2025年Perp DEX比較:主要9社の実力

▽ 要約

マーケット DEXパーペチュアルは年間2.6兆ドル。
シェア Hyperliquidは9月時点38%に低下。
コスト HLは0.045/0.015%、Aevoは0.08/0.05。
リスク GMXは7月に$42M流出で警鐘。

規模も使い勝手もCEX級へ接近する一方で、どのPerp DEXを選ぶべきかは迷いやすい。結論は、「Perp DEX比較 2025」の4軸(速度/板厚・手数料・商品範囲・ガバナンス)で使い分けるのが合理的だ。本稿は主要9社+新興勢を一次情報ベースで横比較し、直近のシェア変動や事故情報まで俯瞰できるよう解説する。

市場概況(2025年)

DEXパーペチュアル出来高は2025年に年間2.6兆ドルへ拡大し前年比138%増となり、Q2単独でも8,980億ドルでCEXに迫った。 一方、王者Hyperliquidの支配力は後半に鈍化し、新興Aster・Lighterが台頭した。
2024〜2025年は“CEX並の約定体験×オンチェーン透明性”を武器に市場が拡大。2025年9月時点の占有率はHyperliquid38%、Lighter16.8%、Aster14.9%が目安で、春先から構図が大きく変わった。プロダクト面では専用L1(Hyperliquid)・OP Stack系L2(Aevo)・プール型(GMX)・Synthetix統合(Kwenta)など多様化が進む。

主要Perp DEX比較表(2025年9月)

方式・手数料・レバ・トークン機能を横比較し、初見のミスマッチを最小化する。 値は代表的な基準料率で、ティア割引や市場別差は適用前提。

プラットフォーム対応チェーン / レイヤー方式・流動性取引手数料 (Maker/Taker)レバ上限ガバナンストークン(主機能)備考
Hyperliquid独自L1(Hyperliquid)完全オンチェーンCLOB+HLP0.015% / 0.045%(基準、割引有)~50xHYPE(ガス・投票・割引)ガス実質不要、サブ秒最終性。市場占有率は9月38%。
dYdX独自L1(Cosmos SDK)オフチェーン注文板+オンチェーン合意目安0~0.05%(ティア制)~20xDYDX(ガバナンス・手数料設定等)v4で完全分散指向、ガスはCosmos側で発生。
AevoOP Stack系L2(現在EigenDA採用)高速マッチング+オンチェーン清算0.05% / 0.08%(Perp)/プレ先物は -0.10% / 0.25%20x(プレ先物2x)AEVO(ステーキング・特典)オプション&プレ先物を統合。
GMX (v2)Arbitrum / AvalancheGLPプール+オラクル価格~0.05–0.07%(片道、資産別)~50xGMX(収益分配)、GLP(LP)2025/7に約$42M流出。
Level FinanceBNB ChainGLP類似指数プール目安~0.1%20–30xLVL/LGO2023/5に約$1.1M流出。
KwentaOptimism等(Synthetix Perps)合成資産プール(無限流動性設計)~0.01–0.3%(資産別)25–50xKWENTA→SNX統合議論OP等の取引インセンティブあり。
Vertex(旧)Arbitrum他 → Ink L2へ移行ハイブリッド:AMM+注文板0% / 0.02%目安~10xVRTXサンセット(INKへ)2025/7にInk L2へ。Edgeは段階停止。
Rage TradeArbitrumvAMM+「流動性リサイクル」Vault0.15% 片道(設計)~10xRAGE(2024/8 TGE)ETH特化からアグリゲータへ進化中。
DriftSolana注文板+バックストップAMM低テイカー/メイカーリベート(階層)~101xDRIFT(手数料還元)高速約定・サブアカ等の高度機能。

関連:【$HYPE】ハイパーリキッド(Hyperliquid/ハイリキ)エアドロップ完全ガイド|2025最新

プロジェクト別レビュー

Hyperliquid(ハイパーリキッド)

専用L1とオンチェーンCLOBでCEX級の板と速度を実現したが、新興勢の伸長でシェアは9月に38%まで低下した。
独自BFTとHyperEVMを備える専用L1で、取引はガス実質ゼロのUX。基準手数料はテイカー0.045%/メイカー0.015%(大口割引有)で、板指向のプロとBot需要を取り込む。2025年はAster・Lighterの攻勢で独走に陰り。HYPEはエアドロ31%配布でコミュニティ重視の配分と報じられている。

dYdX(ディーワイディーエックス)

Cosmos系の独自L1で分散化を徹底する一方、ガス負担や速度面でCEX級UXとの差は残る。
v4では注文板はオフチェーン、最終性はオンチェーン合意という設計。手数料はティア制で概ね0〜0.05%帯。IBC連携で資産移動は容易だが、EVM資産との接続性は限定的。かつての首位からは後退し、流動性の奪還が課題。

Aevo(エイボ)

OP Stack系L2にオプションとPerpを統合し、上場前「プレ先物」など独自市場で差別化した。
Perpはメーカー0.05%/テイカー0.08%、プレ先物はメーカー-0.10%リベート/テイカー0.25%。DAは現在EigenDA運用との公的トラッキングもあり、以前のCelestia依存からの変遷が見える。

GMX(ジーエムエックス)

GLPプール方式で“実収益還元”を確立したが、2025年7月に約4,200万ドル流出の打撃を受けた。
v2で手数料は片道0.05–0.07%程度まで低下。LP(GLP)とステーカーへ収益分配する一方、オラクル・設計依存のリスク管理は引き続き論点。

Level Finance(レベルファイナンス)

BNB Chain発のGLP型で手数料は標準的だが、2023年の約$1.1M流出が尾を引く。 セキュリティ強化後もGMX模倣の域を出ず、独自性が課題。

Kwenta(クエンタ)

Synthetix Perpsのフロントとして無限流動性設計を提供し、資産別に手数料を低水準で最適化する。 OP等のリベート施策も厚い。

Vertex(バーテックス)

Arbitrum発の統合DEXだったが、2025年7月にKraken支援のInk L2へ移行し、VRTXはサンセットへ。 Edge多拠点の段階停止とINK配布が発表された。

Rage Trade(レイジトレード)

ETH特化のvAMMと“流動性リサイクル”Vaultで注目、2024年にRAGEトークンがTGE。 現在はPerpアグリゲータとして他所流動性も束ねる方向性。

Drift(ドリフト)

Solanaの高スループットを活かすハイブリッドで、JITやサブアカなどプロ向け機能が充実。 手数料は低テイカー+メイカー優遇の階層制。

使い分けの実務指針

速度・板厚を最優先するなら専用L1(Hyperliquid)、商品幅や先物+オプション統合を望むならAevo、LP収益や実利回収ならGMX/Synthetix系が合理的だ。 ただし事故・規制・手数料改定のアップデートは常時確認が必要。

  • 高頻度・API前提:Hyperliquid/Drift
  • オプション併用:Aevo
  • 実収益重視(ステーク/LP):GMX、Synthetix(Kwenta)
  • 統合口座(現物・先物・貸借):Vertex(移行後仕様に留意)

▽ FAQ

Q. 2025年のDEXパーペチュアル出来高は?
A. 年間2.6兆ドルで前年比138%増、Q2だけで8,980億ドル。

Q. 最新のシェア動向は?
A. 2025年9月時点でHL38%、Lighter16.8%、Aster14.9%。

Q. 手数料が安いのはどこ?
A. 基準でHL0.045/0.015%、Aevo0.08/0.05、GMXは0.05–0.07%。

Q. 直近のセキュリティ事故は?
A. 2025/7にGMX v1系で約4,200万ドル流出が発生。

■ ニュース解説

DEXパーペチュアルは数量面でCEXに接近したため競争が加速し、一方でHyperliquidの独走が緩みAster・Lighterが台頭した。 市場の厚みは増したが、手数料・インセンティブ・規制の変動リスクはむしろ高まる。

投資家の視点:

  • 取引者は実効コスト(手数料+ファンディング+滑り)を定点観測。
  • LP/ステーカーは事故・設計リスク(GLPの相対損、清算連鎖、オラクル依存)を許容可能か明確化。
  • 新興勢のゼロ手数料やポイント施策は短期優位でも持続性を検証。

    ※本稿は投資助言ではありません。

(参考:CoinDesk,Hyperliquid Docs