▽ 要約
ソラナ投資:2025年11月〜2026年10月に5.5億円を充当
資金調達:新株予約権と社債で約13.64億円を計画
株価反応:発表当日PTSは45円→高値75円に急騰
上場基準:グロース維持要件強化で財務戦略を加速
投資家は「なぜ今、モブキャストがSOLを企業財務に組み込むのか」を知りたいはずだ。結論は、ソラナ・トレジャリー事業で資産効率と事業シナジーを同時追求し、上場維持水準の改善も狙う戦略である。調達枠と使途、運用方針、株価インパクト、留意点を一次資料から簡潔に解説する。
事業の骨子と資金計画
10月3日決議で新事業を開始し、2025年11月〜2026年10月に550百万円をSOL取得・立上費用へ充当するため、第三者割当と社債で最大13.64億円の資金枠を設けた。
同社は第36〜38回新株予約権(総数30万個、潜在株式3,000万株)と第2回無担保社債を発行し、割当先はEVO FUNDと代表取締役CEOの藪考樹氏。第36回は行使価額修正条項付、権利行使期間は36回が2025/10/21〜2026/10/22、37・38回は2029/10/22までと段階設計。調達金額のうち5.5億円をSOL購入・事業立上・開発費に配分する。
運用手法(保有+ステーキング)
長期保有でキャピタルゲインを狙い、委任ステーキングでインカムゲインも得る二本柱とするため、内規と外部カストディを併用し安全性と可監査性を確保する。
保有SOLの一部をネットワーク検証者に委任し報酬を得つつ、会計上は期末評価替えで損益が変動するため、短期業績予想の開示は見送る姿勢だ。
ガバナンスと安全管理
暗号資産特有の価格・セキュリティ・会計・法規制リスクを認識した上で、取締役会承認を条件に投資規模を段階的に見直すため、初期投入額を調達予定額の範囲に限定する。
管理は信頼性の高いカストディアン利用、権限分掌、コールド保管や多重承認などを前提に構築する計画である。
調達スキームの要点
第36回新株予約権は当初行使価額46円、下限行使価額23円、価格修正条項あり。第37・38回は46円で修正条項なし。潜在株式3,000万株は期初発行済株式5,963万株比で希薄化率50%に相当し、38回5万個はCEOが引き受ける。調達金はまず社債償還に充当後、SOL投資などへ振り向ける。
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ソラナ選定の理由と将来連携
高TPSと低手数料により大規模ファン参加型サービスに適合するため、同社はビットコインではなくソラナを選択し、既存の「ソーシャル・エンタメ&メディア事業」との親和性を重視した。
ソラナは数千TPS規模の処理と1件数円未満の手数料が特徴で、同社は将来のWeb3エコシステム構築の基盤として評価している。
ソーシャルインパクトパスポート構想
ファンの社会的貢献をNFTで可視化し特典設計に結び付けるため、SOL上で「ソーシャルインパクトパスポート」を試作し、コミュニティの熱量を事業の推進力へ転換する。
購買・支援・ゲーム内行動などをオンチェーンで記録し、貢献度に応じた体験や報酬を付与することで、LTVの向上とIP価値の増幅を狙う。
市場の反応と比較事例
発表直後にPTSで株価が急騰した一方、海外のDAT(デジタル資産トレジャリー)では急騰後の反落も見られるため、短期の熱狂と中長期の実装進展を峻別する必要がある。
同日PTSは終値45円に対し一時75円まで上昇し、材料視が明確だった。海外ではSharps TechnologyがSOL財務向け4億ドル調達で株価+70%急騰、Brera Holdings改めSolmateは3億ドル調達・ARK参画報道で一時52.95ドルまで急騰後に大きく反落するなど、ボラティリティが大きい。
海外DATの動向(Sharps/Solmateほか)
資本市場での大型調達を原資にSOLを積み上げる例が相次ぎ、ソラナ財団が割引でトークン提供を約束するスキームも見られるため、エコシステム連動の資金循環が拡大している。
SharpsはパラファイやPanteraらから4億ドル、財団は時価の15%ディスカウントで5,000万ドル相当のSOL販売を約束。SolmateはPulsar GroupとARKの出資で3億ドル規模の資金調達を発表した。
国内の先行事例(メタプラネット)
ビットコイン路線ではメタプラネットが2025年10月に5,268BTCを追加購入し、保有3万0,823BTCで世界4位となるなど、DATの収益化と規模化が国内でも本格化している。
インカム事業の拡大に伴い通期予想を上方修正するなど、暗号資産の財務戦略が実績に結びつくケースも出てきた。
投資家が見るべきポイントと主要リスク
購入量・保有残高の開示、希薄化進捗、評価替えの損益影響、実装プロトタイプの進捗という四点が株価ドライバーとなるため、決算・適時開示の定点観測が重要だ。
価格変動リスクは期末評価で利益がぶれる一方、上昇局面では評価益が押し上げ要因となる。希薄化は一時的な需給悪化を招きやすく、EVO FUNDの行使・売却動向も注視点。法務・会計・セキュリティ体制の水準は信用力に直結する。
▽ FAQ
Q. 調達額と使途は?
A. 約13.64億円を新株予約権と社債で調達し、うち5.5億円を2025年11月〜2026年10月のSOL取得・立上費用に充当。
Q. SOLの購入時期と量は?
A. 2025年11月〜2026年10月に段階実施し、市況と調達状況を踏まえ都度決定。具体金額・数量は現時点未定。
Q. ソラナ財団との提携はある?
A. 現時点で公式支援の開示はなく、モブキャスト独自の判断で導入・運用する方針。
Q. 株価の初期反応は?
A. 2025年10月3日夜間PTSで45円→一時75円まで上昇し、短期的に材料視された。
Q. 希薄化と社内コミットは?
A. 潜在株式3,000万株で希薄化率50%。第38回新株予約権5万個を藪CEOが引受。
■ ニュース解説
会社発表でSOL導入と資金枠が同時に示されたため、財務戦略とWeb3実装が連動し、発表当日のPTS急騰で株式のモメンタムも高まった。
投資家の視点:開示に沿って(1)調達・行使の進捗、(2)SOL取得価格と保有量、(3)期末評価損益のブレ、(4)試作NFTなど事業シナジーの可視化を点検したい。短期の価格変動に依存し過ぎず、希薄化の吸収力が伴う事業成長を見極めるのが基本だ。
※本稿は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。
(参考:モブキャストHD,)