日本のステーブルコイン関連銘柄と株式市場

▽ 要約

ライセンス完了 2025年8月にJPYCが登録を取得。
実装インフラ Progmat CoinとDCJPYの商用化が進展。
株式インパクト 関連銘柄の物色と評価が上向き。
チェーン展開 JPYCはETH/AVAX/Polygonで発行。

「どの銘柄が恩恵を受けるのか」。答えは、日本のステーブルコイン関連銘柄のうち、発行・基盤・金融インフラの三層で明確な役割を持つ企業だ。2025年8月にJPYCが資金移動業者として登録され、今秋の発行が現実味を帯びた。規制と技術がそろい、株式市場ではテーマ化が加速する。本稿は最新事実に基づき、主要プロジェクトと注目企業を体系的に解説する。

制度整理:2023年法施行と発行主体

2023年6月の改正資金決済法で電子決済手段が定義され、銀行・信託・資金移動業者が発行できるようになったため、実装への制度障壁が下がった。

電子決済手段(ステーブルコイン)は法定通貨連動のデジタルマネーで、発行・流通・仲介に免許が必要となった。登録制度の始動により、交換事業(電子決済手段等取引業)や取扱い事業の枠組みが整い、金融機関やフィンテックが参入可能になった。

電子決済手段と預金トークンの違い

発行主体と法的位置づけが異なるため、ガバナンスや保護制度が変わる。電子決済手段は償還可能なステーブルコイン、預金トークンは銀行預金のトークン化であり、目的は同じ円建デジタル決済でも法制上の扱いが異なる。

主要プロジェクト:JPYC/Progmat Coin/DCJPY

JPYCが今秋の発行を見込む一方、Progmat Coinは信託型の標準化を進め、DCJPYは預金トークンとして商用ユースが立ち上がったため、多様な実装が同時並行で進む。

JPYC(資金移動業型)

1JPYC=1円で償還可能、裏付けは預貯金とJGB、Ethereum・Avalanche・Polygonで発行するため、企業・個人の円建オンチェーン決済に即時性と相互運用性が広がる。

  • 収益源は預託資産の利息を中心とするモデル。
  • 企業向けにはノーコード連携アダプター(ASTERIA Warp用)等の周辺エコシステムが整備中。

Progmat Coin(信託型)

三菱UFJ信託主導の発行管理基盤で、NTTデータ、みずほ信託、三井住友トラスト、SMBCなどが関与し標準化が進むため、発行・交換・決済の拡張性が高い。JPYC(信託型)の共同検討や貿易決済の実証も進む。

DCJPY(預金トークン)

デジタル通貨フォーラム発の預金トークンで、GMOあおぞらネット銀行が初号を担い、非化石証書の決済などB2B取引への実装が進んだため、企業決済での実効性が高い。

関連:日本初のJPYCと世界ステーブルコイン比較

株式市場インパクト:3つの投資テーマ

発行・提携、技術プラットフォーム、金融・インフラの三層で収益機会が広がるため、イベントと実装の進度に応じた銘柄選別が進む。

①発行・提携(未上場発行体の周辺)

未上場の発行主体に出資・協業する上場企業は、テーマ化で想定外の評価見直しが起きやすい。

  • アステリア(3853):JPYCへ出資。ノーコード連携アダプター開発を発表し、決済データを企業システムと直結。
  • TWOSTONE&Sons(7352):自社出資プロジェクト「TSSファンド」経由でJPYCに出資。
  • ユナイテッド(2497):JPYC出資を公表、Web3投資を拡大。
  • 電算システムHD(4072):JPYCを使ったコンビニ収納代行の実装を進行。
  • アイフル(8515):子会社ライフカードがJPYC Prepaidとの交換連携(Vプリカギフト)を展開。

②技術プロバイダー(ブロックチェーン/決済)

発行・償還・接続基盤への需要増で、SIや決済ベンダーの受注が立ち上がる。

  • シンプレクスHD(4373):JPYCの取引システムを構築。Ava Labs(Avalanche)と送金決済ネットワークの共同検証。
  • インタートレード(3747):持分法会社が電算システム向けステーブルコイン基盤のコンサル契約。
  • Speee(4499):Progmat基盤の活用でST・決済を推進、Datachainと相互運用も。
  • TIS(3626)SMBC×Ava Labs×Fireblocksの共同実証で技術を担うポジション。
  • KYC/AML:**SCSK(9719)**や日立ソリューションズ等のモニタリング/フィルタリングは需要増が見込まれる。

③金融機関・インフラ

メガバンクやネット銀行が実証・商用を進めることで、送金・有価証券決済などの手数料ビジネスに追い風。

  • MUFG(8306):三菱UFJ信託がProgmat Coinを主導、JPYC(信託型)共同検討。
  • SMBC(8316):Ava Labs・Fireblocks・TISと覚書、2025年度下期実証を計画。
  • みずほFG(8411):Project Pax(「ステーブルコイン・サンドイッチ」)で他行と連携。
  • 三井住友トラストHD(8309):Progmatへ出資、信託型発行に適性。
  • SBI HD(8473):子会社SBI VCトレードが国内初の電子決済手段等取引業者登録、USDC取扱い、RLUSD流通の覚書。
  • GMOインターネットG(9449)/あおぞら銀行(8304):NY州ライセンスのGYEN/ZUSD、国内はDCJPYで初号行に。

直近の市場反応と今後のカタリスト

2025年8月のJPYC登録報道後、テーマランキング上位入りと関連銘柄の急騰が確認されたため、発行開始・実証開始・大手参画が次の分岐点となる。

  • テーマ化:株式テーマで「ステーブルコイン」が上位に浮上。
  • 値動き例:アステリア(3853)は連日S高、インタートレード(3747)も持分会社の受注発表で急騰。
  • カタリスト
    1. JPYCの本番発行・償還(JPYC EX含む)開始、
    2. SMBCのAvalanche実証開始、
    3. Progmat Coinでの信託型発行案件の具体化、
    4. SBI VCトレード経由のUSDC/RLUSD等の流通拡大。

リスクと確認ポイント

制度対応やシステム安定性の要件が高いため、償還・分別管理・KYC/AMLの実装コストがマージンを圧迫し得る。

  • 法規制:登録・監督下でのオペ運用、監査・開示の充実が必須。
  • 技術:チェーン停止やブリッジ障害、ウォレットUXが普及の律速点。
  • 市場:発行残高の伸びと収益構造(主に金利収入)の相関、金利サイクルの変化。
  • 開示:裏付資産の運用方針、償還SLA、障害時オペの手順。

▽ FAQ

Q. JPYCはいつ稼働し、どのチェーンに対応しますか?
A. 2025年秋の開始予定。1JPYC=1円で償還、Ethereum・Avalanche・Polygonで提供。

Q. DCJPYとJPYCの法的位置づけの違いは?
A. DCJPYは銀行の預金トークン、JPYCは電子決済手段で、根拠法と保護体系が異なります。

Q. 直近の注目銘柄は?
A. アステリア(3853)・SBI(8473)・TIS(3626)・シンプレクスHD(4373)・Speee(4499)です。

Q. 次のカタリストは何ですか?
A. JPYC本番発行、SMBCのAvalanche実証、Progmat発行案件、USDC/RLUSD流通拡大です。

■ ニュース解説

2025年8月にJPYCが資金移動業者登録を完了したため、国内初の円建ステーブルコイン発行が具体化し、一方でProgmat・DCJPYも進捗していることから、株式市場では関連銘柄への物色が加速した。
2023年6月の法施行で発行枠組みが整備され、2025年8月にJPYCが登録を完了した。さらにSMBCはAvalancheでの実証を公表し、SBIは電子決済手段等取引業を取得した。円建デジタル決済やクロスボーダー送金の効率化需要、RWAや証券決済のDVP実装ニーズを背景に、発行・基盤・金融の三層で受注機会が拡大し、実証から商用移行の段階で収益寄与が顕在化しつつある。

投資家の視点:テーマ化の初動はボラが高いため、(1) 免許・実証のマイルストン、(2) 償還・裏付資産の運用方針、(3) 接続パートナー数とユースケース、(4) KYC/AML体制の成熟度を定点観測したい。銀行・信託・SIの三すくみで案件が増える局面では、受注残(バックログ)や披露目案件の質を重視し、過度な「連想買い」は避けるのが無難。

※本稿は投資助言ではありません。

(参考:JPYC,SMBC,三菱UFJ信託・Progmat・JPYC