台湾CoinW事件:最大規模マネロン全貌

▽ 要約

キーパーソン 施啓仁ら14人が2025年8月22日に起訴
スキーム 現金→USDT→米ドル送金で断点を多重化
押収資産 USDT約64.7万枚と現金6,049万NT$を確認
規制強化 FSCがVASP検査・自律規範見直しを要請

台湾で暗号資産OTC網を装った大規模洗浄事件が摘発され、台湾CoinW マネーロンダリングの構図と被害が具体化した。施啓仁ら14人は2025年8月22日に起訴され、1,539人・12.75億NT$の被害、洗浄総額23億NT$が認定された。入金機を介した現金回収とUSDT・外貨送金の二重ルートが核で、FSCはVASP検査の強化に動いた。

事件の構図と資金フロー

入金機と実店舗フランチャイズを使い現金→USDT→外貨送金を分業したため、短期に23億NT$規模の洗浄が成立した。
グループは施啓仁を頂点に妻(林姓)と亞太商務総監の楊姓らが統括し、CoinW(幣贏)の看板と「幣想科技(BitShine)」名義で全国展開した。加盟者から数百万元の加盟料・保証金を徴収し、全台45店で入金機を運用、現金の回収と換金・海外送金を役割分担した。

店頭オペレーション

入金機で受けた現金を即座に外貨へ換え海外送金し、チェーン上では被害者にUSDTを指定コールドウォレットへ移させ再送金を重ねて断点を作った。
この過程で、店舗側は「全国唯一の金管会認可」と虚偽表示し、投資が合法・安全と誤信させた。

関与通貨と金額

押収資料から主にUSDT・BTC・TRXが用いられ、約64.7万USDT、BTC 0.0356、TRX約1,520、現金6,049万NT$、高級車2台などが差し押さえられた。

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摘発の経緯と規制・影響

2025年4月の一斉捜索で主要者を拘束し、8月22日に14人起訴と12.75億NT$没収請求が公表され、FSCはVASP検査の強化と自律規範見直しを促した。
刑事局は4月24日に45店を同時捜索して資産を差し押さえ、6月2日に押収内訳を公表、士林地検は8月22日に起訴・求刑(主犯25年)と没収請求を明示した。

制度面の要点

未登録の海外VASPは国内提供が禁止され、2024年11月30日施行の改正で登記未了の提供行為は最長2年の刑事責任と罰金対象となった。
台湾VASP同業公会はCoinWの未登録を警告し、利用回避を呼び掛けている。

CoinWの説明状況

CoinWは台湾市場で「登録会社設立や必要ライセンス申請、AML声明」など法令順守対応を進めると過去に述べたが、今回の摘発への謝罪・補償の具体的表明は確認できない。

国際比較(香港・中国本土)

香港海関は2025年7月22日に現金走私とステーブルコインを使う約11.5億HK$の洗浄事案で2人を逮捕し、ステーブルコイン連動の多重送金が共通のリスクとして浮上した。
北京でも2024年11月に暗号資産関連の洗浄網で8億元超の資金移転が摘発され、通信詐欺・ネット賭博と結び付く構図が確認された。

▽ FAQ

Q. 起訴の時期と人数は?
A. 2025年8月22日に士林地検が14人を起訴、主犯施啓仁に懲役25年を求刑した(没収請求12.75億NT$を併記)。

Q. 被害者数と被害額、洗浄規模は?
A. 被害者は1,539人、詐欺被害は12.75億NT$、洗浄総額は約23億NT$(2024年初〜2025年4月)。

Q. 押収資産と通貨の内訳は?
A. 約64.7万USDT、BTC 0.0356、TRX約1,520、現金6,049万NT$、高級車2台など。

Q. 店舗網と手口の特徴は?
A. 全台45店に入金機を置き、現金→USDT→米ドル海外送金でレイヤー化、さらにコールドウォレット移転で追跡断点を作った。

Q. 規制はどう変わる?
A. FSCはVASP登記制を導入、未登録提供に刑事責任を明確化し、業界自律規範の見直しと金融検査を進めている。

■ ニュース解説

士林地検が施啓仁ら14人を起訴しUSDT中心の洗浄手口が確定したので、未登録VASPの店頭網と虚偽認可宣伝が背景にある一方で、FSCは登記制と検査で規律を強化する流れが加速した。
投資家の視点:OTC店頭購入や第三者ウォレット送金を伴う“元本保証”勧誘は高リスクで、事業者の登記・登録有無(FSC・公会名簿)と送金先の真正性(自分名義口座・正規CEX)を都度検証すること。

※本稿は投資助言ではありません。

(参考:士林地検(台湾士林地方検察署),香港政府新聞公報(香港海関),金融監督管理委員会