▽ 要約
官報:10/10公告、12/25効力予定の無償減資
税務:中小法人優遇の活用余地が拡大
資産:BTC保有3万0823枚で戦略継続
資本:優先株と海外増資で柔軟な調達
投資家の疑問は「資本金1円のインパクトは何を意味するか」だが、結論は資本の“付け替え”で現金は減らず、将来の大型調達・税務効率化・資本政策の自由度を高める施策である。メタプラネット 資本金1円 減資を一次資料で読み解けば、誤解を避け投資判断に必要な要点が短時間で把握できるよう解説する。
今回の「資本金1円」減資で何が起きるか
現金流出や持株比率は変わらないため企業価値に直接影響はなく、債権者保護手続を経て12/25に効力が生じる予定である。
今回の減資は資本金約2,474億円をその他資本剰余金へ振替える無償減資で、発行済株式数・株主比率は不変。公告は10/10、異議申出は11/9まで、12/22の株主総会決議を経て12/25効力予定とされる。
会社側の狙い(PHASE II)
大型資金調達を見据えた資本構成の再設計であり、永久型優先株や海外公募と併用して希薄化管理と資本効率を両立させる。
資本金を抑え剰余金に付け替えることで、種類株・ワラント等の設計余地が広がる一方、優先株活用で議決権影響を限定しつつ大型調達が可能になる。
手続の実務
会社法に基づく株主総会特別決議と官報公告を経て、債権者保護手続完了後に登記する。
既存株主の権利は減資自体では変化せず、欠損填補や将来の配当余力確保といった“見た目の健全化”が副次的に進む。
税制・会計のポイント(誤解されやすい論点)
「中小法人」優遇の適用余地は広がるが、外形標準課税は近年の制度見直しにより一定の場合に継続課税となるため単純化できない。
資本金1億円以下では法人税の軽減税率(年800万円以下部分)や繰越欠損金控除の範囲が拡大しやすい。他方、令和6年度改正で前期に外形標準課税対象だった法人かつ払込資本(資本金+資本剰余金)が10億円超などの条件では対象外とならない場合がある。
繰越欠損金・軽減税率
中小法人は課税所得全額を上限に繰越欠損金を控除でき、年800万円以下の所得には軽減税率が適用される。
これにより黒字転換局面で実効税率が低下しやすく、キャッシュ創出に寄与しうる。
外形標準課税・均等割
資本金1億円超の法人に付加価値割・資本割が課されるが、23区の均等割は資本金区分と従業員数で年額が大きく変動する。
ただし最新の改正で「資本金を下げても付加価値・資本の規模が大きい場合」の継続課税ルールが導入され、恣意的な“外形回避”は制限される。
資本政策と市場(直近のエクイティ動向)
海外公募増資と優先株の枠組みで調達余力を一気に積み上げ、BTC保有拡大の原資に振り向けている。
2025年9月に海外募集で3.85億株・約2,129.05億円を調達、発行可能株式総数は9/1に27.23億株へ拡大。優先株発行規定も承認済みで、議決権影響を抑えた大型調達の布石を打った。
BTC保有・Phase II
9/22に5,268 BTCを追加し、10/1時点で保有は30,823 BTCに到達した。
Phase II「Bitcoin Platform」ではBTCインカム事業や米子会社設立、Bitcoin.jpドメイン取得など、保有にとどまらない収益化基盤を強化している。
株価の文脈
株価は6/19高値1,930円を付けた後、調達発表やボラティリティで調整している。
短期の値動きは減資そのものよりも、調達規模・希薄化見込み・BTC相場が主因となりやすい。
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過去事例と比較(国内外)
形式的な無償減資は国内で一般化し、2022〜2023年に「1億円以下」への減資企業は1,235社と前年から約3割増えた。
上場・非上場を問わず税制・組織再編・欠損補填を目的とした減資が増加。海外でも大規模損失時に一旦極小資本へ減らし、のちに増資で再建するスキームが用いられている。
同社の前例
2021年に当時のレッド・プラネット・ジャパンは資本金を1円へ減資しており、2023年にも同様の無償減資を実施した。
今回も基本構造は同じだが、規模は海外公募等で急拡大した資本金を“再び”1円に圧縮する点が特異である。
海外の極端例
台湾の新安東京海上産險は防疫保険損失を受けて資本金を3,000台湾元にまで縮小し、その後の増資で再建した。
「減資→増資」で財務をリセットする手法は各国で観察される。
▽ FAQ
Q. なぜ資本金を1円に?
A. 現金は減らさず区分を剰余金へ振替、将来の大型調達と中小法人優遇の活用を狙う(公告は2025-10-09、12-25効力予定)。
Q. いつ決議・効力発生?
A. 臨時株主総会は2025-12-22、効力発生日は2025-12-25の予定。異議申出期限は2025-11-09。
Q. 直近の調達は?
A. 2025-09の海外募集で3.85億株、約2,129.05億円。発行可能株式総数は27.23億株へ拡大。
Q. BTC保有は?
A. 2025-10-01時点で30,823 BTC。9/22に5,268 BTCを追加購入し、Phase IIで拡大継続。
Q. 株主への直接影響は?
A. 無償減資のため持株比率は不変だが、優先株等の活用次第で配当順位や意思決定への影響は生じうる。
■ ニュース解説
減資は公告(10/10)から異議期間・総会決議を経て12/25に効力発生するため現金や株数は変わらない一方で、優先株と海外公募を核にしたPhase IIの資本戦略を実行しやすくなる。
投資家の視点:希薄化・クーポン負担・BTC相場依存の三点リスクを織り込み、①調達実行速度と条件、②BTC保有の増減、③税制適用(外形標準課税の扱い含む)を定点観測したい。
※本稿は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。
(参考:メタプラネット)