▽ 要約
mNAV概念:EV÷保有BTC。10/17に約0.89へ</span>
要因:BTC反落、希薄化懸念、流動性・負債
経営:優先株と自社株買いを示唆、Phase IIへ
投資家の疑問は「mNAV割れは買い場か、それとも構造的な警告か」だ。本稿は、メタプラネットmNAV割れの発生時系列と要因、市場反応、資本政策、今後の注目点を一次資料で検証し、割安の見え方とリスクの中身を切り分ける。
mNAVとは何か、今回の「1割れ/0.9割れ」は何を示すか
mNAVは企業価値(時価総額+総負債)を保有BTCの時価で割る倍率であり、1超はプレミアム、1未満はディスカウントを示す。10/14に初の1割れ(0.99)、10/17には約0.89まで低下した。
同社は保有BTCやmNAVを自社サイトでリアルタイム開示しており、投資家指標としての重要性が増している。
発生時系列の整理
10/14、株価が482円まで急落しmNAVは0.99に低下、翌日以降も軟調で10/17は株価400円台・mNAV約0.89に達した。EVがBTC NAVを下回るディスカウントが明確化した。
保有規模と相対評価
10/1の追加取得で保有は30,823BTCに到達し、公開企業4位の保有規模と報じられる。これはディスカウントの衝撃を大きくした。
mNAV低下の主因(4点)
複数要因が同時に作用したため、プレミアムの圧縮とディスカウント拡大が進んだ。
① BTC価格の反落とリスクオフ
米中対立激化等を背景に10月中旬のBTCは11万ドル割れに接近し、16〜17日にかけて10万7千ドル台が意識される展開で関連株も連鎖安となった。
② 急騰相場の反動(過熱の解消)
6月中旬の高値1,800〜1,900円台から大幅反落し、熱狂の剥落が進んだ。プレミアムがはがれ、mNAVは1倍方向へ収斂した。
③ 希薄化懸念(MSワラント/増資)
株価上昇局面ではワラント活用が奏功したが、下落局面では希薄化が意識される。9/1の臨時総会で優先株発行規定などの定款変更が承認され、資本手段の転換が進む。
④ 負債・流動性・執行力
総負債や流動性の薄さはディスカウント要因となりやすい。加えて実行力に対する市場の目線は厳格化している。
市場の反応(株式・暗号資産)
ディスカウント出現は一部に「割安狙い」を惹起したが、大勢は慎重姿勢を維持した。暗号資産株全般の調整、BTCの軟調推移がセンチメントを冷やした。メタプラネットの「EV<BTC NAV」は国内外メディアでも大きく報じられ、デジタル資産トレジャリー株のバブル退潮を指摘する声が強まった。
SNS・個人投資家の動き
X上では造船太郎氏が「mNAV1倍割れ」を理由に40万株(約1.7億円)購入と投稿するなど、逆張りフローも見られたが、短期的な反転を保証するものではない。
経営の資本戦略(自社株買いと優先株)
mNAV<1では普通株発行は価値毀損的になり得るため、経営は自社株買い・優先株の選択肢を示唆。9/1臨時総会では発行可能株式総数の増加と種類株(優先株)創設を可決し、Phase IIの資本設計が整った。
自社株買いの位置づけ
上半期には5億円・最大28.6万株(約0.48%)の自社株買い方針を示しており、mNAV割れ局面では自己株取得の実行可否が最大の短期カタリストとなる。
永久型優先株の狙い
優先株により普通株の希薄化を抑えつつBTCを積み増す“防御的メカニズム”を構築する狙い。具体設計は今後の募集条件次第で、需給・コスト・既存株主リターンの配分が焦点となる。
見通しと注目点
BTCトレンド、優先株調達の成否、自社株買いの実施可否、IRの透明性、そしてmNAVの回復が短中期のモメンタムを決める。業績側では通期営業利益47億円の上方修正も発表済みで、ファンダメンタルズとの乖離縮小が鍵。
評価指標をめぐる論点(mNAVの限界)
NYDIGのグレッグ・チポラロ氏はmNAVを「不正確で誤解を招く」と批判し、使用中止を提言。負債・他事業・転換社債等を十分に反映しない単純指標であり、補助指標として扱うべきだとする。
アナリスト見解の分岐
Smartkarmaのマーク・チャドウィック氏は「デジタル資産トレジャリー株の下落はバブルのはじけた兆候」と指摘。一方、強気派はディスカウントを機会視する。市場は選別局面だ。
▽ FAQ
Q. mNAVはどの式?何が1割れを招いた?
A. mNAV=(時価総額+総負債)÷保有BTC時価。BTC反落、希薄化懸念、流動性など複合要因で10/14に1割れ。
Q. 現在の保有BTCと順位は?
A. 2025/10/1時点で30,823BTCで、公開企業第4位水準と報じられる。直近はmNAVが約0.89まで低下。
Q. 経営の資本政策は?
A. 臨時総会で優先株を可能化。mNAV<1では普通株発行抑制を示唆し、自社株買い等を検討する方針だ。
Q. 直近業績の見通しは?
A. 2025年通期の営業利益予想を47億円へ上方修正。BTCインカム等の収益寄与が拡大している。
Q. 投資家は何を見るべき?
A. BTC相場、優先株条件と調達成否、自社株買いの実行、mNAVの回復、IRの透明性を時系列で検証。
■ ニュース解説
10/14にmNAVが0.99、10/17に約0.89へ低下したため、EVが保有BTC価値を下回る割安状態が顕在化したが、一方でBTC反落・希薄化懸念・流動性要因が重なりプレミアム縮小が進んだ。
投資家の視点:短期はBTC次第と資本政策の実行(優先株条件の妥当性、自社株買いの有無)がモメンタムを左右。中期はmNAVを補助指標に留め、負債・他事業・希薄化を織り込む実質的なバリュエーションで選別を行うべきである。
※本稿は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。
(参考:メタプラネット)





