グーグル、TeraWulf出資14%に拡大

▽ 要約

ステーク拡大:担保追加でグーグルが約14%保有に到達
AI拡張:FluidstackがCB‑5(160MW)でLake Mariner増強
ゼロカーボン:二重345kV・液冷で高密度AIを再エネで運用
調達強化:2031年満期の転換社債を8.5億ドルで実施

AI需要の急騰で電力と計算資源の確保が競争力の核心となる中、グーグルはグーグル TeraWulf 14%出資 に踏み込み、Fluidstackの追加リース(CB‑5、160MW)を後押しした結果、担保総額は約32億ドルへ拡大した。AIデータセンターとゼロカーボン電源の垂直統合を組み合わせ、計算コストと環境要件を同時に満たす体制を前倒しで整える狙いがある。本稿は出資の設計、TeraWulfの技術・エネルギー特性、業界・市場への示唆を平易に解説する。

グーグルの出資背景と戦略的意図

今回の追加担保で流動性とガバナンスの両面を強化したため、AI/HPC向けキャパシティの立上げを遅滞なく資金面から支える狙いが明確になった。
TeraWulfはLake MarinerでFluidstack向けにAI最適化棟(CB‑3/4)を開発中で、CB‑5の160MW追加で契約IT負荷は約360MWへ拡大する。グーグルはCB‑5に対し14億ドルのインクリメンタル・バックストップを提供し、見返りに3,250万株のワラントを取得、同社の保有比率は約14%に上昇、担保総額は約32億ドルとなる。環境面では再生可能電源主体の運用方針と「完全脱炭素データセンター」を掲げる自社方針の整合が取れる。

資本設計—担保・ワラントのメカニズム

新規担保はプロジェクト融資の信用補完として機能するため、建設・立上げ局面の資本コストを低減しうる。
グーグルの1.4Bドル追加担保は既存1.8Bドルと合算して3.2Bドル規模となり、TeraWulfは希薄化を抑えつつ負債調達の条件改善を狙える。ワラントは3,250万株、先の8%相当(4,100万株)と合わせて保有は約14%に到達し、AI/HPCインフラ確保と環境目標の同時達成を支える枠組みだ。

環境・HPC戦略—「高密度×低炭素」

液冷・水冷を前提に高密度ワークロードを収容するため、送電・冷却・光ファイバを冗長化した。
Lake Marinerは二重345kV送電、持続可能な水冷、超低遅延の回線冗長を備え、CB‑5も同仕様で建設される。再エネ主体(主に水力・原子力)の地域電源を活用し、ハイパフォーマンス計算(HPC)を低炭素で運用する設計だ。

TeraWulfの企業・技術・エネルギー特性

ゼロ炭素電源と垂直統合で運用コストを抑えるため、電力・設備・オペレーションの一体最適を図る。
TeraWulf(NASDAQ: WULF)は2021年設立のデジタルインフラ企業で、ビットコインマイニングとHPCホスティングを両立する。旗艦のLake Mariner(NY西部)は最大750MWまでの拡張計画を持ち、2024年末時点で約195MWのマイニング設備を運用してきた。サイトは水力・原子力中心の「ほぼゼロ炭素」電源を特徴とし、AI向けの高密度棟(CB‑3〜CB‑5)で液冷を活用する。

効率・装置構成—J/THとEH/sの改善

装置刷新と運用最適化でエネルギー効率を底上げしたため、採算耐性が高まった。
同社はBitmain S21/S21 Pro等の最新ASICを積極導入し、加重平均で約19J/THまで効率を改善。2024年11月の実績では電力約0.051ドル/kWhで1BTC当たり約41,190ドルの電力費だった。2025年には自社ハッシュレートを二桁EH/s台に引き上げ、AIホスティングと並行してマイニングの競争力維持を図る。

電力・インフラ—冗長性と拡張余地

送電と伝送の冗長化により高負荷でも可用性を確保した。
Lake Marinerは二重345kVの送電冗長と100Gbps級の回線を備え、近傍の低炭素電源にアクセスできる。SEC資料・IR開示では、同拠点は近い将来500MW、送電増強で最大750MWへのスケールを見込む。

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業界トレンドと競争環境

半減期後の収益圧力を受け、マイナーのAI/HPC転用が加速したため、電力×冷却×不動産の総合力が差別化軸となった。
2024年半減期以降、複数の上場マイナーが電源・敷地・冷却資産をAI/HPCに転用し、長期リースで安定キャッシュフローを確保する動きが進む。TeraWulfはゼロ炭素電源・液冷・高圧受電の組み合わせで「AI対応のグリーンDC」という訴求を強め、クラウド大手との協業・競合が交錯する市場でポジションを高めている。

市場反応と資本政策

ビジネスモデルの多角化と信用補完の拡充を好感したため、株式・社債市場の受け手は広がった。
出資・拡張報道後、WULFは8/18に日中高値10.71ドルを付け、引けは9.38ドル。アナリスト目標は11〜14ドル帯に切り上がり、強気評価が優勢となった。資金面では当初の4億ドル計画を上回り、2031年満期・年1.00%の転換社債を8.5億ドルでプライシング、CAPEXと希薄化抑制の両立を図る。

▽ FAQ

Q. グーグルは最終的にいくら担保した?
A. 既存18億ドルに加え14億ドルを追加し、総額は約32億ドルとなった。

Q. Fluidstack契約とCB‑5の規模は?
A. 10年契約で当初約200MW、CB‑5の160MW加算で計約360MWのIT負荷。

Q. Lake Marinerの最大拡張余地は?
A. 送電増強を前提に最大750MW、二重345kVと液冷で高密度AIに対応。

Q. 転換社債の条件は?
A. 2031年満期・利率1.00%、初期転換価格約12.43ドルで8.5億ドルを発行。

Q. マイニングの電力効率は?
A. 2024年11月時点で約19J/TH、電力単価は約0.051ドル/kWhの開示がある。

■ ニュース解説

グーグルが追加担保とワラントでTeraWulfの資本基盤を厚くしたため、Lake MarinerのAI/HPC拡張(CB‑5、160MW)は資金面の不確実性が低下し、一方でゼロ炭素電源の活用により環境目標との整合も強まった。
投資家の視点:契約電力と冷却設計の“質”がリターンの源泉になりやすい局面では、①長期契約の信用補完、②送電・冷却の冗長性、③電源ミックスの炭素強度、④希薄化管理(ワラント・転換社債・カップドコール)を横断的に点検するのが定石である。

※本稿は投資助言ではありません。

(参考:TeraWulf,SEC Filing