▽ 要約
スケール:2025年7–8月に月次取引が1億ドル超で急伸
プラットフォーム:CourtyardとCollector Cryptが二強に台頭
UX:ガチャや即時買戻し導入で参入障壁を低下
リスク:IP非公式・KYC・トークン権限の三重課題
実物カードの熱狂はデジタルでも再現されているのか、という疑問に対し、ポケモンカードNFT市場は2025年夏に実需と投機が交錯する拡大局面にあるため、二強の実績と制度面のリスクを整理すると投資判断の視界が開ける。
市場概況と成長ドライバー
印刷枚数の高水準とRWA化の普及が同時進行したため、実需由来の在庫がオンチェーンに流入し流動性が跳ねた。
2024年のポケモンカード印刷は102億枚と高水準で、累計は2025年3月に750億枚を超えた。実物の供給・需要が厚い市場に、保管・鑑定済み資産をNFT化して24時間売買できるRWA(実物資産のトークン化)が重なり、売買回転と価格発見が加速した。ガチャやブラインドパックなど、紙のオリパ文化を踏襲したUXが一般ユーザーの参加を押し上げた。
オフライン需要×RWAトークン化
高額カードの国境・時間の制約が保管とNFT化で解かれたため、24時間・グローバルな二次流通が成立した。
金庫保管と保険付保を前提にNFTで所有権を発行するモデルは、輸送・偽造・決済遅延のボトルネックを圧縮する。売買は即時決済、来歴はオンチェーン追跡が可能となり、従来のオークション依存から常時流動へと重心が移っている。
ゲーミフィケーションとUXの革新
ガチャや即時買戻しを導入したため、当たりのスリルと損失限定が両立し、回転率が上がった。
固定額でパックを引く体験は、当選時の高揚と外れ時の即時還流(85〜90%買戻し)を両立させた。相場連動のバックオファーにより試行回数が増え、在庫の回転が市場厚みを生んでいる。
コミュニティと主要プレイヤーの参入
大手の関与と公式SNSでの言及が相次いだため、話題性が拡散し新規参加が増えた。
NFT大手がパック販売に乗り出し、ソラナ公式も「トークン化+償還可能+デジタル開封+ゼロ摩擦」を強調したことで、暗号資産コミュニティと既存コレクターの往来が生まれた。
主要プラットフォーム比較(Courtyard/Collector Crypt/Phygitals)
二強は保管一体型(Courtyard)とガチャ特化(Collector Crypt)の棲み分けが成立し、新興(Phygitals)が軽量UXで追随した。
Courtyard(Polygon)—保管とパック販売
Brink’s保管と保険付保を基盤に、デジタル自販機型パックと90%即時買戻しで高速回転を実現した。
金庫保管・鑑定済みカードをNFT化し、アプリやWebの自販機でパック販売。出品者には二次流通1%のキャッシュバックが付与され、在庫協力のインセンティブが働く。2025年はシリーズAで資本を厚くし、GMV規模も拡大した。
Collector Crypt(Solana)—ガチャと$CARDS
ガチャの成功でコア売上を伸ばし、$CARDSトークン上場で話題化したため、8月は月間取引約4,400万ドルに到達した。
レアリティ別確率と相場連動の即時買戻し(85〜90%)を提示し、ガチャ経由の売上比率が高い。2025年9月に$CARDSを発行し時価総額が短期間で拡大、ただし契約権限に関する注意喚起も出ている。
Phygitals(Solana)—クロー・マシンと軽量KYC
ウォレット直結でデポジット不要の決済とクロー・マシン演出を採用したため、カジュアル層の参加ハードルを下げた。
1〜500ドルのプル価格帯で抽選ができ、外れ時は一定割合の自動買戻しを提示。2025年8月の月間取引は約200万ドルと小規模ながら+245%の高成長で、今後はオークション追加で厚みを狙う。
指標の目安(2025年夏)
- 対応チェーン:Courtyard=Polygon/Collector Crypt・Phygitals=Solana
- 月次取引:Courtyard約7,800万ドル、Collector Crypt約4,400万ドル、Phygitals約200万ドル(いずれも8月)
- 主要機能:保管+自販機/ガチャ+トークン/クロー+軽量UX
データで読む市場(2024–2025)
2025年7–8月に月間1億ドル超へと段差成長したため、RWAカードの“常時マーケット”化が鮮明になった。
月次取引量の推移とシェア(2025年7–8月)
7月は主要プラットフォーム合計で1.2億ドル超へ急伸し、8月はCourtyardとCollector Cryptで約95%を占めた。
資金調達・提携・UX改善が重なり、二強体制で流動性が集中。新興は高成長ながら絶対額は限定的で、在庫の厚みと回転速度がパワー法則を生んでいる。
印刷枚数とアナログ市場の裾野(2019–2025年)
2019年以降の大量印刷で基礎在庫が肥大したため、実物由来の“裏付け”がオンチェーン流動を支えた。
2024年の年間印刷は102億枚(2023年は119億枚、2022年は97億枚)で、2025年3月時点の累計は750億枚超。巨大なアナログ母集団がデジタル市場の天井を押し上げる。
収益モデルと平均支出(Collector Crypt事例)
売上の多くをガチャが占め、即時買戻しで回転を促すため、ARPUは高水準に集中する傾向がある。
買戻し保証で再挑戦が促進され、ハイエンド層の支出が売上を牽引。高額在庫の外部調達と自社在庫循環の設計が継続成長の鍵となる。
リスクと規制:IP・KYC・スマコン権限
非公式・越境・権限設計の三点が未整備のため、法的・技術的なボラティリティに備えが必要となる。
公式非公認ゆえの知財リスク
ポケモン公式はNFTを承認していないと明言しているため、画像・名称利用やブランディングに係るリスクは常に残る。
過去には無許諾NFT企画への差止も確認される。市場規模が大きくなるほど、知財管理の要請は強まる。
ルールとKYCの相違(地域差)
暗号資産・コレクター規制は国・地域で差があるため、償還・法定通貨出金時のKYC要件や広告規制に留意が必要だ。
基本はウォレット接続で匿名利用が可能でも、現物発送や法定通貨化の局面で本人確認が生じる実務が一般的で、米国・日本で要件が異なる。
トークン権限(凍結・増発)と監査
一部トークンは売却制限や手数料変更等の権限が残るため、監査・凍結/増発権限の設計確認と分散度の把握が不可欠だ。
ユーティリティや報酬設計が明確でも、契約権限の集中は市場ストレス時の流動性リスクに直結する。
今後の展望とチェックポイント
公式関与・在庫厚み・UXの低摩擦化が進むほど、二次流通の常時化と金融化が強まり、市場の裾野が広がる。
公式関与の有無
公式発の公認仕組みが出れば信頼性とカバー範囲が拡大する一方、既存サービスは棲み分け・提携が重要になる。
マルチチェーン化と金融化
NFT担保レンディングや保有インセンティブが広がれば、在庫保有コストが下がり、長期滞留リスクを抑制できる。
一般層への拡大条件
手数料・配送・KYCフローの摩擦低減と、相場連動の買戻し透明性が、次の100万人参加の決め手になる。
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▽ FAQ
Q. 2025年8月の主要取引量は?
A. Courtyard約7,800万ドル、Collector Crypt約4,400万ドル、Phygitals約200万ドルです(8月時点)。
Q. ポケカの年間印刷枚数は増えていますか?
A. 2024年は102億枚で前年比減少ですが、2022年の97億枚を上回り累計は2025年3月に750億枚超です。
Q. ガチャの買戻し保証はありますか?
A. CourtyardやCollector Cryptは85〜90%の即時買戻しを提示し、損失を一定程度限定します。
Q. 公式ライセンスの状況は?
A. ポケモン公式はNFTを承認していないと2024年に表明しており、現行市場は非公式です。
Q. $CARDSの注意点は?
A. 発行者が手数料変更や売却制限等を可能にする権限があると注意喚起があり、投機リスクに留意が必要です。
■ ニュース解説
主要2社の月間取引が2025年8月に合わせて1億ドル超へ伸びた一方で、IP非公認とトークン権限の課題が残るため、拡大と是正が並行する局面にある。
事実・背景・影響を整理すると、①実物市場の厚い需給とRWA化で常時流動が定着、②ガチャと買戻しで回転率が上昇、③一方でIP・KYC・スマコン権限の三点が残存課題で、④公式関与やルール形成が次段の鍵となる。
投資家の視点: プラットフォーム選定では、保管の信頼性(第三者保管・保険)、在庫の厚み、買戻し条件(%と根拠)、手数料・ロイヤリティ、トークンの権限設計(凍結・増発の可否)を最低限チェックしたい。短期イベント(新規トークン、提携、アプリ刷新)と、中期の在庫調達力・資本政策(資金調達)を分けて評価するのが有効である。
※本稿は投資助言ではありません。
(参考:Solana(公式X),The Pokémon Companyの見解(Polygon報道),Courtyard×Brink’s(PR))