8月12日:ETH現物ETF資金流入

▽ 要約

イーサリアムETF 週間+3.27億ドル、全9本が純流入
デリバティブ Borosが資金費率のトークン化を実装
クロスチェーン LayerZeroがStargate買収提案
ガバナンス Uniswap・Lidoで制度設計が前進

投資マネーの重心はどこに向かうのか――8月第2週はイーサリアム現物ETFへの資金流入が継続し、イーサリアム現物ETF資金流入を軸にDeFiの金利・ブリッジ・ガバナンスの三領域で前進が目立った。読者は本稿で、需給の変化点と制度面のアップデートを短時間で把握できる。

ETH現物ETF:流入継続と需給の転換

資金が9本全てのETFに入ったため、短期のテクニカルな売り圧を吸収しつつ、ミドルタームでETHの需給改善が進んだ。
週次では8月4〜8日に約3.27億ドル流入、FidelityのFETHが約1.09億ドル、BlackRockのETHAが約1.05億ドルで牽引した。累計純流入は約98億ドル、純資産総額は約233.8億ドルとなり、時価総額比で約4.8%に到達した。日次でも複数日でプラスが続き、ネットでの差し引きは機関マネーの回帰を示す。
一方、ビットコイン現物ETFは同週+2.47億ドルで、IBITが+1.89億ドル、BITBが+6,226万ドル、FBTCは−5,518万ドルとまちまちだった。BTCのETF保有比率は約6.5%に達し、現物市場との相互作用が一段と強まっている。

機関流入の背景—質押・アップグレード・ネットワーク成長

ステーキング参加の増加や次期アップグレード見通し、現物ETFの「長期保有バイアス」が重なったため、ボラティリティ上昇局面でも下押し圧力は限定された。一方でレバレッジ比率の高止まりや取引所への一時的な流入が増える場面では、短期の急変動リスクも残る。

ビットコインの相場位置

ビットコインは時価総額でアマゾンを再度上回り、世界資産ランキング6位圏に浮上した。ETFネットフローが改善する中で、期近は史上高値に迫る一方、イベント通過後の値動きには注意が必要だ。

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DeFi金利の新潮流:Borosが資金費率をオンチェーン化

永続先物の資金費率をトークン化したため、相場の凸凹な金利リスクをオンチェーンでヘッジ・取引できるようになった。
Pendle開発の新プロダクト「Boros」は、資金費率を「Yield Units(YU)」として期間限定の収益権に変換し、固定・変動のスワップ取引を可能にした。資金費率に依存するデルタニュートラル戦略や基差取引の安定化に寄与し、vePENDLEへの手数料分配によりトークン価値の獲得経路も拡張する。初期は建玉上限やレバレッジを抑えた運用で、セーフティを優先する設計だ。

意義—デリバティブ市場の空白を埋める

これまでオンチェーンで不十分だった「金利(資金費率)」のヘッジ手段が整ったため、CEX由来のボラティリティや負の資金費率局面に対する防波堤が立てられる。一方で、流動性の厚みや価格発見の安定性は立ち上がり段階に依存し、プロダクトの拡張とともに改善が期待される。

レイヤー間の再編:LayerZeroのStargate買収提案

運営とトークン設計を一本化するため、ブリッジとメッセージングの垂直統合が進む見取り図となった。
LayerZero FoundationはStargateおよびSTGトークンの買収を提案し、1.1億ドル規模での統合案を提示。STGは停止し、1 STG=0.08634 ZROでの交換案、Stargateの財団傘下入りとDAO解散が想定される。ユーザーは交換期間・比率・税務の3点を確認し、リスク管理上は移行前後の流動性とブリッジ経路の変更点を把握したい。

ユーザーおよびエコシステムへの影響

流動性の集約により手数料最適化やサポート窓口の一元化が進む一方、DAO解散によるガバナンス縮小の副作用や競争環境への影響は注視が必要だ。

ガバナンスと制度設計:Uniswap/Lido/Solana

手数料還元・財庫運用・ブロック構築の三題で、合規性と透明性の設計が次段階へ進んだ。
Uniswap FoundationはWyomingの「DUNA」枠組みでDAOの法務・税務基盤を整備し、過去分の税務・法務費用として約1,650万ドル相当のUNIを想定する計画を提案。プロトコル手数料の有効化に向け、収受主体の整理が進む。
Lidoでは、約1.45億ドル相当の流動資産(stETH含む)をもとに、相場や財庫水準に応じてLDO回購を動的実行する案が討議中。回購・保留の比率や焼却の有無など詳細設計が焦点となる。
SolanaではJito陣営がTEEを用いた「BAM」によるブロック構築の選択肢を提示。順序制御や失敗トランザクション抑制など、MEV耐性と実務効率を高める設計が議論されている。

早見—何が変わるのか

Uniswapは費用受け皿の透明化でプロトコル手数料実装の「前提」を整え、Lidoは財庫からの価値還元設計を詰め、Solanaは実装選択肢の拡張でインフラの信頼性と公平性の両立を狙う。

マクロ視点:BTC時価総額と政策ドライバー

ETF保有比率上昇のため需給連関が強まり、政策・金利観測が価格に波及しやすい地合いが続く。
ビットコインは時価総額でアマゾンを再び上回り世界6位圏に浮上。米国ではホワイトハウス経済顧問委員会(CEA)出身のStephen Miran氏がFRB理事に指名され、任期は2026年1月末までの暫定。利下げ観測やドルの方向性は暗号資産のリスク選好に影響し、ETF市場を介して現物需給へ伝播しやすい。

▽ FAQ

Q. ETH現物ETFの資金流入は市場にどう影響?
A. 2025年8月第2週の+3.27億ドルは需給を改善し、ETHのボラでもミドル期の下押し圧を緩和します。

Q. Borosで投資家は何ができる?
A. 資金費率をYUとして売買し、ETH・BTCの永続先物の金利リスクをオンチェーンで固定化・ヘッジ可能です。

Q. LayerZeroの買収提案でSTG保有者は?
A. 1 STG=0.08634 ZROでの交換案が提示。交換期間・税務と流動性移行の手順確認が必要です。

Q. UniswapのDUNAはUNI保有者に配当?
A. 収入の直接分配は想定されず、DAOの税務・法務対応と手数料実装の実務基盤整備が主眼です。

■ ニュース解説

ETF資金流入の継続でETHの需給は改善したため、ペンデュルのBorosが金利ヘッジの空白を埋める一方で、LayerZeroの買収提案やUniswap・Lidoの制度整備が中期の資本効率に波及する。
投資家の視点:短期はイベントドリブンの上下に備え、ETFフロー・資金費率・ガバナンス投票の3点をモニター。中期は金利ヘッジ手段の普及とプロトコル収益設計の成熟が、ボラ低下と割引率低下の両面からバリュエーションに寄与し得る。

※本稿は投資助言ではありません。

(参考:Lido Governance Forum,Pendle Docs / Announcement,The Block