▽ 要約
マクロ:9/17利下げほぼ確実、50bp観測も浮上
雇用:若年失業率10.8%、6月は-1.3万人へ修正
株式:S&P500にHOOD追加、Strategy(MSTR)は見送り
規制:上院草案とSEC/CFTC協調で枠組み明確化
米雇用の急減速でFRB利下げ観測と暗号資産が同時進行し、9/17のFOMCで0.25%利下げはほぼ既定路線、50bpの議論も台頭した。S&P500ではロビンフッド採用、上院草案とSEC/CFTC協調で市場制度も動くため、短期のボラは高まるが中期の制度化は前進する。
9月FOMCの利下げ確度と論点
雇用の弱含みと当局発言を受け、9/16–17のFOMCは0.25%利下げ開始が有力となり、50bpは一部で議論される。
8月の雇用指標は弱く、市場は0.25%をほぼ織込み、BofAは9月・12月の各25bpと予想へ転換した。パウエル議長はインフレ再燃にも目配りし、ペースはデータ次第となる。
雇用の転調が政策変更を後押し
6月分の就業者は二度の修正で-1.3万人となったため、労働需要の鈍化が鮮明になった。
若年(16–24歳)失業率は7月に10.8%と前年から上昇し、家計側の痛みが拡大。8月分も低調で、利下げ開始の大義を強めた。
政治の圧力とコミュニケーション・リスク
トランプ大統領は「パウエルはいつも遅い」と公然と批判したため、FOMCの独立性と市場の期待管理にノイズが生じた。
ただし議長は「拙速でも遅すぎでもない」軌道を強調し、タリフや賃金の二次波及に注意を残した。
暗号資産・企業と規制の最新動向
制度面の見通しが改善する一方で、銘柄選別は続くため、株式とトークン市場の勝者は二極化する。
指数、立法、監督の3面で進展があった。
S&P500—HOODが採用、Strategy(MSTR)は見送り
指数委員会は9/22実施の定期入替でロビンフッド(HOOD)、アプラビン(APP)、エムコア(EME)を採用したため、期待されたStrategy(旧MicroStrategy、MSTR)は今回見送りとなった。
これにより、S&P500の暗号資産関連はコインベース(COIN、5月採用)とブロック(SQ、7月採用)にHOODを加えた3社体制。MSTRの再挑戦余地は残るが、指数は事業多角性・収益持続性を重視する姿勢を示した。
上院「デジタル資産市場構造」草案—“副次資産”とRegulation DA
配布形態が多様化するトークンに対し、投資契約の本体と切り分ける“副次資産(ancillary assets)”の概念を導入したため、登録ではなく継続開示で投資家保護を図る枠組みが提示された。
報酬・配布(例:ステーキング報酬や無償配布)についても、機能的配布としての開示項目を規定し、DePINのような利用型トークンの位置付けも整理する方向だ。一方で最終条文は審議で変更の可能性がある。
銀行規制の整合—「金融に属する活動」にステーキング等を明記
草案は銀行法上の「金融に属する活動」にカストディ、ノード運用、ステーキング、マーケットメイク等を列挙したため、銀行グループによるWeb3業務の参入経路が明確化される見込みである。
SEC/CFTCの協調—24/7市場・パーペチュアル・DeFi
SECとCFTCは9/29に共同ラウンドテーブルを開催し、24時間市場、イベント契約、ポートフォリオ証拠金、パーペチュアル契約の国内上場、DeFiの適用関係などの調和案を検討する。
既に両庁は協調を強めており、米国内での現物・派生商品の上場経路が段階的に整備される見通しだ。
ソラナの大型トレジャリー構想—サマニ氏が会長就任へ
マルチコインのカイル・サマニ氏が、ギャラクシー・デジタルとジャンプ・クリプトと連携したソラナ中心のデジタル資産トレジャリー(DAT)構想の会長に就く見通しが報じられた。
目標規模は10億ドルで、既存の上場会社買収を通じて設立する計画とされる。実現すればUpexiを上回るソラナ系最大級のトレジャリー主体となる。
トランプ家の暗号資産関与と市場心理
エリック・トランプ氏が「暗号資産はインターネットより速く成長」と述べ、ナスダック上場のAmerican Bitcoin(ABTC)に深く関与する動きが注目を集めた。
ABTCは上場初日から大商いとなり、同氏らの持分評価額が十億ドル規模に達したとの報。強気発言は市場心理を刺激するが、政策・倫理面の波及にも留意が要る。
▽ FAQ
Q. 9月FOMCでの利下げ確率は?
A. CMEではほぼ確実視、0.50%は約10–16%が示唆。日時は9/16–17です。
Q. 雇用の下方修正はどの程度深刻?
A. BLS確報で2025年6月が-1.3万人に修正され、景気減速シグナルと受け止められています。
Q. S&P500の暗号資産関連は何社?
A. COIN・SQにHOODが加わり3社。MSTR(Strategy)は今回は見送りです(9/22実施)。
Q. 上院草案は何が新しい?
A. 副次資産とRegulation DAで登録より継続開示を重視し、機能的配布・ステーキング等の扱いを明確化します。
Q. SEC/CFTCの議題は?
A. 24/7取引、予想市場、パーペチュアル、DeFi、証拠金統一などの規制調和を9/29に協議します。
■ ニュース解説
9/16–17のFOMCで25bp利下げ観測が強く、50bpの思惑も浮上している。若年失業率10.8%や6月雇用のマイナス修正で需要冷え込みが鮮明となり、S&P500の採用はHOOD、上院草案とSEC/CFTC協調で米市場の受け皿整備が加速している。
投資家の視点:
(1) マクロ—ドットと会見のガイダンスに注目。50bpはテールとして想定し、期間リスクとクレジットβを段階調整。
(2) エクイティ—暗号資産関連は規制ベータより収益持続性/多角性に評価軸が移行。指数イベントは流動性・リバランス需給を活用。
(3) クリプト—政策期待で先行上昇しやすいが、SEC/CFTC協調は即解禁ではなく段階制。パーペチュアルや24/7上場は条件付き。
※本稿は投資助言ではありません。
(参考:連邦準備制度理事会(FRB),米労働統計局(BLS),S&P Dow Jones Indices)