▽要約
— 0%利息の転換社債17.5 億ドルを私募で発行予定
— 5月末に4,710 BTC(約5.1 億ドル)を取得し財務資産に組み入れ
— 2025年Q1は売上17%減でも4,480万ドル黒字に転換
— カナダ事業を売却しフランス子会社も年内売却へ
— 発表直後に株価は時間外で11%下落し調整基調
GameStop ビットコイン戦略の全体像
GameStop ビットコイン戦略は、現金同等物の一部を暗号資産に振り向けて企業価値を高める試みであり、マイクロストラテジー社のモデルを強く意識したものです。2025年3月に取締役会が「ビットコインを財務準備資産に採用する」と決議し、投資方針も改訂されました。
4,710 BTC取得の事実と背景
5月28日、同社は4,710 BTC(取得額約5億1,300万ドル)を購入したと正式発表しました。これはGameStop初のビットコイン取得であり、購入期間は5月3日〜6月10日とされています。
経営陣は「長期的な価値保存と分散投資」が目的と説明し、ビットコインの希少性・検証可能性を重視する姿勢を強調しています。
0%転換社債17.5 億ドル──追加調達の狙い
6月11日、GameStopは0.00%利息・2032年満期の転換社債17.5 億ドル(初回購入者向け追加枠2.5 億ドル)を私募形式で発行すると発表しました。社債は現金または株式で償還・転換可能で、用途は「投資方針に沿った投資および一般的企業目的」とされています。
市場では「新たなビットコイン取得原資になる」との見方が広がり、株式希薄化リスクへの懸念も浮上しました。
2025年Q1決算:売上減でも黒字転換
6月10日に開示された2025年度第1四半期決算によれば、売上高は7億3,240万ドルで前年同期比▲17%。一方、徹底したコスト削減と在庫圧縮により純利益は4,480万ドルの黒字へ転換しました。
営業損失は1,080万ドルに縮小し、調整後では2,750万ドルの黒字です。
また、四半期末時点で現金・現金同等物および有価証券は64億ドルまで増加しています。
国際事業の整理と店舗閉鎖
- カナダ撤退 — 5月7日付でカナダ子会社(185店舗)を起業家ステファン・テトロ氏に売却し、ブランドは「EB Games Canada」へ回帰。
- フランス子会社の売却方針 — 2月発表の通り、年内にフランス事業(Micromania)も売却予定。
- 米国内店舗 — 2024年に約600店を閉鎖し、2025年度も「相当数」の追加閉鎖を計画中。
株式市場の反応とボラティリティ
- BTC購入発表後 — プレマーケットで4.4%上昇後に材料出尽くしで12%急落。
- 社債発行発表後 — 通常取引で▲5%、時間外で▲10〜12%と続落し、25ドル台まで下落。
投資家は「暗号資産による成長期待」と「本業衰退リスク」の間で評価が分かれ、株価は調整局面にあります。
ニュースの解説
GameStop ビットコイン戦略は「店舗依存の既存ビジネスから、デジタル資産へと重心を移す大胆な再構築」と位置付けられます。
ポジティブ面では、
①無利息社債で調達した潤沢な資金を活用し、
②ビットコイン高騰時の含み益が自己資本を押し上げ得る点が挙げられます。
リスク面としては、
①暗号資産特有の価格変動による損益ブレ、
②株主価値を希薄化する潜在的株式増加、
③物理店舗縮小が進む中での収益源確立の遅れが指摘されます。
今後は社債発行が無事完了した場合の追加BTC取得タイミングと、Micromania売却交渉の行方が焦点となりそうです。投資家は「ビットコイン戦略が継続的な企業価値向上に寄与するか」を注視しており、ボラティリティ高止まりの展開が続く見通しです。