▽ 要約
増資:最大5億5,500万株を海外で公募、手取1,303億円。
資金使途:BTC購入1,238億円と収益事業の証拠金65億円。
希薄化:発行後は最大76.9%増の12.77億株、需給に注意。
投資家の関心は「希薄化の度合いと需給リスク」に尽きるため、メタプラネットのメタプラネット 大規模増資は価格決定と資金使途の透明性が判断軸となる。本稿は規模・日程・使途・既存ワラント対応を一次情報に基づき整理し、短期の需給と中期のBTC連動リスクを見通す手がかりを解説する。
今回の増資の骨子(規模・日程・価格決定)
最大5億5,500万株の海外募集で手取約1,303億円を確保するため、9/9〜11に終値の0.90〜1.00倍で価格決定され、払込は9/16〜18に設定される。
同社は普通株を最大5億5,500万株発行する。内訳は当初引受分1億8,000万株に加え、需要に応じた追加買取引受(上限3億7,500万株)で構成される。価格はブックビルディングで決定され、仮条件は決定日の終値×0.90〜1.00。申込単位は100株、受渡は払込翌営業日。主幹事はMorgan Stanley & Co. International plcとCantor Fitzgerald & Co.で、募集は海外(米国は144A適格機関投資家)で行う。臨時株主総会(9/1)では発行可能株式総数の増加も上程されている。
株式数の推移と希薄化インパクト
8/22基準で発行済は7.220億株から12.770億株へ76.9%増となる一方、8/26基準では12.947億株相当で約75%増となる。
会社資料の計算基準(8/22時点の7.220億株)では、全量発行で発行済は12.770億株に達する。他方、8/26に第20回ワラント行使で7.397億株へ増加済みであり、同基準で試算すると全量発行後は約12.947億株で、株数ベースの増加率は約75%となる。短期的には需給の重さが意識されやすい。
スケジュールの要点
価格決定は9/9〜11、払込は9/16〜18のため、その前後で需給の変動が発生しやすい。
期間中は価格決定に向けた需給調整が想定され、受渡日以降は新株の市場流入で出来高・板気配が変化しやすい。臨時株主総会の可決可否により最終発行株数の上限が変動しうる点も留意したい。
関連:「NFTの基礎知識」
資金使途―BTC購入とビットコイン・インカム事業
手取の約95%をBTC購入に、約5%をプット売りの証拠金に充てるため、BTC価格変動が企業価値に一層直結する。
手取概算は1,303.34億円で、BTC購入に1,238.18億円、ビットコイン・インカム事業(プットオプション売取引の証拠金)に65.16億円を充当。9〜10月にかけてBTC取得を進める計画で、8/25時点の保有は18,991BTC(時価約3,146億円)。BTC NAV拡大が1株当たりBTC数量増加を通じて企業価値評価に影響を与える構図だ。
既存プログラムの制御—ワラント行使停止と社債繰上償還
9/3〜9/30は第20〜22回ワラント行使を停止したため、新株増加ペースを抑えつつ、並行して第19回社債は累計210億円を繰上償還した。
第20回ワラントは8/14〜26にかけて275,000個行使(2,750万株交付)され、8/26の発行済は7.397億株となった。未行使残は第20回3,600万株相当、第21回・第22回はいずれも1億8,500万株相当が残存。行使停止は需給安定化の狙いがある。資金調達で発行した第19回普通社債(総額300億円)は、7/7に60億円、7/15に67.5億円、8/20に30億円、8/27に52.5億円を繰上償還し、累計210億円を返済、残高は90億円となった。
市場の初期反応と投資家が見るべき点
発表当日の終値は890円(+5.7%)となったため、短期は思惑先行も、価格決定の割引幅と停止解除後の需給に注意が必要となる。
増資自体は希薄化要因だが、ディスカウント幅は終値の0.90〜1.00倍で決まるため極端な希薄化価格ではない可能性がある。他方、停止期間終了後のワラント再開や新株の受渡後フローで需給悪化が再燃するリスクは残る。BTC価格のボラティリティが株価連動性を高める点にも留意したい。
▽ FAQ
Q. 今回の新株発行の規模は?
A. 普通株最大5億5,500万株。8/22基準で発行済は12.77億株へ、76.9%増となる見込み。
Q. 調達額と使途は?
A. 手取概算1,303.34億円。BTC購入1,238.18億円、インカム事業証拠金65.16億円に充当。
Q. 価格決定の日程と条件は?
A. 9/9〜11に終値の0.90〜1.00倍で決定。受渡は9/16〜18予定、申込単位100株。
Q. ワラント行使停止と残存状況は?
A. 第20〜22回を9/3〜9/30で停止。未行使は第20回3,600万株相当、第21・22回各1.85億株相当。
■ ニュース解説
海外公募で最大5.55億株を発行し手取1,303億円をBTCと収益事業に充当するため、9/3〜9/30はワラントを停止した一方で第19回社債は210億円繰上償還が進んだ。
投資家の視点:短期は価格決定前後と受渡直後の需給悪化に備え、ディスカウント幅・割当数量・停止解除後の行使動向を確認する。中期はBTC保有増によるNAV成長と1株当たりBTCの希薄化バランス、BTC価格の下落耐性(ヘッジ方針と証拠金管理)を点検する。
※本稿は投資助言ではありません。
(参考:みんかぶ)