Hyperliquid 10万BTCクジラの正体疑惑と時系列

▽ 要約

実名:分散型台帳上の調査がJin氏関与を示唆
時系列:8〜10月はBTC売り→ETH買い→空売り
建玉:10/10にUSDC8千万でBTC3,500枚を即時建て
危険:Hyperliquidで損失12.3億$、全体19億$清算

巨大な資金移動の実像は何か──本稿は「Hyperliquid 10万BTCクジラ」を、時系列・ブリッジ手法・相場影響の三点から俯瞰する。8〜9月のBTC→ETHローテ、10月のBTC売却と高レバショートが価格変動を増幅し、正体は未確定ながらGarrett Jin関与説が浮上した。Hyperunit経由のuBTC運用も確認でき、投資家にとっての留意点を解説する。

8〜10月の資金フローを時系列で読む

8〜9月にBTCからETHへの大型ローテが進み、10/8の3,000BTC入金と10/10の3,500BTCショートで短期的な下押しが強まった。
8月20日〜9月16日にかけて、当該アドレス群は3万枚超のBTCを売却しETHロングに回したと複数のオンチェーン監視が示す。10月8日にはHyperliquid(Hyperunit経由)へ3,000BTC(約3.639億ドル)を移し、USDC化が進んだ。10月10日には新たに8,000万USDCを証拠金投入し、約3,500BTC(約4.2億ドル)を約2分で空売り建て。主アドレスは約29,300BTC、関連11アドレス合計で46,765BTCを保有と整理されている。

Hyperunitで持ち込まれるBTC

Hyperliquidは直接のBTC入金に依存せず、Unit(Hyperunit)でL1のBTCをロック→uBTCを発行するため、ブリッジ経由の流入が常態化した。
Unitの手順は「ロック→ミント→利用→バーン→解放」で、uBTCはHyperliquid L1/HyperEVM内で取引・スワップに利用できる。ブリッジはGuardiansの署名と最終性ルールで担保され、引出し時はuBTCを焼却して元のBTCを解放する。

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正体仮説と反証を整理

ENS紐付けと資金フローからJin氏関与説が浮上した一方で、証拠の単純さを理由に慎重論も出ている。
オンチェーン研究者Eyeは、主要ENS「ereignis.eth」と「garrettjin.eth」および認証済みXアカウントの連接、取引所経由の資金流と大口建玉(BTCショート約7.35億ドル)を突き合わせて関与を示唆した。報道後、対象人物のSNSプロフィール変更も観測されたが、Quinten François氏らは「誘導の可能性」を指摘し、CZも追加検証の必要性に言及。現時点で本人の公式声明は確認されていない。

取引規模と市場インパクト

売却総額は約42.3億ドル規模に達し、10/11前後にはHyperliquidで12.3億ドル超の損失が発生するなど変動性が急拡大した。
8〜9月のBTC売り・ETH買いはETH相対強含みの一因となり、10月の高レバBTCショートは短期の下押し圧力を増幅。10/11前後の全体急変ではHyperliquidで約6,300ウォレットが損失、うち約1,000超が全損、全市場では24時間で約190億ドル規模の清算が報じられた。3月にもHyperliquidで4億〜5億ドル級ショートを巡る「クジラ狩り」事例があり、当局・プラットフォームともにレバレッジ管理の強化が続く。

レバレッジ管理とプラットフォーム対応

極端な建玉集中は清算連鎖を誘発し得るため、証拠金・段階的執行・上限レバの設計が鍵となる。
Hyperliquidは2025年3月の事案後、BTC最大40倍・ETH25倍へと上限レバを引き下げ、維持証拠金要件を引き上げた。オンチェーン可視性は抑止にも働くが、大口の行動は依然として相場の不安定化要因になり得る。

今後の注視点(BTC→ETHローテと監視強化)

ETHのステーキング需要や金利要因が背景にあるため、BTC→ETHローテは断続的に起こり得る。
長期ではBTC(価値保蔵)とETH(利回り資産)の棲み分けが進む可能性がある一方、オンチェーン監視の高度化により大口行動は即時に可視化される。匿名性と透明性のせめぎ合いは続き、プライバシー技術や監視強化の両面で対応が進むだろう。

▽ FAQ

Q. 10月8日の動きは?
A. 3,000BTC(約3.639億ドル)を入金・売却、主アドレス約29,300BTC、関連計46,765BTCが確認された。

Q. 10月10日のショート規模は?
A. 約8,000万USDC証拠金でBTC3,500枚(約4.2億ドル)を約2分で建玉、レバレッジは報道により幅がある。

Q. “正体”は確定?
A. ENSと資金フローからGarrett Jin関与説が浮上したが未確定、複数識者が更なる検証を要請。

Q. なぜHyperunitが必要?
A. L1資産をロックしuBTC等を発行してHyperliquidで使うためで、退出時に原資産を解放する。

Q. 清算はどれほど起きた?
A. Hyperliquidで12.3億ドル超、約6,300ウォレットが損失、全市場で約190億ドル規模と整理。

■ ニュース解説

10月上旬の相場変動で、当該クジラはBTC売り・ETH買いに続き大口ショートを構築したため、Hyperliquidを中心に清算が拡大した。
投資家の視点:情報の非対称性が縮小する一方、単一主体のレバ集中は尾を引く。高レバ回避、段階発注、清算価格と追証余力の常時モニタリング、ブリッジ・DEX特有リスクの分散が基本線。

※本稿は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。

(参考:Hyperliquid Docs,X(Lookonchain)