パナマ運河のビットコイン決済案、優先通行も

▽ 要約

ハイライト 市長が運河でBTC決済と優先通行を提案。
スケジュール 構想は2025年5月29日の会議で表明。
制度整備 市は税・手数料の暗号資産支払いを承認。
留意点 運河庁の承認や平等原則への適合が必要。

パナマ市のミズラチ市長がパナマ運河 ビットコイン決済と優先通行を提案したため、実装は運河庁の判断と法的適合次第であり、市の既存制度を踏まえて影響を解お伝えします。

運河のBTC決済と優先通行の提案

2025年5月29日に市長が運河通行料のBTC決済と優先通行を示唆したため、実際の採否は運河庁の判断と運用要件の整備に左右される。
市長はラスベガスの「Bitcoin 2025」パネルで「BTCで払えば速く通れる」と述べ、運河通行の並び順に特典を付ける構想を披露した。パナマ運河は世界海上貿易の約5%を担い、2023/24年度は約1万隻が通航、収入は約50億ドルと報じられる。構想はあくまで提案段階で、料金支払いインフラ・KYC/AML・為替処理・優先順位ルールの設計が前提となる。

市のBTC準備金構想

市長は市レベルのビットコイン準備金にも言及したため、立法承認不要としつつも価格変動やカストディの管理枠組みが課題となる。
市の余剰資金の一部をBTCで保有するアイデアで、価値保存の多様化や都市ブランディング効果が狙いとされる。他方で、評価損・鍵管理・会計処理・リスク上限の取り決めが不可欠で、まずは小規模パイロットからの段階導入が現実的だ。

優先通行の設計ポイント

優先条件、適用範囲(貨物種別・船型)、料金上乗せの有無、緊急時の停止要件、透明性の高い順番管理など、制度設計の客観性が信頼確保の鍵となる。

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法制度と実現ハードル

運河はACP(パナマ運河庁)が運営し公平性が国際的に求められるため、優先通行と決済手段の変更には規程改定や対外説明が前提となる。
BTC払いの受け入れは技術的に可能でも、運河庁の承認と運用規程の整備が不可欠だ。平等待遇の原則や同等アクセスの考え方に抵触しない設計が必要で、特典付与の範囲と透明性、既存の通行予約枠との整合、為替・会計・監査の要件適合が検討課題になる。加えて、船会社側の会計・為替・コンプライアンス要件も参加動機を左右する。

国内の前提——市の暗号資産受け入れ

市は2025年4月に税・手数料等の暗号資産納付を承認したため、Towerbankが即時ドル転換し行政は暗号資産を直接保有しない。
市議会は暗号資産での納付を承認し、後に市とTowerbankが協定を締結した。BTC・ETH・USDC・USDTなどの支払いは銀行が受け取り即時にUSDへ換金され、市・庁は米ドルで歳入を受領する方式だ。この「間接受領」により、価格変動や保管の運用リスクを回避しつつ、支払手段としての利便性を拡張している。

影響と展望——前例の少ないインフラ適用

エルサルバドルの政策が参照点となったため、運河での採用が実現すればインフラ級の事例として国際物流と政策議論に波及する。
BTC決済はクロスボーダーの即時性向上と手数料・決済遅延の低減が期待される一方、実需は船社の為替方針とコスト便益に依存する。まずは限定導入や実証の形で、利用実績と運用コストを可視化し、フェーズ別に適用範囲を広げるアプローチが妥当だろう。市の納付制度で得た運用知見を横展開できれば、実装の現実性は高まる。

市場・物流への影響

大口決済の即時性と会計処理の両立が鍵となるため、船会社の財務要件・監査・ヘッジ手段の整備次第で採用速度が決まる。
決済ネットワークの稼働安定性、ウォレット運用体制、価格リスクのヘッジやインボイス処理、港湾・保険手続きとのデータ連携など、海運の実務要件に対応できれば、混雑時の優先枠は実需の強い誘因となり得る。

▽ FAQ

Q. いつ誰が構想を示した?
A. 2025年5月29日、ミズラチ市長がBitcoin 2025でBTC決済と優先通行を提案。

Q. 対象は何か?
A. パナマ運河の通行料でのBTC決済を想定し、条件を満たせば優先通行を与える案。

Q. 市の暗号資産受け入れは実施済み?
A. 2025年4月に承認し、Towerbankが即時ドル転換して税・手数料等を受領。

Q. 国家のBTC準備金か?
A. 市長は市のBTC準備金に言及、国家準備金としての正式決定は未確認。

Q. 運河の規模と収入は?
A. 年間約1万隻・世界海運の約5%で、2023/24年度収入は約50億ドルと報じられる。

■ ニュース解説

2025年5月29日、パナマ市長が運河のBTC決済と優先通行を提案し、市は2025年4月に税・手数料の暗号資産納付を承認して銀行が即時ドル転換する運用を採用した。エルサルバドルの先行事例と市の「デジタル財政」志向が下地となり、国際物流のボトルネック解消インセンティブとして設計された。実現すれば公共インフラでの暗号資産決済の象徴事例となる一方、運河庁の承認、平等待遇、KYC/AML、会計基準への適合が鍵。

投資家の視点:規制・ガバナンス・実需の三点(当局承認の進捗、制度設計の透明性、船社の利用意向)をモニターし、段階導入のスケジュールと関連アセット(BTC・海運指数)の感応度を検証するのが妥当。

※本稿は投資助言ではありません。

(参考:Municipio de Panamá,CoinDesk,Newsroom Panama