依存し変動が大きい。
マイニング参入(3台のASIC)
2024年5月末にテキサス州アイラン近郊でASIC3台を稼働開始とSNSで明かし、業界大手から歓迎の声が上がった。
採掘者が系統逼迫時に出力を落とす柔軟性を評価し、地域経済と送電網の安定に資するとの主張を繰り返している。
他の政治家・著名人との比較
現職連邦議員の中で暗号資産を自ら売買・保有する例は少数のため、クルーズ氏は積極派として際立つ。
上院ではシンシア・ルミス議員が10万〜25万ドル規模のBTC保有を公表しており、下院ではマイケル・コリンズ議員(ETH)やバリー・ムーア議員(BTC)の購入開示が続いた。
米連邦議員の保有・取引
2021年以降の現職での積極購入は限定的で、2022年のBTC購入(クルーズ)と2023–2024年のETH購入(コリンズ)、2024年のBTC購入(ムーア)が主な例となる。
一方で利益相反懸念から売却・開示強化やブラインド・トラスト化の動きもみられ、議会内の温度差は大きい。
州知事・市長レベル/著名人
コロラド州は税の暗号支払い受入枠を設け、フロリダ州はCBDCの州法上の排除を成立させたため、地方行政の実験が進んだ。
市長ではマイアミのスアレス氏やNYCのアダムス氏が給与の暗号換金を宣言し、企業ではテスラやマイクロストラテジーが大量保有で市場認知を押し上げた。
連邦政策とクルーズ氏の立場
政府はイノベーション促進とリスク抑制の両立を掲げる一方、SECは厳格姿勢を維持し、CFTCはBTC等を商品と位置付けるため、規制の綱引きが続いた。
2022年の大統領令後に各機関の報告が相次ぎ、2024年には現物ビットコインETFが承認されたが、課税・情報報告やブローカー定義を巡る論争は残る。
監督当局・課税・ETF
SECは「大半のトークンは有価証券」との立場で提訴・執行を続け、2024年1月に現物BTC ETFの上場を承認したため、機関投資の受け皿が整った。
IRSは2025年からForm 1099‑DAによる報告を段階導入し、ブローカー定義巡る規則には議会による見直し圧力も強い。
マイニングとエネルギー政策
連邦政府は2023年にエネルギー使用への段階的30%課税案(DAME)を示したが成立せず、州レベルの受容と抑制が混在した。
テキサスでは需要応答で出力調整できる「可変負荷」としての採掘を評価する声があり、系統安定化と環境負荷の丁寧な実証が求められる。
市場・政治への影響
個人の購入・採掘発表の価格影響は限定的だが、連邦レベルの推進派が増えるほど制度不確実性の低下に寄与しやすい。
2024年選挙サイクルでは暗号系スーパーPACが1.3億ドル超を投じ、政策争点化が進んだため、立法の方向性がセンチメントに与える影響は拡大している。
▽ FAQ
Q. クルーズ議員のビットコイン保有額は?
A. 2022年1月に1.5万〜5万ドル、2023年に5万〜10万ドルを開示し、2025年8月の時価は約25万ドル規模と推定される(価格次第)。
Q. 採掘機は何台・いつ導入?
A. 2024年5月末にASIC3台の稼働をSNSで公表。場所はテキサス州アイラン近郊で、業界首脳から歓迎コメントが出た。
Q. 反CBDCや課税ルールでは何をした?
A. 反CBDC法案を継続提出。2025年4月にIRSのDeFi課税規則を覆す議会決議成立を称賛し、報告義務の見直しを後押し。
Q. 他の連邦議員との比較は?
A. 上院ではルミス議員が10万〜25万ドル相当を公表。近年の積極購入はクルーズ氏、下院のコリンズ氏(ETH)とムーア氏(BTC)が代表例。
Q. 市場への直接影響は?
A. 個人の売買は時価総額に比べ小さく価格影響は限定的。2024年の現物ETF承認やマクロ環境が主要ドライバー。
■ ニュース解説
クルーズ氏がBTCを保有・採掘し反CBDCを掲げる事実は、州の産業振興と連邦規制の対立の文脈で理解でき、暗号系政治資金の増勢が制度設計への影響力を高めた。
制度明確化は機関資金の流入を促す一方で、情報報告やAMLのガードレール後退はリスクを増やすため、均衡設計が焦点となる。
投資家の視点:政策・規制ニュースは価格より流動性と参加主体に効きやすい。ETF承認・課税ルール・ブローカー定義・州電力政策をモニターし、銘柄・事業(採掘/電力/半導体)ごとにシナリオを分けてリスク管理を徹底したい。
※本稿は投資助言ではありません。