▽ 要約
本格導入|年内にBTC・ETHを担保受け入れへ
仕組み|第三者保管で簿外管理、まず機関・富裕層向け
企業影響|他行追随で信用供与市場が拡大
規制整理|OCC/FRB緩和+GENIUS法で実装環境が整備
JPモルガンが2025-10-24にBTC・ETHを担保受け入れ計画を公表したため、規制緩和と技術基盤を背景に暗号資産担保の商用化が加速する。
JPモルガンの暗号資産担保受け入れ(2025-10-24)
年内にBTC・ETHを担保にしたローンを提供する方針が示され、第三者カストディ採用でグローバル展開すると報じられた。
JPモルガンは2025年中に、機関投資家・富裕層顧客を中心に、ビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)現物を担保としたドル建て与信を開始する。担保は同社バランスシート外で第三者カストディアンが預かり、必要時のみ担保権を実行する構造とされる。第1段階としては、2025年半ばに暗号資産ETF(例:BlackRockのIBIT)を担保に含めるスキームが報じられ、その後現物へ対象拡大するロードマップが示されてきた。
要点(時系列)
規制緩和・社内技術実証・市場採用の進展を経て受け入れが具体化した。
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 2023-10-11 | Onyx/TCNで、MMFトークン化担保の実取引を実証。 |
| 2025-03-07 | OCCが解釈書簡 IL 1183 を公表し、銀行の暗号資産カストディ等を再確認。事前同意制を実質撤回。 |
| 2025-04-24 | FRBなどが暗号資産関連業務に関する「事前承認」レターを撤回。 |
| 2025-06 | 暗号資産ETFを担保とする融資の標準提供が報じられる。 |
| 2025-10-24 | 現物BTC・ETHの担保受け入れ方針が報道。 |
背景(制度・産業・技術)
OCC・FRBのガイダンス見直しとGENIUS法成立で実装環境が整い、Onyx/TCNが担保モビリティを支える。
米OCCは2025-03-07付の解釈書簡1183で、銀行による暗号資産カストディや安定通貨関連業務を「安全健全の枠内で許容」と再確認し、従来の監督手続を整理した。続いてFRB/FDICも暗号資産業務の事前承認レター撤回を発表し、銀行の裁量余地が拡大した。2025-07-18には米初のデジタル資産連邦法GENIUS法が成立し、ステーブルコイン発行体の裏付資産・開示義務を明確化。技術面では、JPMのOnyx/TCNがMMFトークン化担保の即時移転を実証しており、暗号資産に限らず担保モビリティ基盤として機能する。
市場への影響(価格・流動性・フロー)
メガバンクの参入は担保としての信用補強となり、信用供与市場と流動性の層を厚くする。
米最大手の標準化は模倣・競争を誘発し、暗号資産を「眠れる資産」から「活用できる資産」へ転換する。2025年はBTCが$125k超の最高値を更新する局面もあり、機関の先物・オプション建玉やETP保有比率の増加と相まって、担保価値の利用可能性は高まった。一方で、価格急変時のマージンコールや清算の実務が重要になる。
論点とリスク(賛否の整理)
高ボラティリティ・流動性・カストディ依存を前提に、低LTVと頻繁評価で制御する必要がある。
暗号資産は短期で二桁%の変動があり、貸出比率(LTV)は先行例で40〜60%が一般的。清算は市場インパクトを抑える設計(分割処分、OTC活用、トリガー明確化)が不可欠。またバーゼル基準では無担保型暗号資産に1250%リスクウェイトが課され、銀行の直接保有は極めて資本効率が低い。第三者保管・簿外構造で規制適合を図る実務が鍵となる。
今後の注目点(時系列)
他行の追随、トークン化担保の拡張、規制のフォローアップに焦点が移る。
- 2025-2026:E*Trade等の小口チャネルでも暗号取引が拡大、与信との連携可能性。
- 2026前後:MMF/国債等トークン化担保の普及で、24/7の担保モビリティが進展。
- 2026以降:BCBS開示枠組・EU実装に沿った資本規制の微修正や上限見直しが議論。
関連:『米国ステーブルコイン規制(GENIUS法)の要点』
▽ FAQ
Q. JPモルガンはいつからBTC・ETHを担保にする?
A. 2025-10-24の報道で年内開始予定。まず機関・富裕層向けに第三者保管で提供。
Q. カストディは誰が担う?JPモルガンは現物を保有する?
A. 外部カストディアンが保管し、同行は簿外処理。デフォルト時のみ担保取得。
Q. 規制面での根拠は?
A. OCC解釈書簡1183(2025-03-07)とFRBの事前承認撤回(2025-04-24)、GENIUS法(2025-07-18)。
Q. LTVの目安と清算は?
A. 先例は40〜60%。低LTV・高頻度の再評価と分割清算で市場インパクトを抑制。
Q. 技術基盤は何か?
A. Onyx/TCNでMMFトークン化担保を実証済み。担保移転の即時性が強み。
■ ニュース解説
銀行監督当局の緩和とGENIUS法成立が追い風となったため、JPMの暗号資産担保受け入れは資本規制に配慮しつつ与信市場を広げうる。一方で高ボラティリティや清算実務の難度はなお高い。
投資家の視点:レバレッジ調達の選択肢が増える一方、担保価値急落時のマージン負担・清算条項・カストディ先リスクを契約で精査し、ヘアカットと流動性バッファを厚めに確保すべき。
※本稿は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。





