Sora Venturesの10億ドルBTC財務ファンド

▽ 要約

アジア初:Sora Venturesが10億ドルのBTC財務ファンドを発表
パラグアイ:余剰水力で準備金化を巡る会合と会議開催へ
モウ氏:10万ドル以下は「一生に一度」の買い場と強調
普及:世界4%未満、潜在規模比で約3%の初期段階

企業・国家の「ビットコインを財務に組み込むべきか」という疑問に対し、アジアのSora Venturesが10億ドル規模の財務ファンドを立ち上げ、パラグアイは余剰水力を活用した戦略的準備金を議論し、Samson Mow氏は強気継続、普及率はなお低水準――本稿は「Sora Ventures 10億ドル ビットコイン財務ファンド」を軸に、最新動向を解説する。

Sora Venturesの10億ドルBTC財務ファンド

アジア初の大規模トレジャリー枠が示されたため、6カ月で10億ドル相当のBTC取得と初期2億ドルの確約が企業導入の加速点となる。
Sora Venturesは台北のBlockchain Weekで、アジア企業のBTC財務導入を分散の試行から「中央プールの機関資本」に束ねる構想を公表した。ファンドはアジアの財務企業群と相互運用し、地域横断での会計・カストディ・IRの運用知を共有する狙いがある。BTCが11万ドル前後(2025年9月)で推移する局面で、需給に効く規模感を持つ。さらに上場企業の保有は拡大し、米Strategy(旧MicroStrategy)は636,505 BTC、日本のMetaplanetは20,000 BTC、アジア勢ではCangoやBitFuFuも自己勘定のBTCを積み上げている。

目的と設計—アジア企業のBTC財務ハブ化

分散的導入では規模の経済が働きにくいため、共同で会計・監査・カストディ運用の標準化を進める枠組みが必要となった。
ファンドは参加企業の直接保有(オンバランス)と、準備ファンドによるプール(オフバランス)を併用する想定で、価格ボラティリティと流動性需要を平準化する。Soraは22–25年にMetaplanetの10億円配分支援、香港Moonの買収、タイDV8のパートナー買収、韓国BitPlanetの出資など、アジア各地で「ビットコイン財務モデル」の雛形を複製してきた。

市場インパクト—需給・フロー・価格感応度

ETF経由の需要が年初来で膨張したため、新規のトレジャリー需要は価格弾力を低下させうる。
米スポットBTC ETFは初年で3.6〜5.0兆円規模の純流入を記録し、2025年も累計流入が拡大している。企業・政府・ファンドの「長期保有」比率上昇はフリーフロート供給の圧縮を招き、調達のタイムスプレッドが価格形成に与える影響は大きい。Soraの10億ドルは、アジア企業の会計上の扱いを整備する副次効果も持つ。

実績—Metaplanet/Moon/DV8/BitPlanet

既存の案件実務を積み重ねてきたため、調達と運用の実装速度を高めやすい。
日本のMetaplanetは財務BTC保有を拡大、香港やタイ、韓国でも事業転換・連携を通じてBTC財務モデルを適用してきた。地域の大口では中国Cango(約4,500〜5,100 BTC)とBitFuFu(1,899 BTC)が2025年夏時点の保有を公表している。

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パラグアイの戦略的BTC準備金構想

余剰水力をBTCに転換して国富化する発想が支持を集める一方、IMF枠や価格変動の制約が政策判断を難しくしている。
パラグアイは世界有数の水力大国で、2025年上期の発電量はイタイプー単独で約3.7万GWhに達し、国内消費を大きく上回る。副大統領レベルの会合準備が報じられ、9月15–16日にはアスンシオンで「Accelerating Bitcoin」が開催予定で、Hive DigitalのAydin KilicやJan3のSamson Mowが登壇する。狙いは①外貨準備の多角化、②グアラニーのインフレヘッジ、③余剰電力の価値化だが、価格ボラティリティ、雇用創出の限定性、IMFのレジリエンス枠(約2.85億ドル)との整合などが課題となる。

利点—外貨準備の多角化と資源の内製化

輸出で外貨を得る従来モデルに対し、発電→マイニング→準備金化で国内資源を直接的に国富へ転換できる。
米ドル依存を和らげ、エネルギー自給とデジタル資産保有を結合することは、地政学リスク下の価値保全として一定の合理性がある。

懸念—ボラティリティ・雇用・対外制約

価格の振れ幅が準備金評価に直撃するため、会計方針とリスク限度の制度設計が前提となる。
マイニングは資本集約的で雇用誘発が相対的に小さく、IMFプログラムの下では国庫のリスク負担上限や透明性要件を満たす運用枠組みが要る。

Samson Mow氏の見立て—「10万ドル以下は一生に一度」

ETF承認と主権・企業財務の潮流を踏まえ、100Kは通過点という長期論が投資心理に影響を与えている。
Mow氏は2024年夏に「10万ドル以下で買える機会は一生に一度」と強調し、2025年には超過熱局面「オメガキャンドル」の到来可能性を示した。米国では2025年3月、ホワイトハウスが差押えBTCを原資に「戦略的ビットコイン準備」を創設し売却しない方針を示しており、制度面の正当性が積み上がっている。

普及率3%という現在地—Riverレポートが示す伸びしろ

保有者は世界人口の4%弱に留まり、機関配分0.006%とTAM比約3%が初期段階を示す。
地域別には米国が約14%で先行、アフリカは約1.6%と低位。阻害要因は金融・技術リテラシー不足と価格変動、UXの未熟さだ。一方、ETF・企業財務・国家レベルの議論が追い風で、ETF初年の巨額流入は参入障壁を下げた。

障壁—教育・UX・ボラティリティ

詐欺やポンジへの誤解、自己管理の難しさ、価格急変への忌避が採用を遅らせる。
途上国ではステーブルコインが実務上優位な場面も多く、BTC決済の常用化にはボラティリティ緩和やヘッジ手段の普及が不可欠だ。

追い風—ETF・企業財務・主権の議論

米スポットETFの流入、企業のバランスシート組入れ、国家の準備金化議論の三位一体で、BTCの制度的受容が進む。
Edelmanら伝統派アドバイザーの配分提言が相次ぎ、機関配分の底上げ余地は大きい。

▽ FAQ

Q. Sora Venturesの10億ドル計画の進捗は?
A. 2025年9月に発表、初期2億ドルを確保し、6カ月以内の全額取得を目指す(台北発表)。

Q. パラグアイの次のマイルストーンは?
A. 2025年9月15–16日にAsunciónで「Accelerating Bitcoin」を開催し、準備金構想を議論。

Q. Samson Mow氏は何を強調している?
A. 2024年7月に「10万ドル以下は一生に一度」と述べ、100Kは通過点で長期強気を示した。

Q. 普及率3%の根拠は?
A. River社が世界保有率4%弱、米14%・アフリカ1.6%、機関配分0.006%を統合し推計した。

■ ニュース解説

アジアで10億ドルの財務ファンドが始動し、パラグアイは余剰水力の価値化として準備金化を議論したため、マクロ需給は引き締まりつつも、国家・企業の会計と規制調整が並行課題となる。
投資家の視点:①ETFフローとトレジャリー買いのタイミング差を監視、②国別リスク(IMF等)と会計方針の開示を重視、③ボラティリティ耐性と流動性確保のために段階的な配分(DCA・リバランス)を検討。

※本稿は投資助言ではありません。

(参考:The White House,IMF