▽ 要約
マクロ 7月FOMCは据え置き、9対2で利下げ少数意見
コンセンサス 市場は9月利下げ8〜9割、予測は二極化
スピーチ FRB理事が決済革命とステーブルコインを評価
ルール GENIUS法で100%準備・優先弁済を明文化
利下げは「早期に来るのか、それとも来年以降か」。暗号資産の資金循環を左右する問いに対し、FRB利下げ見通しとステーブルコインを軸に一次情報を読み解くと、7月FOMCはインフレ警戒を優先しつつも労働市場の減速を意識する微妙な均衡が確認できる。ウォーラー理事の前向きな発言と新法GENIUSの成立で、デジタル資産の制度化も加速しつつある。
利下げ観測:モルガン・スタンレー vs 市場
市場は年内利下げを強く織り込む一方、モルガン・スタンレーは2026年まで開始困難とみるため、見通しは真逆だ。
モルガン・スタンレーは、関税による物価押し上げや失業率4.2%という低位安定を背景に、2025年は据え置きが基本線、利下げ開始は2026年の公算が大きいとする。米チーフエコノミストのマイケル・ゲーペン氏が発信を継続し、社内見解として8月も維持された。
一方で市場は、予測市場のPolymarketで「2025年中に利下げ」がYes約90%と高水準。7月雇用の弱さを受け、CME FedWatchでも「9月利下げ」確率が一時8〜9割に上昇した。
雇用指標の弱さが利下げ観測を後押し
7月の非農業部門雇用者数は+7.3万人、失業率は4.2%に上昇し、5・6月分は合計25.8万人の下方修正と、労働需給の鈍化がにじんだ。
インフレリスク vs 雇用リスク
議事録は、リスク認識が「インフレ上振れ>雇用下振れ」に傾く参加者が多数で、関税の持続効果を見極める必要があると整理した。
金利据え置き・2名の利下げ票
7月会合はFF金利4.25〜4.50%据え置き(9対2)。ボウマン、ウォーラー両氏が25bp利下げを主張し、理事2名の同時反対は1993年以来と報じられた。
FRB高官の暗号資産発言と規制の進展
ウォーラー理事は「決済は技術革命の只中」と述べ、ステーブルコインの国際ドル維持・拡張への潜在力を指摘、GENIUS法の成立を重要な一歩と評価したため、制度化は新段階に入った。
ウォーラー理事「恐れることはない」
同氏は、スマートコントラクトや分散型台帳による取引は本質的に従来決済と同じで「恐れることはない」と強調し、24/7送金などの利点を列挙した。
パウエルの「デジタルゴールド」発言
パウエル議長は2024年12月、ビットコインを「金のような、仮想・デジタルな資産」と位置付け、ドルと競合する通貨ではないとの認識を示した。
議事録にもステーブルコインの詳細議論
7月議事録は、ステーブルコイン拡大が銀行・金融政策運営に与え得る広範な影響や、裏付け資産のモニタリング必要性を記した。
国債需要と市場連動性(補足)
GENIUS法は100%準備と短期国債等での裏付けを義務付け、安定資産需要の押し上げを通じてドル・米国債への資金循環に波及する可能性がある。
▽ FAQ
Q. 2025年7月FOMCの結果は?
A. FF金利4.25〜4.50%を据え置き(9対2)。ボウマンとウォーラーが25bp利下げに賛成。
Q. モルガン・スタンレーの見通しは?
A. マイケル・ゲーペンは2025年は利下げ無し、開始は2026年の可能性と発信。
Q. 市場の織り込みはどうか?
A. PolymarketはYes約90%、CME FedWatchも9月利下げ確率が8〜9割局面。
Q. GENIUS法の要点は?
A. 100%準備と優先弁済を明文化。非銀発行体はOCCなどが監督。
Q. FRBの暗号資産評価は?
A. ウォーラー理事が決済革新を強調、BTCは「デジタルゴールド」との整理も浸透。
■ ニュース解説
7月議事録は物価リスク優位のため据え置き継続となり、雇用悪化懸念で2名が利下げを主張したため、市場は9月利下げを高確率で織り込んだ。米経済は緩やかな成長を維持しつつ、関税の物価波及やAI投資循環の偏りに注意が必要で、FOMC内のリスク評価は二極化している。一方で、ウォーラー理事の発言とGENIUS法により、ステーブルコインを中心とする決済イノベーションは公的議論の主流に入り、金融政策・国債需給との結び付きも無視できない段階だ。
投資家の視点:短期はCPI・雇用・9月会合の相互作用で変動が大きい。金利の「上振れ耐性/下振れ感応度」を資産ごとに見直し、BTCやETHなどリスク資産のエクスポージャーはドローダウン前提で段階調整。中期はGENIUS法を踏まえ、(i)米ドル建てステーブルコインの決済用途拡大、(ii)準備資産の国債需要、(iii)TradFiとの連動度上昇をシナリオ化しておくとよい。
※本稿は投資助言ではありません。
(参考:Federal Reserve Board,U.S. Bureau of Labor Statistics,The White House)