NFT界の刑務所は、最高にファンキーだった――チンチロ刑務所『Prisoners Prisoners』& 『Voxel Prisoners』

はじめに

 NFTアートと言われて、第一印象で思い浮かぶ絵はなんだろう?

 アイコン映えするかわいい女の子?
 見てるだけで癒される小動物系イラスト?
 あるいは、プロジェクト系でおなじみの横顔絵?

 おそらくどれも、主流と言って差し支えないジャンルだと思う。

 しかし、やはりNFTアートのイメージとして、あるいはそれを語る上で外せないのは、ピクセル/ボクセルアートではないだろうか。

 初期NFTアートの代表格と言えばあの『クリプトパンクス』だし、ピクセルとそこから派生・発展したボクセルというジャンルは、NFT黎明期の歴史を築いたジャンルと言っても過言ではないはず。そして、今後も当面はこのジャンルの地位が揺らぐことはないだろうと思っている。

 そんなわけで、今回はこのピクセル/ボクセル界隈において強烈な個性が光るコレクションを紹介したい。

 チンチロ刑務所さんによるコレクション『Prisoners Prisoners』『Voxel Prisoners』である。


そこは、最高にエンターテイメントな刑務所。

まずは、作品をご覧いただこう。

 ご覧の通り、囚人である。
 しかし、ただの囚人ではない。
 全員、どこかで見たことのあるようなマークやアイテムを頭に象った、個性的な囚人たちが収監されている。
 ちなみに、チンチロさんは実際にリストのことを「収監」、取引価格を「保釈金」、お迎えを「出所」と呼んでいる。こういった作品以外の部分でもコレクションの世界観を大事にしているあたり、個人的には非常にポイントが高い。

 そして、実際の作品を見てみると、「あ、これはチンチロさんだな」と一目でわかる作風である。
 そもそもピクセルで囚人を描いているのはチンチロさんくらいだし、さらに頭部が明らかに人間じゃないクレイジーなヤツらが揃っている。この掴みのインパクトは、ピクセルボクセルに限らずNFT全体を見渡しても屈指の強さじゃないだろうか。
 基本的に、今のNFT界隈は無名のアーティスト達が切磋琢磨し、助け合い、認め合いながらもしのぎを削るような世界だと思っている。その中で、このキャラ立ちの強さは大きな武器だ。

 しかも、キャラが立っているのは作品だけではない。
 生みの親であるチンチロさん本人も、大変キャラが立っていて面白い人物である。
 チンチロさんはよくTwitterスペースのホストをしていて、自分もよくそこにお邪魔させてもらっている。リスナーだけでなくスピーカーとしても入ってお話しさせてもらうことも多々あるが、ここで交わすトークが実に軽妙で面白い。
 NFTはもちろん、どんな話題にもある程度合わせられる引き出しの多さもあり、加えて間に宣伝を差し込んだり、NFTネタを絡ませたりする会話の舵取り能力も高い。さらに、他のクリエイターの企画と絡ませたコラボスペースも積極的に展開しており、自分がいつも安心して楽しめる、しかしマンネリ化しないスペースの1つである。
 要するに、チンチロさんは自らスペースで作品のエンタメ性を体現しながら、作品の認知を高めているわけだ。やっぱり、話す側に立ってスペースをフル活用できるクリエイターは、強い。  

 作品。スペース。クリエイター自身の人物像。この全てに惜しみなくエネルギーが注がれて、チンチロ刑務所の『エンターテイメント』は完成されているのである。

エンタメ性だけじゃない、+αの魅力。

 作品にインパクトがあって、スペースが楽しくて、面白い人。
 端的に言えば、チンチロ刑務所のクリエイター像はこんな感じだが、これだけで目立てて作品が簡単に売れるほど、NFTは甘い世界ではない。作品にインパクトがある人も、スペースが楽しい人も、人間性に魅力がある人も、NFTの世界にはごまんといる。
 しかし、それでも群雄割拠のNFT界隈で着実に実績を残しているチンチロさんには、もう一つユニークな武器がある。

 それは、「思い出」である。

『Prisoners Prisoners』に収監されている囚人達の頭のアイテムは、どこか懐かしさを感じさせてくれる。
 例えば、ファミコンのコントローラーとか。
 使いかけの消しゴムとか。
 寂れたたばこ屋の看板とか。
 この絶妙に懐かしいアイテム達が、心の奥、忘れかけていたエモい感覚を刺激してくるのである。
 そして、この懐かしさからくるエモさは、ボクセル版の『Voxel Prisoners』ではさらにもう1段階進化させてきた。
 3Dで表現できるボクセルの特長を活かし、奥行きのある+ピクセル以上に緻密な作風でさらにエモさを増量させている。
 例えば、このチョコバナナ屋台。

 バナナの1本1本まで細かく描かれているし、屋台ののれんもまさに見たことのある懐かしさ全開なあの字体を完全再現している。
 他にも、昔ながらの中華食堂や駄菓子屋など、懐かしさ溢れる作品を高い再現度で発表している。しかも、ボクセル制作歴はまだ1年未満だというから凄まじい。

 つまり、チンチロ刑務所は、ただの面白いエンターテイナーではない。
 NFT界隈ならではのスピード感、斬新な着眼点にクリエイティブな発想力と創作スキル。これらを兼ね備えたピクセル/ボクセルクリエイターとしても一線級な実力の持ち主なのである。

チンチロ刑務所の、新たな挑戦『ピクQN』

 さて、そんなチンチロさんだが、ここにきて新たな情報が発表されている。

 な ん と、過去の染島の記事で紹介した山口さぷりさんの『照れQN』に引き続き、『ZQN-DAO』とコラボするQNシリーズとして、新たにチンチロさんによるジェネラティブコレクション『ピクQN』がスタートするという。
 最近はボクセルが主流だったが、ここにきてピクセルへ。チンチロさんの原点回帰である。

 しかも、ただの原点回帰ではない。今回の作品は刑務所を脱獄、もとい飛び出した全く新しい世界観のコレクションになっている。

 現在彼のTwitterにWIPとして公開されている作品を貼ると、例えばこんな感じ。

 構図としては箒に乗った魔法使いの女の子、みたいな雰囲気だが、乗り物が割り箸やら哺乳瓶やらで女の子も制服だったり芋ジャージだったり……刑務所の檻から解き放たれた分、フリーダムっぷりに拍車がかかっている。もうチンチロさんのツイートやdiscordを追ってWIPを眺めているだけでも、充分すぎるくらい面白い。

 加えてエンターテイナー・チンチロは新プロジェクトを盛り上げるべく、現在ZQN-DAOメンバーの参加型企画として、AL(アローリスト)配布も兼ねた「ぬりえtoミント」という企画を開催している。
 期限は12月10日までとなっているので、是非以下のツイートの案内を参考にしつつ、チャレンジしてみてほしい。

 ちなみに、AL付与はZQN-DAOでウォレットアドレス登録が必要になるのと、投稿した人から抽選での付与となるので、その点はご注意を。

 こんな感じで着々と準備が進んでいる新企画『ピクQN』だが、チンチロさんのことなので今後もリリースまでにまた新たな仕掛けを見せてくるかもしれない。そんなところも含めて、今からますます目が離せない。

 リリース予定日は12月17日。それまで、要チェックである。

 ではまた。

Author:染島ユースケ

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