▽ 要約
リーガル動向:米国GENIUS法案が1:1準備と利息禁止を明文化
香港モデル:港元限定の発行ライセンス制が正式施行
企業戦略:京東はサンドボックス試験完了、Tetherは米市場で試練
マーケット規模:年間取引30兆ドルの基盤整備が加速
「ステーブルコインは本当に安定するのか」。読者の疑問に対し、本稿の結論は「厳格な規制が鍵となり、市場拡大と淘汰が同時に進む」だ。2025年6月、米国上院はGENIUS法案を可決し、1:1準備義務など統一ルールを提示した。また香港では《ステーブルコイン条例》が5月に発効し、発行ライセンス制を導入。京東など合法派は事業加速の追い風を得る一方、Tetherのようなオフショア発行体は米市場での立ち位置が揺らぐ。記事を通じ、読者は規制がビジネス構造と投資機会をどう変えるかを理解できる。
1. 米国GENIUS法案――統一監督で市場を選別
結論:連邦レベルの枠組みがステーブルコインの信用格差を鮮明にする。
法案は①高流動性資産による1:1準備
②発行残高100億ドル超はOCC直轄
③アルゴリズム型全面禁止
④利息付与禁止を柱とする。
CircleやPayPal発行体は法的安定を確保し、機関マネー流入の条件を整えた。他方、Tetherは準備開示や監督受入れを迫られ、米国内シェア縮小リスクが高まる。(出典:ChainCatcher 2025‑06‑18)
1‑1. 利息禁止が迫るビジネスモデル転換
金利裁定だけに頼る収益構造は持続しない。利息禁止条項により、Circleは決済手数料・法人API課金へ軸足を移す必要がある。PayPalのPYUSDは年3.7%の保有報酬を打ち出すが、法案成立後は設計変更を余儀なくされる。(出典:HashKey Capital 2025‑06‑18)
2. 香港《ステーブルコイン条例》――港元ペッグで先行事例を創出
香港は限定通貨制で金融センターの差別化を図る。条例は港元と1:1で裏付ける発行体にライセンス取得を義務化し、6か月の猶予後に無許可広告を禁止する。
2‑1. 京東ステーブルコインのサンドボックス成果と展望
技術検証を完了し、2025年内の正式発行へ準備が整った。京東は2024年7月にHKMAサンドボックス入りし、越境決済や小売決済のテストを完了、第二段階でモバイルUXを確認した。正式ライセンス取得後は港元決済とEC物流の連携強化を掲げる。
3. グローバル競争――合法派とオフショア派の分水嶺
規制明確化は市場シェアを再編し、戦略の優劣を浮き彫りにする。CircleはNYSE上場効果を背景に米系銀行との協働を拡大。京東は香港モデルを足掛かりに、人民元ペッグの将来可能性を探る。一方、Tetherはサルバドル拠点化で規制逃避路線を維持するが、米ユーザーへの直接サービスは困難となる。
3‑1. 取引量30兆ドル時代のリスクと機会
巨大流動性は規制対応の優劣で収益配分が決まる。HashKey Capitalは年間オンチェーン取引量を30兆ドル超とし、今後も増加を予測する。(出典:HashKey Capital 2025‑06‑18)規制適合銘柄は資本流入を享受し、準備不透明な銘柄は市場排除が進む。
▽ FAQ
Q. GENIUS法案が禁止するステーブルコインの形式は?
A. 価格維持をプログラムに依存する「アルゴリズム型」は全面禁止。
Q. Tetherは米国市場でどう動く可能性?
A. サルバドル拠点を維持しつつ、米ユーザー直接向けでは新規発行を抑制する見通し。
Q. 京東ステーブルコインはいつ一般公開?
A. 2025年内に香港ライセンス取得後、正式発行される可能性が高い。
■ ニュース解説
米国と香港が同時期に厳格な枠組みを導入したことで、ステーブルコイン市場は「規制ドリブン成長」フェーズに入った。Circle・京東など準拠組は決済インフラ化で恩恵を受け、Tetherなどオフショア発行体は開示負担と市場アクセス制限の板挟みに直面する。投資家はライセンス保有銘柄と関連プラットフォーム企業に注目する一方、規制強化リスクを抱える高利回り型トークンの選別が急務となる。