▽ 要約
・MapleStory N は 2025 年 5 月 15 日に正式サービス開始
・ネイティブトークン NXPC は上場直後に高騰、6 月時点で 約1.32 USD
・サービスは東南アジア・中東など一部地域限定。日本・韓国・北米・EU は未解禁
・アイテムはすべて NFT 化、課金ショップ廃止で「プレイして得た資産」を取引可能
・ボット排除のため 6 千超アカウントを BAN。運営は不正対策を最優先
・モバイル版や UGC ツール Project MODN を含む拡張ロードマップを公開済み
■ MapleStory Nとは何か
「MapleStory N ブロックチェーン版」(以下 MS N)は、ネクソンが 20 年以上運営する 2D MMORPG 『メイプルストーリー』を Web3 化した公式派生作である。開発は同社の UAE 拠点子会社 Nexpace が担当し、Avalanche の専用サブネット「Henesys L1」を基盤に採用。アイテムの NFT 化とユーザー主導経済を軸に、報酬体験をアップデートすることがプロジェクトの理念だ。
■ ローンチの概要と目的
- 正式リリース日:2025 年 5 月 15 日
- 同時開始:NXPC トークン上場、NFT アイテムの鋳造(170 万点以上が初週でミント)
- 目的:
- アイテム供給を有限化しインフレを抑制
- UGC と取引市場による「プレイヤー主導メタバース」実現
- 従来の F2P+ガチャから「プレイで資産を得る」ビジネスモデルへの転換
当日はアクセス集中でサーバが不安定となり数時間の遅延を余儀なくされたが、安定化後は Avalanche 上で過去最大規模のオンチェーントラフィックを記録した。
■ サービス提供範囲と技術基盤
地域制限
現在プレイできるのは 東南アジア・中東・南米 など約 50 か国に限られ、日本・韓国・北米・EU は規制上の理由でアクセス不可。国内ファンは公式 SNS に解禁要望を寄せている。
プラットフォーム
- PC(Windows)版のみ。
- モバイル版は 2025 年内のクローズドテストを予告。
- UI は英語・韓国語・日本語ほか多言語対応だが、リージョンブロックは共通。
ブロックチェーン
Avalanche のサブネットを用いることでガス代ゼロ・高 TPS を実現。全アイテム取引と装備強化がオンチェーンで記録され、トレーサビリティを担保する。
■ プレイヤー体験とコミュニティの声
- ゲーム性:原作の横スクロールアクションと職業システムを継承しつつ、NFT ドロップによりレア獲得時の高揚感が増したとの評価。
- 収益性:ゲーム内通貨 NESO は 1 NXPC = 100 000 NESO の固定レートで交換可。6 月時点の NXPC は 約1.32 USD(FMCPay News, 2025/6/11)で推移し、小遣い程度の収益が現実的。
- 不満点:リージョン制限・初日のサーバダウン・ボット氾濫への不信感。
- 継続率:βテスト期のリテンションは 47〜54 %。初期ユーザー数は 50 万超と推定。
■ 経済設計とトークン動向
項目 | 内容 |
---|---|
ネイティブトークン | NXPC(最大供給 10 億枚、流通 1.75 億枚) |
ゲーム内通貨 | NESO(オンチェーン FT、NXPC と固定比率) |
NFT | 装備・アバター・素材など。種類ごとに発行上限を設定 |
マーケット | MSU 公式マーケット+外部 NFT 市場(OpenSea 等) |
バーン機構 | 強化・合成・Fusion/Fission で NXPC または NFT を焼却 |
価格推移 | 上場初値 0.54 USD → 初週高値 3.66 USD → 現在 1.32 USD |
価格は一時的な投機で上下するが、コミュニティ報酬に 80 % を割当てる配分設計で長期的なエコシステム拡大を狙う。
■ 課題とリスク
- 地域規制
- P2E 規制が厳しい韓国・日本ではサービス未展開。合法的なトークン流通モデルの策定が不可欠。
- ボット・不正行為
- サービス開始 2 週間で 6 503 アカウント BAN。検知精度と冤罪防止の両立が課題。
- トークン価値維持
- NXPC が暴落すればゲーム内経済が停滞、高騰すれば新規参入コストが上昇。価格安定策と透明な指標公開が求められる。
- スケーラビリティ
- フルオンチェーン設計のため、ユーザー急増時に TPS とサーバコストがボトルネック化する可能性。
■ ネクソンのロードマップと業界への影響
- 2025 H2:モバイル版クローズドテスト、Project MODN(UGC ツール)β公開
- 2026:SDK 提供開始、他 IP 連携タイトル発表
- 長期構想:MSU 上で複数ゲーム・DApp を接続し、NXPC を基軸とする「プレイヤー主導メタバース」を育成
大手パブリッシャーが自社 IP で本格的に Web3 へ踏み込んだケースは稀であり、MS N の成否は業界全体の指標となる。成功すれば他社も追随し、IP × ブロックチェーン市場が一気に拡大するだろう。
■ ニュースの解説
NXPC が主要取引所に上場して 1 か月、価格は初期バブルの沈静化後も 1 USD 超を維持しており、短期的な投機相場に留まらず実需が生まれている点はポジティブだ。また Avalanche サブネット利用でガス不要というユーザー体験は「Web3 を意識させない Web3」として評価が高い。一方、主要市場を封鎖したままではユーザー基盤が頭打ちになりかねず、今後のリージョン解禁時に規制適合型の経済モデルを示せるかが最大の焦点となる。ネクソンは 2025 年内にモバイル版を投入する計画で、クロスプラットフォームと UGC エコシステムが実装されれば、従来のブロックチェーンゲームとは一線を画すスケールメリットを得られる可能性が高い。企業としては、IP ビジネスの延長線上で NFT=公式 RMT 市場の整備という位置付けに成功すれば、新たな収益柱を確立し得る。本稿執筆時点で大型トラブルは解消されつつあり、初動としては合格点と言えるが、真価が問われるのは規模拡大フェーズ—すなわち 2026 年以降である。