▽ 要約
買増:775BTCで保有18,888BTCに達し、取得は約1,373億円。
指標:平均取得$102,653、NAV約$21.8億、BTC Yield YTD 480.2%。
財務:中間期は評価益計上で黒字化、希薄化と価格変動リスクは残存。
比較:StrategyやTesla等と対比し、規模差と資本戦略の違いを検討。
投資家が知りたいのは「今回の買い増しで何が変わったか」だ。メタプラネット 775BTC 追加購入により同社の保有は18,888BTCへ拡大し、取得原価は約19.4億ドル、現在価値は約21.8億ドル規模となった。背景にあるインフレ・円安環境、資金調達の仕組み、財務・株価への波及、そして米Strategy(旧MicroStrategy)等との違いを解説する。
775BTC追加購入の要点
今回の取得は平均約$120,006/BTCのため支出約93百万ドルとなり、累計18,888BTCで規模が一段拡大した。
主要指標(保有・原価・NAV)
累計取得原価は約19.4億ドル、平均取得単価は$102,653/BTCのため含み益が拡大し、直近価格約$117,543前提のNAVは約21.8億ドルに到達した。
同社の内部指標「BTC Yield」は年初来480.2%と示され、買付・時価・資本効率の複合効果を示すメトリクスとして運用されている。
購入履歴の加速(2024–2025)
2024年4月の初回取得(約97.85BTC)以降、2025年はゼロクーポン債・新株予約権を梃子に高頻度の買い増しが続いた。一連の大型取得(6/16の累計1万BTC到達、6/23に11,111BTC、6/26に12,345BTCなど)を経て、8/18の775BTCで18,888BTCに達した。
主な取得の抜粋(発表日/追加量/累計)
- 2024-04-23:+97.85/累計97.85
- 2024-12-23:+619.70/累計1,762
- 2025-03-31:+696/累計4,046
- 2025-05-12:+1,241/累計6,796
- 2025-05-19:+1,004/累計7,800
- 2025-06-02:+1,088/累計8,888
- 2025-06-16:+1,112/累計10,000
- 2025-06-23:+1,111/累計11,111
- 2025-06-26:+1,234/累計12,345
- 2025-07-07:+2,205/累計15,555
- 2025-08-12:+518/累計18,113
- 2025-08-18:+775/累計18,888
背景と調達スキーム
インフレ・円安で現金実質価値が目減りするため、同社は「デジタルゴールド」志向でBTCを準備資産化した。
マクロ環境(日本の物価動向)
2025年5月の全国CPI総合は前年比+3.5%、コアCPIは+3.7%に加速し、日銀は7月に2025年度コアCPI見通しを2.7%へ上方修正したため、円安・物価高に対する企業の価値保全ニーズが強まった。
資金調達(EVO FUND中心)
2025年はEVO FUND向けの無利息普通社債や新株予約権等で累計約350億円+1.21億ドル超を調達し、取得原資とした。一方で新株予約権行使による希薄化や社債償還負担の将来リスク管理が重要となる。
財務・市場インパクト
BTCの時価評価益が損益と自己資本を押し上げる一方、BTC相場に連動した業績・株価ボラティリティが増す。
業績(中間期)
2025年中間決算は、売上高21.16億円、営業利益14.09億円、経常利益105.65億円、純利益60.59億円と大幅黒字で、営業外収益にBTC評価益100.35億円を計上した。
株主基盤とプレミアム
株主数は2025年7月初旬に12.8万人規模へ拡大、BTC保有の将来価値に対するプレミアムが株価に反映されやすい構造となった。一方でBTC下落局面では株価が過度反応しやすく、投資家のリスク認識が要る。
市場インパクト(即時と中長期)
775BTC(約9,300万ドル)は時価総額から見れば小口で短期の価格影響は限定的だが、企業バランスシートへの恒常的需要の増加は流通BTCの拘束を通じ、中長期の需給タイト化要因となりうる。
類似企業との比較(Strategy等)
同じ「BTCトレジャリー」でも、調達規模・事業基盤・商品設計に差がある。
Strategy(旧MicroStrategy)
2025年に社名をStrategyへ変更し、優先株(STRK 8%、STRF 10%、STRD 10%等)とATM増資・転換社債を組み合わせてBTCを積み増し、保有は約62.9万BTCに達する。高利回り優先株の配当原資を市場調達に依存する側面があり、NAV超過の株式プレミアムが資本戦略の前提となる。
Tesla/Block/NEXON
Teslaは11,509BTCを維持し、Q2時点の時価は約12億ドル。Blockは8,692BTCを保有し、10-Qに保有・原価の詳細開示を行う。NEXONは2021年に1,717BTC(約1.1百億円)を取得したがその後は積極な買い増しは限定的で、各社の「集中」と「分散」の姿勢が異なる。
▽ FAQ
Q. 8月18日の購入はどのくらいの規模?
A. 775BTC(平均$120,006)で約1,373億円、累計18,888BTC。一次情報の開示に基づく数字だ。
Q. 累計取得原価と平均取得単価は?
A. 取得原価は約19.4億ドル、平均$102,653/BTC。直近価格で含み益状態にある。
Q. NAV(現在価値)の目安は?
A. 価格約$117,543前提で約21.8億ドル。BTC相場に連動して変動する。
Q. 調達は何で支えた?
A. EVO FUND向けのゼロクーポン社債や新株予約権で、2025年累計で約350億円+1.21億ドル超。
■ ニュース解説
775BTCの追加取得で累計18,888BTCとなり取得原価約19.4億ドルが積み上がったため、時価NAVは約21.8億ドル規模へ拡大した一方で、希薄化や価格下落時の評価損リスクも同時に高まった。
投資家の視点:短期はボラティリティ管理(ポジションサイズ、損益許容度、イベント日程)を重視し、中期は資本政策(希薄化ペース、社債償還能力、BTCカストディ体制)を点検したい。マクロ(物価・金利)とBTC需給の二軸で前提を更新し続けることが肝要だ。
※本稿は投資助言ではありません。
(参考:Metaplanet)