イーサリアムが時価総額でアリババ超え:ステーキングブームと主要プロトコルの最新動向

【要約】
・イーサリアム(ETH)の時価総額がアリババを超え、世界資産ランキング39位に浮上。
直近の強い価格上昇が投資家心理を大きく改善し、ETHのステーキング分野に資金が流入。
・米国や香港での現物ETFにおけるステーキング機能への期待が市場の回復を後押し。
・LidoやEigenLayerなど主要プロトコルが技術アップデートやガバナンスを進め、TVL(総ロック資産)とトークン価格が軒並み上昇。

イーサリアムの時価総額がアリババ超え、世界39位に浮上

仮想通貨データサイトの8marketcapによると、イーサリアム(ETH)の時価総額は約3,042.6億ドルに達し、中国の大手企業アリババの約3,037.2億ドルを上回りました。この結果、イーサリアムは世界の資産時価総額ランキングで39位に浮上し、暗号資産分野だけでなく、グローバルな金融市場においても注目を集めています。

5月に入り、イーサリアムの価格は大きく反発しました。ある集計では、5月12日時点で2521ドル付近まで上昇し、過去7日間で40.4%もの伸びを示しています。月間リターンは約39.53%に達し、2025年以降の最高水準となりました。また、オンチェーンデータによると、この期間にイーサリアムエコシステムに流入した資金は約120億ドル、純流入額は約49億ドルに上るとされ、投資マネーの集中が顕著に表れています。

現物ETFのステーキング機能への期待感が高まる

この上昇には複数の要因が挙げられますが、その一つが米国や香港など規制当局の動向です。特に、SEC(米国証券取引委員会)はイーサリアムなどの暗号資産に対するETF申請を審議中であり、プロバイダー各社は「現物ETFにステーキング機能を組み込みたい」という要望を繰り返し表明しています。

たとえば、大手運用会社グレイスケール(Grayscale)は、イーサリアムのETFでステーキングが認められれば、投資家が追加の利回りを得られると主張。さらに資産運用大手ブラックロック(BlackRock)も、SEC担当者との会合でステーキングやオプション取引を含むETFの可能性を議論したことが明らかになりました。一方、香港証券先物委員会(SFC)は4月にステーキングを認可する新指針を発表し、イーサリアム現物ETFが実際にステーキングを実装する道筋を示しています。こうした動向が市場参加者の期待感を高め、イーサリアム相場の回復とエコシステム全体の活性化を後押ししているのです。

ステーキング市場が急拡大:主要プロトコルの現況

イーサリアムの強い反発を背景に、ステーキングや再ステーキングに特化したプロトコルも大きく注目を集めています。DeFiLlamaのデータでは、イーサリアム関連のステーキングTVLが5月に入り顕著に上昇し、全体で341.1億ドルに達しました。さらに再ステーキングのTVLも128.5億ドルと、いずれも1カ月で50%を超える増加率を示しています。

1. Lido:TVLが約229.3億ドルに急伸

流動性ステーキング最大手のLidoは、TVLが229.3億ドルにのぼり、1カ月で約57.5%増加しました。ガバナンス面でも活発に活動しており、新たな投票制度やV3テストネットを導入。ユーザーが柔軟にステーキング戦略を組めるよう改良を進めています。また、オラクル運営で一部問題があったものの、Lido DAOが即座に緊急提案を可決し、システム安全性を確保した点も評価されました。

2. EigenLayer:再ステーキング首位の座を維持

EigenLayerは再ステーキング領域をリードし、TVLは113.6億ドルに成長。Slashing(ペナルティ)機能やRedistribution(再分配)機能など、新技術を積極的に導入しており、複雑なユースケースへの対応力を高めています。開発者コミュニティとの連携を深めることで、イーサリアムエコシステム内での存在感をさらに拡大しています。

3. Rocket Pool:ノード運営を促進しTVL拡大

Rocket PoolのTVLは17.4億ドルで、1カ月で約56.3%上昇。ガバナンスやDeFiとの連携を積極的に進め、rETHの採用拡大にも注力しています。コミュニティ通話でのDAO議論や報酬分配施策によってノード運営者を増やし、堅調にステーキング基盤を拡充しました。

4. Symbiotic:A輪資金調達で評価高まる

Symbioticはモジュール型の再ステーキングプロトコルとして注目され、TVLは10.9億ドルまで成長。4月に2,900万ドルのA輪資金調達を実施し、複数の大手ベンチャーキャピタルの支持を獲得。さらなる製品開発やエコシステム拡大に向けた動きを加速させています。

5. SSV Network:バリデータ数10万突破で存在感

SSV NetworkのTVLは89億ドル超に達し、アクティブバリデータが10万件を突破。5月初旬にはSSV 2.0テストネットも稼働し、分散型バリデーション技術(bApps)の導入による安全性強化やコスト削減を実現。さらなる分散性を追求しながら、高い利回りを提供するプロトコルとして注目を集めています。

ニュースの解説

今回のイーサリアム(ETH)の大幅な値上がりと時価総額ランキングの上昇は、ステーキング市場の活性化に直接的な影響を与えています。特に、現物ETFとステーキングの組み合わせが米国・香港の両市場で注目されることで、投資家の資金流入が続く可能性が高まり、主要プロトコルの技術開発やガバナンス改革にも追い風となっています。規制環境やETFの認可プロセス次第ではあるものの、イーサリアムを中心としたステーキングエコシステムは、今後もさらに拡大する兆しを示しているといえるでしょう。