▽ 要約
衣料:ANAP・マックハウス・スターシーズの導入が進展。
漸増:DAT公開企業は8社前後、24年以降増勢。
採掘:製造・電力と連動、余剰電力活用の実証も。
市場反応:株価は急騰と乱高下、リスク視点も必要。
企業が財務資産に暗号資産を組み込む動きが日本でも顕在化しており、日本 ビットコイン・トレジャリーはアパレル各社を起点に裾野が広がっている。結論として、日本は「限定的だが拡大中」で、マイニングや電力・蓄電池との連動も始まったため、事例横断で意義とリスクを整理する価値が高い。
アパレル3社の導入状況(ANAP/マックハウス/スターシーズ)
3社はいずれも業績立て直しを背景にBTC保有・調達を本格化させたため、資本政策と新規事業を同時進行する特徴がある。
ANAPホールディングス(3189)
国内初のBTC現物出資による第三者割当で約114億円を調達し約80億円をBTC払い込みとしたため、8月時点で保有は約913BTCに達した。
同社は「ビットコイントレジャリー」「トレーディング」「新ブランド」「決済・マイニング」の4本柱で本業との融合を掲げ、発表後に株価は大幅に上昇して注目を集めた。
マックハウス(7603)
投資・金融事業に本格参入し、当初最大17億円の暗号資産取得計画を示した後、マイニング大手ゼロフィールドと包括提携して「購入+採掘」の両輪に踏み切った。
その後、投資枠は40億円へ拡大され、BTC戦略を成長柱に据える姿勢を示した。
スターシーズ(3083)
アパレルから蓄電池インフラへ業態転換を進めつつ、9/2公表の第三者割当で約10.04億円をBTC取得に充当する計画を示し、インフレヘッジと財務強化を目的とした長期保有方針を掲げた。
日本上場企業のDAT採用と全体傾向
採用企業は十指規模だが2024年以降に増勢で、先行事例と株価反応が裾野拡大を後押しした。
主な採用例(抜粋・2025年時点)
導入目的や規模は多様で、トレジャリー専業・事業補完・運転資金の分散など機能が分かれる。
企業名 | 証券コード | 保有・取引量(BTC) | 時期 | 方針・備考 |
---|---|---|---|---|
メタプラネット | 3350 | 17,595 | 2025年7〜8月 | 2027年に21万BTC目標。「BTCトレジャリー専業」企業。 |
ネクソン | 3659 | 1,717 | 2021年4月 | 約1億ドルで取得、長期保有。 |
リミックスポイント | 3825 | 数百〜1,000規模(報道) | ― | 交換業「BITPoint」等の事業遂行上の保有。 |
ANAPホールディングス | 3189 | 約913 | 2025年8月公表 | アパレルからDATへ拡張。 |
コンヴァノ | 6574 | 80 → 164 | 2025年夏 | 中期計画で段階取得(最終21,000BTC目標)。 |
SBCメディカルG HD | NASDAQ:SBC | 5 → 66 | 2025年 | 取得拡大を開示。 |
バリュークリエイション | 9238 | 22.36(全売却) | 2025年8月 | 約5,200万円の売却益計上、のち一部再購入。 |
アジャイルメディア | 6573 | 約4.1 | 2025年7〜8月 | 段階取得。 |
マイニング/電力・蓄電池との連関
BTC保有は「自ら生み出す」「余剰電力を価値化する」動きと結びつき、収益源の多様化が進む。
マイニング参入の拡大
マックハウスはゼロフィールドと提携し、購入に加え採掘収益を柱化する方針へ転換した。一方、北紡(3409)は香港企業と合弁でKCSを設立し、機器製造・北米拠点・トレジャリー事業まで展開計画、イクヨ(7273)は国外委託と国内再エネ活用で月4BTC目標とする。
電力・蓄電池×DATの親和性
東京電力グループのアジャイルエナジーXは分散データセンターでBTCマイニングを用い、系統混雑緩和と需要創出の実証を進めた。蓄電池事業へ転換するスターシーズがBTC長期保有を掲げるなど、エネルギー資産とDATの相性が浮き彫りだ。
グローバル比較と日本の立ち位置
米国はStrategy(旧MicroStrategy)が最大級の企業保有者で牽引する一方、日本は中小型中心に拡大初期である。
米国の先行事例
Strategyは資本市場をテコに大規模なBTCエクスポージャーを形成し、コーポレート・トレジャリーの代表格として位置づく。
制度・会計の文脈
米国の受容拡大や上場商品の整備に対し、日本は段階的な緩和・制度整備を模索する局面で、採用は「限定的だが拡大中」と評価される。
市場反応とリスクの視点
発表直後の株価は急騰しやすいが、BTC相場との高い連動性ゆえに乱高下も顕著で、資本配分と開示の精度が試される。
短期の過熱と変動
ANAPはBTC建て増資や大量取得公表で1,770円まで急騰、マックハウスも投資・マイニング方針で急伸する一方、相場次第で急落局面もある。
本業との両立
DAT依存が強まると本業投資が後退しうるため、ポートフォリオ設計やESG整合、進捗開示の厳密さが市場の信認を左右する。慎重論も根強い。
▽ FAQ
Q. ANAPはどの程度ビットコインを調達・保有していますか?
A. 2025年6〜7月に114億円の増資で約80億円相当をBTC調達、8月公表で約913BTCを保有としています。
Q. マックハウスはどのようにDATを進めていますか?
A. 2025年6月に最大17億円購入方針、7月にゼロフィールドと提携しマイニング参入を発表しました。
Q. 日本の上場企業でBTCを保有する代表例は?
A. メタプラネット、ネクソン、リミックスポイント、ANAP、コンヴァノ、SBCメディカルなどが公表済みです。
Q. マイニングと電力・蓄電池事業の関係は?
A. 余剰電力の価値化や系統混雑緩和に寄与し得て、TEPCO系の実証や蓄電池×BTC保有の併走例が出ています。
Q. 海外はどこが先行?日本は遅れていますか?
A. 米国はStrategyが企業最大級の保有で先行、日本は中小型中心で増加中だがまだ初期段階です。
■ ニュース解説
採用事例が24年以降日本でも増え、再建や新規事業の文脈でDATが使われる一方で、株価の短期過熱と本業との資源配分への懸念も強まっている。
投資家の視点: ①一過性の株価テーマ化か持続的KPI(保有方針・取得原価・ヘッジ/レンディング)で運用しているか、②本業のROICと資本配分の整合、③マイニングや電力活用等の実需接続の妥当性、④IR開示(評価方法・リスク要因)の透明性を精査したい。
※本稿は投資助言ではありません。
(参考:PR TIMES)