2022年8月29日、Meta(旧Facebook)は、Instagramで試していたNFTの投稿機能をFacebookにも広げると発表しました。ウォレットを一度つなげば、自分の持つNFTを両方のアプリに投稿できるという内容です。
旧版の記事はこの発表を「NFT業界がさらに盛り上がりそう」と紹介していましたが、機能はそれから半年ほどの2023年3月に終了が発表されました。この記事では、2022年5月の試験導入から終了までを時系列で整理し、旧版にあった分かりにくい記述を直したうえで、大手SNSとNFTの組み合わせから何が学べるのかを考えます。
2022年8月29日の発表内容
CoinDeskなどの報道によると、8月29日の発表のポイントは次のとおりです。
- Facebookへの拡大:Instagramに続いて、FacebookでもNFTを「デジタルコレクティブル」として投稿できるようになる。
- 相互投稿:ウォレットをどちらかのアプリに一度つなげば、同じNFTを両方で共有できる。
- 対応チェーン:イーサリアム、Polygon、Flowの三つ。
- 対応ウォレット:MetaMask、Coinbase Wallet、Rainbow、Trust Wallet、Dapper Walletなど。
投稿されたNFTには、作成者や所有者の情報が表示される仕組みでした。NFTを売買する機能ではなく、持っているNFTを見せるための機能だった点が重要です。
当時、この機能に期待が集まった理由は二つあります。一つは、NFTを持っていても見せる場所が少なかったことです。マーケットプレイスのページやTwitter(現X)のアイコン表示くらいしかなく、数十億人が使うSNSのフィードに作品を並べられることは、クリエイターにとって大きな宣伝の機会と受け止められました。
もう一つは、作成者の情報が表示される点です。他人の作品を勝手にNFTにして出品する行為が問題になっていたため、誰が作った作品なのかを示せることは、本物を見分ける手がかりになると期待されました。ただし、表示されるのはブロックチェーン上の記録にもとづく情報で、作品の権利関係まで保証するものではありませんでした。
旧版の記述をどう直すか
旧版には、「Flowブロックチェーン上で鋳造されたデジタルコレクションを、ETHまたはPolygonをサポートするウォレットから投稿できる」という文がありました。これは、対応する三つのチェーンの説明が混ざったものと考えられます。実際には、イーサリアム、Polygon、FlowのそれぞれのNFTを、対応するウォレットから投稿できるという仕組みでした。
また、旧版にあった「約2億9000万人のユーザー」「およそ200の作品を収集できる」という数字は、一次情報で確認できませんでした。Instagramでの機能が2022年8月に約100の国と地域へ広がったことは報じられていますが、日本がその対象に含まれていたかどうかは、今回確かめられませんでした。
旧版が触れていた決済サービス「Meta Pay」は、NFTの投稿機能とは別のサービスです。
試験導入から終了までの時系列
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2022年5月 | Instagramで、米国の一部のクリエイターと収集家を対象にNFTの投稿を試験導入 |
| 2022年8月上旬 | Instagramの機能を約100の国と地域に広げる |
| 2022年8月29日 | Facebookにも拡大し、両アプリでの相互投稿に対応 |
| 2022年9月末 | 米国のFacebookとInstagramのすべての利用者が機能を使えるようになる |
| 2022年11月 | 米国の一部のクリエイターが、Instagramの中からPolygon上でNFTを発行・販売できる試みを開始 |
| 2023年3月13日 | Metaのコマース・金融事業の責任者ステファン・カスリエル氏が、NFT機能を終えると発表 |
試験導入から終了の発表までは、1年に満たない期間でした。
なぜ終了したのか
カスリエル氏は、クリエイターや利用者、企業を支えるほかの方法に力を注ぐためと説明し、短尺動画のリールや、メッセージ機能、収益化の仕組みを挙げました。CoinDeskやTechCrunchは、このころMetaが大規模な人員削減や事業の絞り込みを進めていたことにも触れています。
2022年後半は、暗号資産とNFTの市場が大きく冷え込んだ時期でもあります。NFTを見せる機能は、NFTを持つ人が多く、話題性があるときには注目を集めますが、市場が縮むと利用も伸びにくくなります。巨大なSNSにとって、限られた利用者のための機能を維持する理由は薄れていったと考えられます。
なお、Metaは終了の発表の中で、Web3に取り組むクリエイターをほかの手段で支え続けるとも述べていました。
機能が終わってもNFTは消えない
SNSの投稿機能が終わっても、NFTそのものはブロックチェーン上に残り、持ち主のウォレットで管理され続けます。SNSはウォレットの中身を読み取って表示していただけで、NFTを預かっていたわけではないからです。
一方で、SNSの上に表示されていた作品の紹介や、フォロワーからの反応は、機能とともに見られなくなる可能性があります。NFTの「見せる場所」は、運営会社の方針しだいで変わりうるということです。
この点は、ブランドやゲームのNFTでも同じです。NFTの記録と、それを表示したり使ったりするサービスは別物で、後者は運営が続く限りでしか使えません。NFTの基本的な仕組みはNFTとは何かで詳しく説明しています。
SNSにウォレットをつなぐときの注意
NFTをSNSやほかのアプリに表示させるには、ウォレットを接続し、自分が持ち主であることを示すために署名を求められることがあります。所有の確認に使う署名は、それだけで資産が動くものではありませんが、偽のサイトが同じような画面で、資産の移動を許可させる署名を求めてくる手口もあります。
- 接続する前に、アクセスしているのが正しいアプリや公式サイトかを確かめる。
- 署名の画面に、トークンの移動や使用の許可といった文言が含まれていないか読む。
- 高額なNFTを入れたウォレットと、日常的に接続に使うウォレットを分ける。
- 使わなくなったサービスへの接続や許可は、ウォレットの設定から解除する。
シードフレーズの管理を含む基本は、ウォレットの安全対策の解説記事で確認できます。SNSに限らず、NFTを表示するだけのサービスが、シードフレーズや秘密鍵の入力を求めることはありません。入力を求められたら、その時点で操作をやめてください。
Metaの試みから読み取れること
2022年当時、Metaのような巨大なSNSがNFTに対応することは、NFTが一般の人に広がるきっかけになると期待されました。実際には、機能は1年足らずで終わり、SNSの上でNFTを見せる文化は定着しませんでした。
この経緯は、大手企業の参入の発表を、その技術や市場が長く続く証拠と受け取るのは早いということを示しています。企業は、市場の状況や自社の優先順位に合わせて、始めた機能を短期間で止めることがあります。NFTに関するニュースを見るときは、発表の大きさよりも、その機能を誰がどのくらい使い続けているかに目を向けると、実態をつかみやすくなります。
よくある質問
Q. 今もInstagramやFacebookにNFTを投稿できますか?
A. Metaは2023年3月13日にNFT機能を終えると発表しました。その後、同じ形の機能が再開されたという公式発表は確認できませんでした。
Q. 機能の終了で、投稿していたNFTはなくなりましたか?
A. NFTはブロックチェーン上に記録され、持ち主のウォレットで管理されているため、SNSの機能が終わってもNFTそのものはなくなりません。SNS上の表示が見られなくなるだけです。
Q. どのチェーンのNFTに対応していましたか?
A. イーサリアム、Polygon、Flowの三つです。MetaMaskやCoinbase Wallet、Dapper Walletなどのウォレットを接続して投稿する仕組みでした。
この記事の出典
- CoinDesk:Facebook Joins Meta's Instagram in Supporting NFTs(2022年8月29日)
- TechCrunch:All Facebook and Instagram users in the US can now share NFTs
- CoinDesk:Meta Will End Support for NFTs on Instagram, Facebook(2023年3月13日)
- TechCrunch:Meta winds down support for NFTs on Instagram and Facebook
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。




