12月12日:米利下げとステーブルコイン潮流

▽ 要約

市況:BTCは$90,000前後で攻防、ETFは+$224M。
政策:FRBは3.50%-3.75%へ利下げ、国庫券購入も。
規制:英FCAが2026年ルール整備へ、焦点はステーブルコイン。
地域:ADGMがUSDTを承認、ラ米は実需で拡大。

米国の利下げと規制整備の進展で、暗号資産は「投機」から「決済・資金管理」へ重心が移る局面に入った。

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2025-12-12の暗号資産市場は、米FRBの25bp利下げと、ステーブルコインを軸にした制度整備・地域拠点の再編が同時に進んだ。ETFフローや中東・ラ米の実需の兆しを押さえると、短期の値動きだけでは見えない構造変化が把握できる。

市況総括

BTCは$90,000〜$91,000の支持帯を意識しつつ、年末に向けた流動性の薄さが価格の振れを大きくしやすい。

BTC現物ETFは前日合計で+$224Mの純流入となり、最大の流入はBlackRockのIBIT(+$193M)だった。
一方で、オプション市場ではセンチメント低迷と流動性不足が指摘され、上値追いの勢いは限定的とみられている。

全体の時価総額は約$3.16Tとされ、週初から+2.5%程度の持ち直しが示唆された。
ただし24時間の清算では、ロング側の強制清算が約$376Mと相対的に大きく、レバレッジ調整の影響が残っている。

伝統市場では、パウエル議長の会見後に米株が反発し、S&P500が終値で最高値更新(+0.4%)とされた。
また、2025年の世界株価指数がS&P500を上回るとの指摘もあり、資金フローの再配分が話題になっている。

金融政策と規制(FRB・英国FCAなど)

米金融政策の転換点は、利下げそのものより「流動性供給の形」がどこまで広がるかにある。

米FRBは2025-12-10(現地)に25bp利下げを決定し、政策金利を3.50%〜3.75%へ引き下げた。
採決は9:3で、据え置きを主張する2票と、50bpを主張する1票が反対票となり、近年では珍しい分裂として注目された。

同会合を受け、国庫券(T-bill)購入の開始も伝えられ、初回の購入額は約$40B、開始は2025-12-12とされた。
市場が注目するのは、利下げ回数の見通し(2026年は1回程度との見方)と併せ、短期資金市場の安定化策が資産価格に与える影響だ。

規制面では、英国金融行為規制機構(FCA)が「法定通貨連動のステーブルコイン」を将来の重点監督対象の一つとし、デジタル資産ルールを2026年に確定させる方針が示された。
同時に、伝統資産のブロックチェーン移行(ファンドのトークン化等)を効率化策として位置づける点も、投資家には論点となる。

米国では、OCCが銀行による「デバンキング(去銀行化)」が違法となり得るとの警告を含む報告を公表した。
CFTCもCEO級の「イノベーション委員会」メンバーにGemini、Kraken、Crypto.comなどを挙げ、制度設計側に業界プレイヤーを取り込む姿勢が見える。

個別トピックでは、テキサス州が州政府による戦略的ビットコイン準備金の法案を可決し、知事に送付したと伝えられた。
また、米財務省による$12.5B規模の国債買い戻しや、Bank of Americaによるビットコイン担保融資の準備観測など、金融当局・大手行の動きが重なっている。

企業・プロジェクト動向(AI・RWA・インフラ)

資金調達とプロダクトは「情報・決済・証明」を中心に、次のユースケースを作る競争が続く。

暗号資産向けAI投研助手Surfは、Pantera Capital主導で$15Mを調達し、Coinbase VenturesやDCGなどが参加した。
40+のチェーン、10万+のKOL、200+の指標を統合し、調査を数分で構造化レポート化する構想は、B2BからAIエージェント向けAPIへ拡張し得る。

イーサリアムでは、Fusakaで有効化されたEIP-7825が相互運用(Interop)を後押しするとの見方が出た。
単一トランザクションのGas上限を約16.78Mに制限することで、ZK証明生成を並列化しやすくし、Optimistic Rollupの「7日待ち」を秒級へ圧縮する基盤になり得る。

中長期テーマでは、Archetypeが「2026年の7トレンド」として、アプリ特化チェーンの復権、予測市場(週次出来高$20B水準)、AIエージェントによるDeFi運用、短尺動画×マイクロペイメント等を挙げた。
RWAでは、トークン化資産総額が$18B超へ拡大(1年前は$3.7B)という伸びが示され、規制とインフラ整備が追い風とされる。

トークンの一次販売(いわゆる打新)では、熊市下でも複数案件が進行している。
例としてRainbowはCoinListで2025-12-12 02:00 JST開始(北京01:00)、価格$0.1、販売は供給の3%(3,000万枚)、最小$100とされ、他にもZama(2026-01-12〜15)などが並ぶが、条件差が大きく個別精査が必須だ。

メディア領域では、POPOLOGY®が「注意力を検証可能な資産」として扱う分散型モデルを提示した。
広告をトークンで購入し(1トークン=1,000回の有効視聴)、視聴者・創作者・ブランドに分配する設計は、Web3の収益分配実験として位置づけられる。

地域動向(中東・ラテンアメリカ)

制度と実需が同時に立ち上がる地域では、ステーブルコイン主導で「取引」から「決済・貯蓄」へ移りやすい。

中東ではアブダビが規制適合のハブとして存在感を強めた。
2025-12-08にADGMがUSDTを「受け入れられた法定通貨参照トークン(AFRT)」として認定し、Aptos、TON、Solana、Nearなど計9チェーン上での利用を制度面で後押しした。
翌2025-12-09にはCircleがADGMの金融サービス許可を得たとされ、Binanceも同地域で2026年から取引・清算保管・OTCを三法人で分離運営する計画が示された。

同地域のBitcoin MENA 2025(2025-12-08〜09、アブダビ)では、CZが「機関資本とマクロ要因によるスーパーサイクル」可能性に触れた。
Michael Saylorは「ビットコイン裏付け型デジタル銀行」を提起し、BTCを準備資産にデジタル信用を発行する構想を示したとされ、担保融資を掲げるAntalphaの戦略とも接続する。

ラテンアメリカでは、インフレ・送金・金融包摂の課題がステーブルコイン需要を押し上げる構図が整理された。
アルゼンチンの年インフレ率178%、無銀行人口1.22億人、年間送金$160B超などが背景にあり、2022-07〜2025-06の地域取引量は約$1.5T、年+42.5%とされる。

ブラジルはラ米最大市場で、2024年の暗号資産流入は約$318.8B(+109.9%)とされ、ステーブルコイン比率は59.8%(世界平均44.7%)という推計もある。
2025-12-04にはDeFi Technologies傘下ValourがBTC/ETH/XRP/SUIのETP上場承認を得たと報じられ、B3での暗号ETF・先物の層が厚くなっている。
またParadigmが2025-12-08にブラジルのCrownへ$13.5M投資し、レアル連動BRLV(申込累計3.6億レアル、評価額約$90M)の拡大を後押ししたとされる。

関連:JPYC総まとめ:国内初の円ステーブル最新動向

▽ FAQ

Q. FRBの利下げは何が重要?
A. 2025-12-10のFOMCは25bp利下げで3.50%-3.75%、国庫券購入は2025-12-12に初回約$40B。

Q. 英FCAのステーブルコイン方針は?
A. FCAのNikhil Rathi氏は法定通貨連動を重点監督にし、デジタル資産ルールを2026年に確定、英ポンド建ても推進。

Q. ADGMでUSDTはどう扱われた?
A. 2025-12-08にADGMがUSDTをAFRTとして承認し、AptosやSolanaなど計9チェーンでの利用を規制上明確化。

Q. BTC現物ETFのフローは?
A. BTC現物ETFは前日合計+$224M、BlackRockのIBITが+$193Mで最大とされ、需給の下支え材料になった。

■ ニュース解説

利下げと規制整備が同時進行すると、短期はボラティリティが上がる一方で、決済・資金管理としての実装が進みやすい。
そのため、価格だけでなく「どの地域で、どの許認可の下で、どの通貨が使われるか」が投資家の前提条件になる。

※本稿は一般的な情報提供を目的としており、特定銘柄・金融商品の売買を推奨するものではなく、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

(参考:PANews