HyperliquidのXPL超大規模清算事件

▽ 要約

キーファクト 8/26未明にXPLが急騰し清算連鎖が発生
プレマーケット XPLはTGE前に3倍レバの先物上場
ファンディング 年率1,200%観測でロング偏重化
エコシステム Binance施策とFDV拡大で資金集中

未上場のXPLがHyperliquidで急騰し清算が連鎖した「Hyperliquid XPL 清算事件」は、プレマーケット先物の脆弱性とレバレッジの破壊力を示したため、設計・時系列・資金調達率・FDVの乖離を検証し、XPLとは何かと併せて投資判断の勘所を解説する。

事件の全体像と時系列

短時間の大口買いと薄い板が重なったため、XPLは数分で倍以上の変動を記録し、ショートの強制清算が連鎖した。
8月22日にXPL-USDハイパープが上場し、最大3倍のレバレッジで取引が可能になった後、出来高と建玉が急増した。8月24~25日にかけ、オンチェーン監視では大口ウォレットのUSDC大量入金と3倍ロング構築が相次ぎ、総額は約499万USDCの初回に続き追加入金で累計が1,000万USDC規模に達したとの報告もある。未明の急上昇局面では逆張りショートの清算が連鎖し、仕掛けた大口は一部利確後も相当量のロングを維持したとみられる。
XPL先物価格は公募価格から大きく乖離して推移し、清算連鎖後も高値圏での乱高下が続いた。

XPLとは何か(Plasmaの概要とセール)

PlasmaはUSDT送金の無料化などステーブルコイン決済に特化したビットコイン系サイドチェーンで、2025年7月にXPLのパブリックセールを実施したため、TGE前から流動性期待が膨らんだ。
公募は1トークン0.05ドルで総供給の10%(1億枚)を販売、コミットは3.73億ドル超に達した。その後、ハイパープ上場直後の先物価格は0.40~0.53ドル帯で推移し、FDVは約45~51億ドルと公募時の想定を大幅に上回る評価が付いた。

先物設計(ハイパープ)と異常な資金調達率

ハイパープは外部スポット指数に頼らず、契約自身のマーク価格の移動平均に対する資金調達率で価格乖離を均すため、上昇バイアスが強いとロングの維持コストが急騰する。
XPL上場初期は需要がロングに極端に偏り、年率約1,200%の資金調達率が観測された。建玉は数千万ドル規模に積み上がり、出来高も数千万~1億ドルに達した。板が薄いプレマーケットでは、成行の大口約定が短時間で価格と清算閾値を次々に跳ばす構造的な脆弱性がある。

板薄・清算・価格乖離の力学(要点)

未上場ゆえ現物供給ゼロで売り手が限られるため、自己強化的に価格が上振れしやすい。ロング維持の高コストはショートのインセンティブになる一方、急騰時にはショートが先に吹き飛び連鎖清算が発生する。

市場インパクトと今後の注目点

プレマーケットの過熱とCEX連動の施策が重なったため、TGE前からFDVが実需と乖離し、現物上場時の価格収斂リスクが高まっている。
Binanceは8月20日にXPLエアドロップ権利付きUSDTロック商品を開始し、初回2.5億USDT枠は約1時間で満額、総枠は10億USDTに拡大された。こうした大規模キャンペーンは資金流入と期待を増幅する一方、先物側のボラティリティを高める。
ハイパープは操作耐性を高める設計だが、極端なオーダーフローには板厚の限界上、急騰・急落が起きうる。運営側が取引停止などの介入を行った報はなく、現行ルール下では市場原理として受容されている。

関連:Hyperliquid最新状況:取引高と収益性

▽ FAQ

Q. XPL清算事件はいつ何が起きた?
A. 2025年8月26日未明、XPL先物が短時間で急騰し、ショートの強制清算が連鎖した。

Q. XPLの公募条件と想定FDVは?
A. 2025年7月に$0.05で1億枚を販売。コミット3.73億ドル超で想定FDVは約5億ドル。

Q. XPLハイパープの仕様は?
A. 最大3倍レバレッジで、外部オラクルを使わず移動平均のマーク価格に対する資金調達で調整。

Q. 初期の資金調達率は?
A. ロング偏重で年率約1,200%が観測され、ロング維持コストが急騰した(8月22~23日)。

Q. Binanceの関連施策は?
A. 8/20開始のUSDTロック商品は2.5億USDT枠が約1時間で満額、総枠10億USDTに拡大。

■ ニュース解説

TGE前のXPLがハイパープで急騰したため清算連鎖が発生し、資金調達率1,200%やFDV拡大と相まってプレマーケット特有の過熱が顕在化した。背景に大口のポジション構築とCEX施策があり、現物上場時の価格収斂と規律設計への関心が高まった。
投資家の視点:①プレローンチ先物は板薄・清算閾値・ファンディングの三重リスクを同時管理する、②建玉と清算価格の距離・想定最大滑り・時間加重の資金調達負担を数値で可視化する、③イベント(TGE・ロック解除)前後はデルタと資金調達の同時最適化やヘッジ(先物・オプション・現物割当)で乖離収斂に備える、を一般論として推奨する。

※本稿は投資助言ではありません。

(参考:Hyperliquid,Binance,Ignas