韓国国民年金のビットコイン(暗号資産)関連投資182%増

▽ 要約

データ:上半期182%増で7700億ウォンに。
比率:総資産の0.1%未満で限定的。
背景:指数連動と分散投資、直接投資は未実施。
波及:公的年金の参入で機関マネー拡大示唆。

投資家の関心は「年金がどこまで暗号資産に踏み込むか」に尽きるが、結論は韓国国民年金の暗号資産株投資が2025年上半期に182%増と急拡大しつつも、総資産に対する比率は0.1%未満で制度目的に沿った範囲に留まる、である。読者のメリットは、保有銘柄の内訳や指数採用の影響、国内外年金の動向、そしてMicroStrategy(現Strategy)のBTC追加購入といった情報に基づく立体的な理解だ。ここでは韓国国民年金 暗号資産株 182%増を軸に、規模・背景・波及を解説する。

規模と内訳—NPSの暗号資産関連株エクスポージャー

上半期に評価額が約7,700億ウォンへ拡大したため、NPSの暗号資産関連株は急伸したが総資産対比では依然ごく小さい。
NPSが保有する暗号資産「テマ株」の中心はStrategy(旧MicroStrategy)・Coinbase・Block(旧Square)・Robinhoodの4銘柄で、2025年上期末の合計評価額は約5.53〜5.57億ドル(約7,700億ウォン)に達したと複数の一次・二次報道が伝える。中でもStrategyの保有額は上期に約226%増と伸び、暗号資産関連株バスケット内の比重を押し上げた。

ポートフォリオ比率—「伸び率」と「規模感」を分けて捉える

総資産1,200兆ウォン超の規模のため、7,700億ウォンでも構成比は0.1%未満となり、年金全体のリスク寄与は限定的だ。
NPSは2025年3月末でAUM約1,227兆ウォン、同年5月末時点でも1,237兆ウォン規模と公表しており、暗号資産関連株の構成比は端数に留まる。一方、2024年2Qに新規取得したStrategy株約460億ウォンのポジションは、米国株式「直接投資」ポートフォリオで0.04%との開示があり、採用指数に連動するパッシブ運用の中でポケット的に増減する設計である。

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背景—指数連動と分散投資、直接投資は依然慎重

指数採用とテック・デジタル経済の構成変化を受け、間接的エクスポージャーが自然増した一方で、仮想通貨そのものへの直接投資は制度面と方針面で見送られている。
NPSは海外株でMSCI等ベンチマークに連動する運用比率が厚く、2023年にCoinbase、2024年にStrategyが採用・組入れ拡大された流れを反映して保有が増えやすい。分散投資の観点でも株式・債券と相関の低いデジタル資産関連ビジネスはヘッジ機能を持ち得るため、指数連動と分散最適化が同時に働いた格好だ。他方、直接の仮想通貨投資は未実施で、制度・監督面の制約とボラティリティ配慮から方針として慎重姿勢を維持している。

制度・世論—国内の評価は賛否併存

国会では「分散投資として合理的」との支持と「年金のリスク取り過ぎ」との慎重論が併走し、制度整備論議が続く。
与野党内でも意見は割れ、民主党の閔炳徳議員は現物ETF等の分散投資は不可避と主張する一方、政府・与党には慎重論が根強い。2024〜2025年のビットコイン最高値圏で含み益報道が相次ぎ、個人投資家の受容は相対的にポジティブだが、公的年金の役割からリスク管理・ガバナンスへの視線は厳しいままだ。

他国年金との比較—水準は控えめだが象徴性は大きい

米英豪の一部年金がETFや先物で露出をとるなか、NPSの構成比は小さいが世界3位規模の存在感が市場シグナルとなる。
米国ではウィスコンシン州投資委員会(WSB/SWI)がIBIT/GBTCを保有、ミシガン州年金もARKBへ投資した事例が確認されている。英国ではCartwright助言の年金が3%のBTC配分を公表、豪州ではAMPスーパーがビットコイン先物をDAAに組み入れた。米大規模年金でもCalSTRSがMSTR株を保有するなど、間接エクスポージャーの事例は広がる。対照的にNPSの比率は0.1%未満と小さいが、世界3位のAUMであること自体が制度マネー参入の象徴となる。

市場インパクト—「量的影響」は限定、「質的影響」は大

NPSの7,700億ウォンはグローバル暗号資産時価総額に比し小さいため短期の価格インパクトは限定的だが、機関投資家の正当性シグナルは大きい。
BTCは2025年8月に史上最高値約12.4万ドルを更新後、11.5万ドル前後へと調整したが、年金・ETF・企業財務といった制度マネーの裾野拡大は市場成熟化とボラティリティ低減に資する。将来的にNPSが現物ETF等へ露出を広げれば、規模次第で相場への2次的影響は無視できない。

補章—Strategy(旧MicroStrategy)のBTC追加購入と保有状況

社名をStrategyに改めた同社は2025年8月11〜17日に430 BTCを平均$119,666で追加取得し、累計629,376 BTC(平均$73,320)へ増加した。なお、mNAVが2.5倍未満でも普通株を発行できるよう規律を緩和し、金利・優先配当に加えBTC購入や運転資金にも充当可能とした。
8月18日提出のSEC Form 8-Kによれば、同社は直近1週間で約5,140万ドル相当を購入し、累計取得原価約461.5億ドル、平均取得単価$73,320と開示した。2025年8月のBTC最高値更新(約$124,000)と相まって、評価差益は依然厚い。資金調達は株式・優先株・社債・ATM等を機動的に使い分け、価格急変時も買い増しを行う方針を維持している。

▽ FAQ

Q. NPSの暗号資産関連投資はどの銘柄で構成?
A. Strategy・Coinbase・Block・Robinhoodの4社で、2025年上期末に合計約5.5億ドル。

Q. NPSの総資産と構成比は?
A. 総資産は2025年3月末で約1,227兆ウォン、暗号資産株は0.1%未満の比率。

Q. 直接のBTC投資は可能?
A. 現状は未実施。制度・方針上の制約とボラティリティ配慮で、主に指数経由で間接露出。

Q. Strategyの最新動向は?
A. 2025年8月11〜17日に430 BTCを追加、累計629,376 BTCを保有とSEC提出8-Kで開示。

■ ニュース解説

2025年上半期、NPSの暗号資産関連株は約7,700億ウォンへ増加し構成銘柄はStrategy/COIN/BLOCK/HOODで、指数連動と相関低位の分散効果を背景に短期の価格波及は限定的だが、公的年金の参入は制度マネーの信認拡大に資すると整理できる。

投資家の視点:①指数採用・除外に伴うフローと個社ボラを分離して観察、②NPSのような超長期投資家の行動は“質的シグナル”として解釈、③MSTR/Strategy等のレバレッジ構造や希薄化リスクを財務注記で点検。

※本稿は投資助言ではありません。

(参考:U.S. SEC(EDGAR),NPS / 厚生福祉部(公式