▽ 要約
価格:8か月ぶりに4,000ドル、年初来+25%・前年比+112%。
上場投資信託:米現物ETH ETFの累計純流入は約95.9億ドル。
企業:企業のETH国庫保有が急増、966,304 ETHに。
規制:米証券取引委員会の流動性ステーキング明確化で関連銘柄高。
イーサリアムは8カ月ぶりに4000ドルを回復、背景には米現物ETFへの資金流入と上場企業のETH財務戦略の拡大があるため、史上高値との距離とリスクを含めて簡潔にお伝えします。
上昇の背景:ETF資金と企業トレジャリー
ETFの純流入再加速と国庫保有の拡大が同時進行したため、需給がタイト化して価格は年初来高値圏まで上昇した。
米現物ETH ETFは7月以降プラス転換が目立ち、7/1〜7/22だけで+36億ドルの純流入、累計では約95.9億ドルに達した。一方で8/4には過去最大▲4.65億ドルの単日流出も観測され、短期フローは変動が大きい。
企業サイドでは、ETHを財務資産として保有する「トレジャリー企業」が増加。ロイターは7月末時点で企業財務のETH残高が966,304 ETH(約35億ドル)と報じ、BitMineやGameSquareなどの動きに加え、SharpLinkは追加調達で保有拡大を表明した。香港IVD Medicalは初回で5,190 ETH購入を公告している。
SECの“流動性ステーキング”明確化が追い風となり、Lido(LDO)やETHFI、主要L2(Optimism/Blast/Mantle)も連れ高となったとの報道が相次いだ。これにより、従来DeFi利回りを敬遠しがちだった機関投資家の参入障壁が下がったとの見方が広がる。
最高値との距離と市場環境の“違い”
USD建てでは依然ATH未満だが、円建てでは過去に最高値更新実績があり、参加主体と制度環境が当時と異なるため上昇の質も違う。
ETHのUSD建て過去最高値は約4,866ドル(2021年11月)で、8/8時点の4,0xxドルは約17%下。いっぽう円建ては2024年5月時点で60.8万円の史上高値を更新済みで、為替を通じた見え方の差がある。ネットワーク面ではPoS移行・EIP-1559焼却により、利用活況時に実質デフレ局面が生じ得る構造が定着した。
BTC・アルトとの相対
直近はBTCが横ばいの中でETHが上伸し、ETH/BTC比は「この1カ月で+42%」近く上昇との観測もある。XRPやSOL、DOGEなどの主要アルトも追随し、広範な資金ローテーションが示唆される。
企業トレジャリーの実像:規模・代表例・論点
SharpLinkは2億ドルの直接増資を公表しETH保有の増強へ、BitMineやCoinbase、Bit Digitalなどが主要保有者として挙がる。一部指標ではBMNR 83万+ETH、SBET 52万+ETHとの集計もあるが、開示基準やオンチェーン推計の差に留意が必要だ。
規模拡大の論点は三つ。①資金調達とボラティリティの管理(希薄化・レバレッジの是非)、②会計・税務(ステーキング報酬の扱い、保管・カストディ義務)、③規制と投資家保護である。ロイターはステーキング税務やカストディの取扱いが未だ整理途上と指摘し、過度な熱狂に対する警戒感も伝えている。
一方、スタンチャートは8月、「ETFとトレジャリー企業は6月以降それぞれ供給の1.6%を買い付けた」と分析し、トレジャリー株はETFより割安で“投資妙味大”とする見方も提示した。
オンチェーンと需給:足元の“強さ”と“注意点”
ネットワーク利用は堅調で、1日平均トランザクション数が174万件と過去最高を更新したとの報道が出ている。活況時はEIP-1559焼却が発行を上回り、流通ETHの純減(実質デフレ)も起こり得る。
ただし短期フローは荒く、ETFは過去最大の単日▲4.65億ドル流出(8/4)を記録するなど、上昇一辺倒ではない。需給がタイトなほど、ニュースや大口フローによる反応は大きくなる点に注意したい。
今後の注目イベントとリスク
ETF商品の拡充(ステーキング報酬組入型の可否)、米FRBの政策転換時期、L2/ステーキングの規制明確化の度合い、そして企業の追加調達計画の進捗が重要だ。韓国・中国圏メディアも「企業買い・ETF需要が上昇を後押し」と報じ、関心はグローバルで拡大している。
▽ FAQ
Q. ETHはなぜ8/8に4000ドルを回復?
A. 米ETH ETFの純流入回復と企業の国庫保有拡大が同時進行したためです。
Q. 企業のETH保有はどの程度?
A. 7月末時点で966,304 ETH(約35億ドル)と報じられ、SharpLinkやBitMineが代表例です。
Q. 史上最高値との距離は?
A. USD建てATHは約4,866ドル(2021年11月)で、8/8の約4,000ドルは約17%下です。
Q. ETFフローは健全?
A. 累計+95.9億ドルだが、8/4に▲4.65億ドルの一日流出もあり短期は変動が大きいです。
Q. 規制面の最新トピックは?
A. SECの“流動性ステーキング”明確化報道で関連銘柄が上昇、機関の参入障壁が下がりました。
ニュース解説
ETHは8カ月ぶりに4,000ドル台へ戻り、米ETH ETFの累計純流入が大幅なプラスを維持する一方で直近には大型流出日もあり、企業のETH国庫保有が今夏にかけ急拡大し、SECの流動性ステーキングに関する明確化報道やオンチェーン利用の伸びが追い風になったうえで、需給タイト化と制度マネーの流入により上昇の質が変化しつつもフロー変動・調達依存・規制や会計の不確実性が残るためボラティリティ拡大リスクには引き続き留意が必要である。
投資家の視点:短期はイベントカレンダー(FRB・ETF審査・四半期決算)で変動しやすい。積立・分散・下落耐性(キャッシュ/安定資産)を組み込む基本設計のうえ、ETFとトレジャリー株、現物/ステーキングの役割分担を整理すると良い。※本稿は投資助言ではありません。
(参考:farside,blockworks,reuters)