▽ 要約
カタリスト WLFI上場とV2期待が短期資金を誘引
デリバティブ OI急増と清算連鎖で上昇を加速
供給面 8/6の39百万枚解禁と内部売却疑惑
疑義 出来高過大と協調取引で「演出」指摘
投機熱を利用した異例の急騰は、薄い流通供給と先物市場のショート清算を梃子に作られ、アンロックの売り抜けに個人の買いが吸収された可能性が高い。MYX事件 エグジット流動性を検証し、価格材料・市場構造・資金フローの接点を中立に解説する。
異例の急騰を生んだ“表向きの材料”
WLFI上場発表やV2予告、Binance Alpha露出が連鎖したため、現物・先物双方の出来高が跳ね、短期資金の流入を呼び込んだ。
9月5日のWLFI上場発表で注目が高まり、数日でMYXは過去7日比で1,000%超の伸びを示した。Alphaの「エアドロップ好成績」ランキング上位入りはFOMOを拡散し、投機的買いを増幅させた。
MYXは「MPM(Matching Pool Mechanism)」を標榜し、ゼロスリッページや最大50倍レバレッジを訴求してきた。9月下旬予定のV2予告は“将来性の物語”を補強し、需給の薄い板で価格インパクトを増幅させた。
他方、MEXC・Bitgetでの取扱い拡大や限定枠露出が参入障壁を下げ、売買参加者を急増させた。
WLFI上場とAlpha露出
高関心のWLFI取り扱いとAlphaランキングの話題化が重なったため、短期資金と新規参加者を一気に呼び込んだ。
WLFIはトランプ関連の大型テーマで、上場発表の時点で拡散力が強かった。Alphaの「高成績エアドロップ」可視化は、実需ではなく“収益実績”の訴求で短期勢に刺さった。
V2アップグレードの期待
V2でゼロスリッページ強化やマルチチェーン拡張を掲げたため、「改善見込み」が価格材料として機能した。
コード面の進捗の真偽はさておき、「数週間以内」などの強気文言は物語の燃料となり、テクニカル過熱を容認する心理を後押しした。
取扱い拡大とアクセス容易化
MEXC・Bitgetでの上場や先物対応が進んだため、流動性と可視性が上がり、FOMOを実需以上に増幅した。
薄い現物に先物のレバレッジが重なると、短期のフローだけで価格が放物線を描きやすい。
デリバティブ主導のショートスクイーズ
重要レジスタンス突破と資金調達頻度の調整が重なったため、ショートの強制決済が連鎖し、自己増強的な上昇となった。
先物の未決済建玉(OI)は一時4億ドル超に達し、短期間でショート清算が数千万ドル規模に積み上がった。日足RSIが90前後まで過熱した局面では、清算の買い戻し需要だけで上値が切り上がる“踏み上げ相場”が典型だ。
一部取引所では資金調達率(ファンディング)の清算頻度が1時間ベースへ調整され、ショート側の維持コストと不確実性が増大した。頻度調整は制度上の運用範囲だが、短期的には一方のポジションに不利に作用し得る。
強制ロスカットの連鎖
売り方の逆指値・清算ラインを意図的に上抜いたため、連鎖的な買い戻しが発生し、価格は過熱方向に自己強化した。
短期資金がレジスタンス帯を一気に突破させると、清算主導のフローが市場を上に“押し上げ”続ける。これが現物の薄い板と結び付くと、数ドル台から二桁台まで一気に運ばれ得る。
資金調達率と清算頻度の設計
清算・資金調達の頻度を短くすると、ポジション維持の難度が高まるため、短期の片側に急速なプレッシャーがかかる。
頻度変更は制度上の裁量だが、相場局面次第で片側だけが不利化し、清算ドミノの呼び水になる。
3,900万枚アンロックと内部者の売り圧
アンロック直前~当日に高値圏を作ったため、新規供給を市場の出来高に吸収させる“出口流動性”が成立した。
総供給10億枚のうち流通は約2億枚で偏在が大きく、2025年8月6日には約3,900万枚が解除された。直後、Hack VC関連アドレスからMEXC等への移動・売却がオンチェーンで観測され、当日の価格は最大58%下落。高出来高は個人の買いを吸収し、内部者の売り抜けの受け皿となった可能性が高い。
その後も高騰再演→再清算→戻り売りという往復過程が続き、個人のロング・ショート双方が刈られる構図が生まれた。
出来高偽装・協調取引の疑い
現実のTVL規模と不釣合いな出来高や市場間の同期的な板動きが多発したため、ウォッシュトレードや協調取引が疑われた。
Perp出来高が日次で数十億ドルに達する日が報告され、PancakeSwap・Bitget・Binanceなど複数市場でほぼ同位相の推移が確認されたとの指摘が相次いだ。多数の独立トレーダーによる偶然とは考えにくく、ボット運用を含む一元的なフローの存在が示唆された。
総合戦略の推定――“演出された”ポンプ&ダンプ
薄い現物を握り価格を押し上げ、清算連鎖で流動性を増やしたため、高値圏での大量供給吸収と往復収益化が可能になった。
①現物の掌握(薄商い化)→②レジスタンス突破でショート狩り→③メディア露出を利用したFOMO増幅→④アンロック期の高値売り抜け→⑤反転局面でロング側を刈り取る――という手順が整然と重なった。物語(V2・WLFI)と制度(資金調達頻度)の“設定”が、実需以上の値動きを支えた。
▽ FAQ
Q. MYXの最高値と期間は?
A. 2025年9月10日前後に18ドル台到達。7日で約1,400%の異常高騰が観測された。
Q. 39百万枚のアンロックはいつで、何が起きた?
A. 2025年8月6日解禁で関係者の移動と売却が確認され、当日に最大58%急落した。
Q. どこで取引が広がった?
A. MEXC・Bitgetで取扱いが拡大し、限定的にBinance関連チャネルでの露出も増えた。
Q. 清算とOIの水準は?
A. 9月上旬の清算は累計で数千万ドル規模、先物OIは一時4億ドル超に膨張した。
■ ニュース解説
MYXはWLFI上場とV2期待の物語が注目を集めた一方で、薄い流通・高レバ先物・制度調整が重なったため、ショート清算とアンロック売り抜けが同時進行した。背景にはAlpha露出や取扱い拡大があり、影響としては高値掴みと往復清算で個人損失が拡大した。
投資家の視点:①流通比率とアンロック日程、②OI・資金調達頻度・清算偏り、③TVLと出来高の乖離、④相関する板推移の有無を事前点検したい。相場急騰は流動性の罠になり得るため、建玉サイズと清算距離を機械的に制御し、イベント前後はレバレッジ縮小・ヘッジ導入を検討するのが一般的だ。
※本稿は投資助言ではありません。
(参考:MYX Finance,Binance Support,GitBook)